海部 陽介『日本人はどこから来たのか?』に納得と期待
海部 陽介著の『日本人はどこから来たのか?』を読了した。
同氏の本は、『人類がたどってきた道 “文化の多様化”の起源を探る』(NHKブックス No.1028)以来である。
← 海部 陽介【著】『日本人はどこから来たのか?』(文藝春秋)
本書の内容説明によると、「著者が10年に及ぶ研究の末に積み上げた新説とは」、「4万8000年前、アフリカを出た私たちの祖先は、ヒマラヤ山脈をはさんで南北に別れて拡散。1万年後、東アジアで再会する。そして私たちの遙かなる祖先は、古日本列島に、3つのルートから進出した」というもの。
僭越というか、生意気な言い方だろうが、説得力を感じた。説に違和感を覚えない。
本書の「あとがき」で、著者は、「本書で焦点を日本に絞ったのは、決して日本人の祖先だけを称賛したいからではな」く、「自分たち以外の集団の成り立ちも理解することには、おおいに意義がある」としている。そうすることで、「各地の人々や文化に対して、優劣を考えるのではなく敬意を抱くようになった」と述べている。
さらに、「本文では、最初に日本列島にやってきた人々の血が、部分的に私たちに受け継がれているとも書いた」うえで、「その裏には別な意味があることも、述べておかねばならない」とも強調している。
つまり、「人類史の中では集団の移動と混血、文化の伝播と相互作用が繰り返されているため、事実上〝純粋な民族〟や〝純粋な文化〟は存在しないということ」なのだ。
「だが現実社会の中では、個々の民族は明確に独立した単位で、時代的に不変で固定的と誤解されることがあるし、その上で特定の民族の優越性を唱える声や政治的意図も根強くある。そうした行為は不必要な軋轢を生むだけで、人類にとって利益のあるものではない」として、最後に「私は、より多くの一般市民が、人類史を学ぶことを通じて〝民族〟というものが、政治や言語そして人々の認識といったもので人工的に規定されている仮の線引きにすぎないということを理解することが重要だと思う」としている。
最後に、「それによって優劣という意識が薄まり、他の人々を尊重する空気が国際的に醸成されることを願っている」と語る。
全く、同感である。
→ 「国立科学博物館 新たな冒険!3万年前の航海 徹底再現プロジェクト(海部陽介(国立科学博物館 人類史研究グループ長)) - READYFOR (レディーフォー)」
小生はかねてより、日本列島に住む日本の人々は、そもそもが(東南アジアを含む)大陸からの渡来人(帰化人)の成れの果てであり、日本列島より先へは、巨大な太平洋に阻まれていて、その先を超えていくことは困難であり、よって、いい意味で吹き溜まりの歴史の積み重ねで日本の人々が成り立っていると主張してきた。
北方からにしろ、朝鮮半島や台湾を経由してにしろ、あるいは遥か東南アジアからにしろ、次々と(海を越えて)多様な背景を持つ人々が次々にやってきたため、日本に単一民族など成立しようがなかったのだ、というのが小生の持論なのである。
その意味で、本書は意を強くさせてくれるものだった。著者は、『3万年の航海 徹底再現プロジェクト』を近々行う予定だという。成果を期待したい:
「国立科学博物館 新たな冒険!3万年前の航海 徹底再現プロジェクト(海部陽介(国立科学博物館 人類史研究グループ長)) - READYFOR (レディーフォー)」
関連拙稿:
「海部陽介著『人類がたどってきた道』」(2005/05/17)
「海部陽介著『人類がたどってきた道』(続)」(2005/05/17)
「「日本人になった祖先たち」の周辺」(2007/06/04)
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