春風駘蕩なので…
春風の季節である。
風にスカートの裾が、髪の毛が弄ばれる。
← ジャン・ジュネ著『泥棒日記 (改版)』(朝吹三吉 新潮文庫) 「346夜『泥棒日記』ジャン・ジュネ松岡正剛の千夜千冊」参照。久々に読む。何十年の読書を通じて、改めて、これほどの天性の詩人はいないと痛感。
弄ばれるのは、単細胞な男の心のほうかもしれないが。
以前、「昔、チンパンジーの中で、とてつもなく助平な奴がいて(しかも、それ はカップルっだったと思う)、そいつは、チンパンジーの仲間が通常行う営為を遥 かに越えたHの天才だったのだ」として、Hこそがヒトがサルから分化した大いなる契機だったのだという自説を垂れ流した。
「体毛を失った謎、ヒトが言葉を持つに到った人類学的・進化論的謎に挑んだ、熟読玩味に値するはずの論考」だったのだが、誰も取り合ってくれなかった。
小生には、言語についても持論があって、髪の毛や体毛を弄ることがヒトをサルと分化させたのだという主張をしたことがある。
誰も(吾輩自身を含めて)まともに取り合ってくれなかったのは、やや残念である。
春なので(?)、せっかくの論考を再説してみる:
あるいは、人間が言語を発達させたのも、そもそもは、放恣に伸びて止まない頭髪のせいではなかったのか。その頭髪の処理に困り、髪の手入れに追われ、あるいはヒトの髪の世話を焼くことになり、その際には長さがどうの、髪型がどうのと、身振り手振りで意思や気持ち、意図を伝えようとしたが、隔靴掻痒で、どうにも歯がゆく、最初は唸り声、怒鳴り声の応酬だったものが、段々音声(発声)が微妙で多彩になり、やがて髪の手入れの意図を伝えるという次元のコミュニケーションの手段に過ぎなかったものが、次第にコミュニケーションの応用範囲が広がり、ついにはヒト社会(仲間集団)全般に渡るコミュニケーションツールとして言語が用いられるようになった…つまりは今のようなヒト社会の原型が成ったのではないか……。
そんな憶測をしようかなんて誘惑に駆られたりもする。
だから、床屋さんはみんなお喋りなんだ。もしかして彼ら理容師・美容師らは人類の恩人なのであり、今も人類の最先端を行く連中なのかもしれない、なんて。
こんな妄説を思い出すのも、春風の悪戯に違いない。
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