ウエルベックの「地図と領土」にウィリアム・モリス!
ミシェル・ウエルベック著の『地図と領土』を読んでいる。さすがに読みごたえがある。車中で読むのが勿体ないが、自宅では別の本を読んでいるので仕方がない。
→ 『いちご泥棒』Strawberry Thief (1883) 「ウィリアム・モリスの数多いデザインの中でも、ひときわ不動の人気を誇るデザインのひとつが『いちご泥棒』」だという。 (画像は、「『いちご泥棒』Strawberry Thief (1883) MORRIS Archive Collections」より)
さて、偶然だろうけど、昨日、小説の中にウィリアム・モリスへの言及があった。小説の中とはいえ、かのウエルベックが高い評価を与えている。気になる……と、思ったら、翌日の朝日新聞朝刊(の文化・文芸の「今こそ」の欄:筆者は松沢奈々子氏)に、なんとそのウィリアム・モリスが扱われている。
小説としての『地図と領土』からは幾分(あるいはかなり)スピンアウトするが、今日はウィリアム・モリスの世界に寄り道してみる。
ウィリアム・モリスは、今となっては知る人ぞ知る……とまではなっていないだろうし、人によっては深い関心の対象であり続けているだろうが、かといって、頻繁に言及される人物ともいえそうにない。
なのに、この偶然。
こうなると調べてみたくなる。
この小説の中では、音楽は嫌われていて、写真と絵画が芸術の対象として追及されている。
ネットでは、「ウィリアム・モリス - Wikipedia」などを覗けば、大よそのことが分かる。
「19世紀イギリスの詩人、デザイナー、マルクス主義者」というだけでも、枠に嵌まり切らない人物だと想像される。
「多方面で精力的に活動し、それぞれの分野で大きな業績を挙げた。「モダンデザインの父」と呼ばれる。また、架空の中世的世界を舞台にした『世界のかなたの森』など多くのロマンスを創作し、モダン・ファンタジーの父と目される。ロード・ダンセイニやJ・R・R・トールキンにも影響を与えた」となると、猶更かもしれない。
あるいは、トールキンに絡んで再認識されていたりもしていたのか(小生は、トールキンは全く読んだことがない)。
モリスの活動として、「ヴィクトリア朝のイギリスでは産業革命の成果により工場で大量生産された商品があふれるようになった。反面、かつての職人はプロレタリアートになり、労働の喜びや手仕事の美しさも失われてしまった。モリスは中世に憧れて、モリス商会を設立し、インテリア製品や美しい書籍を作り出した(植物の模様の壁紙やステンドグラスが有名)」とか、「生活と芸術を一致させようとするモリスのデザイン思想とその実践(アーツ・アンド・クラフツ運動)は各国に大きな影響を与え、20世紀のモダンデザインの源流にもなったといわれる」などとあって、特にこの前段がミシェル・ウエルベックの『地図と領土』では、あくまで小説の流れの中で高い評価の源泉になっている。
ただし、あくまで「建設会社の経営者として成功した主人公の父が、若い頃はウィリアム・モリスに傾倒していたというエピソード」の形でモリスが評価されていることは留意すべきだろうが。
← ミシェル・ウエルベック 著『地図と領土』 (野崎 歓 翻訳 ちくま文庫) 「素粒子」「服従」と読んできたので、ゴンクール賞に輝く本書を読まずにはいられない。
また、「手工業者の労働に対する尊厳を取り戻し、芸術と生活を融合するために、ロセッティ、バーン=ジョーンズ、ウェッブらとモリス・マーシャル・フォークナー商会(後のモリス商会)を設立し」たという(「3分でわかるウィリアム・モリス モリス商会を設立したモダンデザインの父、ウィリアム・モリスの生涯と作品 ノラの絵画の時間」より)。
モリスの言葉として、「美しいと思わないものを家に置いてはならない」が有名なようで、小説の中でも言及されていた。生活の中に芸術を取り入れる、という発想が大量生産大量消費の時代に一服の清涼剤と感じられた……と言うと、浅薄過ぎる捉え方なのかもしれない。
拙稿「フェルナン・クノップフ」など参照。
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コメント
モリスの「いちご泥棒」、
なんてかわいい!
いただきました、
僕の駄文のモチーフにちょうどいいw。
これは、気取らない音楽で、素朴な詩です。
たいそうなものではなくて、
それくらいが安らぐのではないかなぁ、
家の中では。
投稿: 青梗菜 | 2016/02/11 14:43
青梗菜さん
まさか、モリスの「いちご泥棒」から、あんな詩が発想できるなんて、びっくりです。
まさに資質の差ですね。
投稿: やいっち | 2016/02/12 11:51