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2016/02/01

『動くものはすべて殺せ』からインディアン悲史を想う

  ニック・タース著の『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』を読了した。副題にあるように、「アメリカ兵はベトナムで何をしたか」がテーマの本で、アメリカ軍の方針は「動くものはすべて殺せ」である。

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← 藤永 茂著『アメリカ・インディアン悲史』(朝日選書 21) 著者のブログ:「私の闇の奥」 

 戦争である以上、戦争に勝つために何でもやるのは当然のようだが、アメリカ軍には、一般の兵士もだが、上官も指揮する将軍も、あるいはアメリカ大統領も含め、アジアの民への思い入れは全くなかったことが分かる。
 というより、ベトナム人への人種的偏見が露骨なのである。

 ベトナム人を人間と思っていない。ベトナムの兵士と戦うはずが、農耕民だろうが、老人だろうが女だろうが子供や赤ん坊だろうが、水牛や鶏などの動物だろうが、「動くものはすべて殺せ」だったのであり、そこに情け容赦はなかった。

 本書はようやく日の目を見た(ようやく公開された、あるいは何とか発掘された)軍など当局の文書やアメリカの数少ない良心を持つ兵士やベトナムの、それこそ数少ない生存者らの証言をもとに、これでもかとベトナム戦争の実態が描かれている。
 ナチスのユダヤ人虐殺とは違ってはいるが、アメリカ軍はベトナム(特に南ベトナム)を更地にしてしまえとばかりに虐殺しまくったのである。

 日本軍も朝鮮や中国大陸で、あるいは東南アジアでそんな蛮行に突っ込んでいった。ただ、日本では、アメリカほどに世界が広くないので、今となっては本書に匹敵するような告発の書は現れず、逆に歴史修正主義という名の歴史去隠蔽史観、欺瞞に満ちた史観が人気を博しつつある。日本は素晴らしい国だ、間違いなど起こさない国なのだ……という夢を見たいのだろうが。

 日本軍が朝鮮や中国などの植民地支配を目指したり行ったのは、日本を欧米列強の進出から守るとか、石油など資源の確保とかもあるが、有史以前からの日本文化のお手本であり師匠であった民族や国々への劣等感の裏返しの結果なのだとすれば、アメリカ軍の蛮行はアジア人への侮蔑的な人種偏見の結果なのだろう。

 アメリカは、ベトナムでの戦争犯罪を徹底して否定し隠ぺいを図ってきた。それはベトナムで戦って死んだ兵士の名誉を守るためもあろうが、軍当局や国(大統領)が軍隊の組織防衛を図る意味もあったのだろう。
 が、そこには、甚大な被害を与えたベトナム人への哀悼の念も贖罪の念もまるでない。自分たちの都合しか眼中にないのである。

 ニック・タース著の『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』を読んで、小生はアメリカにおける西部開拓時代の現実も、このようだった……あるいはもっと徹底的に先住民を虐殺しまくったのだろうと、暗澹たる思いに駆られた。

 本書については、「『動くものはすべて殺せ』を読む」や「『動くものはすべて殺せ』を読む(続)」にて多少のことを、西部開拓(これも、白人の驕り高ぶった表現だ!)時代のアメリカの野蛮の歴史については、既に拙稿「羽根、あるいは栄光と悲惨の歴史」や「古矢 旬著『アメリカ 過去と現在の間』」にて簡単に触れている。

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← ニック・タース著『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』(布施由紀子訳 みすず書房) 

 さて、アメリカ(軍)や旧日本軍を指弾するような言い方になったが、本校の目的はそこにはない。戦争法案が通過し、日本軍が再び海外で実力行使する道が開かれたことへの憂慮の念、そして、いざ、戦争が始まってしまえば、人間性のあらゆる醜い面が曝け出されずにはないのだということを再考すべきと考えるからである。

関連拙稿:
『動くものはすべて殺せ』を読む
『動くものはすべて殺せ』を読む(続)
羽根、あるいは栄光と悲惨の歴史
古矢 旬著『アメリカ 過去と現在の間』

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コメント

原爆を日本に落としたのもアジア人だからでしょう。
もし早めに原爆が出来上がっていても、ドイツには落とさなかったような気がします。

投稿: OKCHAN | 2016/02/02 04:17

OKCHANさん

あの戦争末期、アメリカ軍による日本本土などへの空襲は、明らかに戦争犯罪でしたね。
軍事施設じゃなく、一般人の居住する住宅街を焼夷弾などで殲滅しようとした。
アメリカ軍(兵)の残虐さは、アメリカ建国以来の筋金入りだってことです。

投稿: やいっち | 2016/02/03 21:35

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