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2016/04/12

トマス・ハーディ「テス」読了!

 トマス・ハーディ著の「テス 上・下」 (岩波文庫) を読了した。

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→ ハーディがこよなく愛したエグドン・ヒースの光景。(画像は、「英国・アイルランドをさるく - トマス・ハーディ (Thomas Hardy) ③」より) 『帰郷』の冒頭でエグドン・ヒースの光景に精妙な描写を与えられている。「作者はこのエグドンの中に形而上学的な美しさを見出している」と、本書の解説にある。

 感想を書くゆとりはないが、某サイトで以下のように書いた:
 メレディスやジョージ・エリオットを想わせる、なかなかの傑作。素晴らしい自然描写と愛情深い人間観察。ビクトリア朝社会の(今の価値観からすると)偽善的な倫理観や道徳観のもたらす悲劇。出会った二人は、結婚を目前にして、互いに自らの過ちを告白する。テスは夫なる彼の放蕩を愛するがゆえに許したが、夫なるクレアは、妻の被った性的過ちを許さない。しかも、(夫が妻たる女性の罪を)許さないことを宗教的に是認してしまう。

 さらに、「素晴らしい作品だった。ジョージ・エリオットやブロンテ姉妹とまではいかないけど、叙述の細部が読み応えある。古典として読み継がれるだろうな。小生、自分で思っている以上にイギリス文学が好きなのかもしれない」とも。

 ここでは、感想の代わりに、本書の中に登場する画家(の作品)や風景を若干、掲げてみる。
 作品の下の引用は、本書からの当該箇所の転記である。

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← Denis van Alsloot「The Ommegang in Brussels」 (c.1570–c.1626)  アルスロートは、サラエルトと共に、村落風景を描くフランドルの画家。 (画像は、「Denis van Alsloot - Wikipedia, the free encyclopedia」より)

(前略)ここでは世界がずっと広く、牛の群れも、あちらでは家族にすぎなかったが、ここでは部族をなしていた。はるか東からはるかな西にかけて、彼女の眼下に広がっているこれら無数の牛は、彼女がいまだかつて一眸(いちぼう)のうちに収めたことのないものだった。緑の草原には、ヴァン・アルスロートやサラエルトの画面に市民たちがおびただしく描かれているように、牛がいたるところに点在していた。赤や焦げ茶の牛の豊かな色彩は夕陽を吸収していたが、また、白い毛の上衣をした牛はその夕陽を、まぶしいばかりの光として、彼女の立っているはるかな丘まで照り返してくるのであった。(上p.169)

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→ Jan van Beers「A balcony」 (ベルギーの画家・イラストレーター1852 – 1927)(画像は、「Jan van Beers (artist) - Wikipedia, the free encyclopedia」より) 

 人生の様相は、彼にとって、すっかり変わってしまっていた。これまで彼は、人生を思索の上でしか知らなかった。いまでは、実際家として、それがわかってきたように思えた。もっとも、おそらくまだ今でも、そうではなかったのだろうけれど。にもかかわらず、彼の前に突っ立った人間性というものは、もはや愁いを含んだ、甘い、イタリア美術の姿ではなくて、ヴィアツ美術館の絵にある、人をにらみつける、恐ろしい態度であり、ヴァン・ビアズの習作に見られるような、意地の悪い横目を使ったものであった。(下p.63)

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← Carlo Crivelli「Pietà」 (1430年頃? - 1495年) カルロ・クリヴェッリは、イタリアのルネサンス初期の画家。(画像は、「Carlo Crivelli - Wikipedia, the free encyclopedia」より) 「カルロ・クリヴェッリ - Wikipedia」など参照。

(前略)彼女は悲しみのあまり、すっかり皮肉な調子になって叫ぶと、そばから離れた。
 父親もまた、彼を見てぎょっとした。故国での、あの皮肉な出来事に嫌悪を感じるとすぐ、やみくもに飛び込んで行った土地で経験した苦労と悪い季節のために、以前の姿は跡形もなく、やせ衰えていたからである。彼の身体の背後には骸骨が、そしてまた、その背後には幽霊が見えたといってよいくらいであった。まさしく、クリヴェりの描いた、死せるキリストにも匹敵していた。落ちくぼんだ眼窩は病的な色をしており、目の光は衰えていた。年老いた先祖たちの骨ばった皺が、二十年も早く彼の顔に君臨していた。(下p.241)


関連拙稿:
ヒースの丘」(2005/07/08)

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