ホワイトアウト
覗き込むその先には何があるというのか。
瞳には何も映らない。だって、瞳は干上がった湖だもの。
霧の海が全てをかき消している。すべてを埋めてしまう。
霧の粒を吸い込めば肺腑をも傷つけてしまう。
爪はガリガリと窓ガラスを削る。ガラスの粉塵が風に霧のように漂っていく。
そう、霧はもとはと言えば、陋屋の窓ガラスだったのさ。
それでも、あいつはホワイトアウトの魔の闇から這い上がってくる。
血の最後の一滴さえも吸われてしまったというのに。髪は積年の悲しみと恨みに老婆のように、あるいは餓死した嬰児の頭髪のようにやせ細っている。
そんなお前をオレは高みの見物だ。役目を忘れたピエロのオレ。見捨てられたブランコに腰かけて、ギーコ ギーコと、お前の末期の喘ぎのような甲高い音を奏でている。
鼓膜を引き裂き、脳味噌を甚振る高周波がBGMだ。
空っぽの心を満たすのは、無音の響き以外に何があろうか。
(文中の画像は、いずれも「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」より)
| 固定リンク
「ナンセンス」カテゴリの記事
- ジェネシス 1(2019.01.17)
- 井田川幻想(2017.02.16)
- ニワのカモ(2016.11.26)
- 淋しさは氷雨のように(2016.11.10)
- 靄の中の女(2016.07.31)
「恋愛・心と体」カテゴリの記事
- 謎の果物はグァバだった(2019.02.18)
- 謎の果物(2019.02.17)
- 犬であるとはどういうことか(2019.02.16)
- 中国(漢詩)から科学の美へ(2019.02.15)
- 茫漠たる広大な時空(2019.02.10)
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 謎の果物はグァバだった(2019.02.18)
- 謎の果物(2019.02.17)
- 犬であるとはどういうことか(2019.02.16)
- 中国(漢詩)から科学の美へ(2019.02.15)
- 事故つながり ? !(2019.02.14)
「駄洒落・戯文・駄文」カテゴリの記事
- 今後、読みたいと思った本の数々(2018.12.30)
- 『悪魔祓い』から『大洪水』へ(2018.12.27)
- 『スリランカの赤い雨』を観た(2018.12.08)
- バッテリー上がり 庭仕事に息上がる(2018.10.22)
- 堀田善衞を自分の中でも再評価へ(2018.10.21)
コメント