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2016/02/28

海部 陽介『日本人はどこから来たのか?』に納得と期待

 海部 陽介著の『日本人はどこから来たのか?』を読了した。
 同氏の本は、『人類がたどってきた道 “文化の多様化”の起源を探る』(NHKブックス No.1028)以来である。

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← 海部 陽介【著】『日本人はどこから来たのか?』(文藝春秋)

 本書の内容説明によると、「著者が10年に及ぶ研究の末に積み上げた新説とは」、「4万8000年前、アフリカを出た私たちの祖先は、ヒマラヤ山脈をはさんで南北に別れて拡散。1万年後、東アジアで再会する。そして私たちの遙かなる祖先は、古日本列島に、3つのルートから進出した」というもの。

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2016/02/27

カミオカンデの光と影

 以下は、過日、神岡(岐阜県)にある東大の宇宙線研究所付属神岡宇宙素粒子研究施設へ行ってきたことにちなむ呟きの数々:
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→ 「東京大学宇宙線研究所 附属神岡宇宙素粒子研究施設」 地下実験施設は池ノ山の地下1000メートルに設置されている。
 

仕事で神岡(岐阜県)にある東大の宇宙線研究所付属神岡宇宙素粒子研究施設へ行ってきた。といっても、(スーパー)カミオカンデを見学できたわけじゃない。あくまで、研究棟(講義棟)の傍へ。でも、近くの地下に巨大施設があると思うと、感激するね。

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2016/02/26

上野 千鶴子『発情装置』を読む…男女の非対称は死に至る病

 上野千鶴子著の「発情装置 新版」 (岩波現代文庫) を読んだ。富山出身ということもあり、前々から気になっていた書き手(学者)。ようやく手にした。冒頭から、ズケズケ言う語り口にびっくり。小気味いいね。人気が出るわけだ。

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← 上野 千鶴子【著】『発情装置 (新版)』(岩波現代文庫) 

 目次(本文)の冒頭に、「おまんこがいっぱい」なんてあって、これを男性が書いたら顰蹙ものだが、上野さんだからこそ、ありなのだろう。
 個人的には、「北村透谷をめぐって」という章が面白かった。北村透谷が恋愛讃歌を唱っているようで、その実、女性嫌悪の情に凝り固まっていることを的確に指摘。恋愛の非日常を称揚しつつ、結婚の日常と保守性とを憎んでいると喝破。男たちの無責任な自己中心性を嘆いている。
 ホント、小気味いい文章である。

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2016/02/24

見る人が分かればいいと二日月

 過日、NHK 日曜美術館を見ていたら、思わずほれぼれするような絵に遭遇した。

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→ 川合玉堂「二日月」(明治40年 墨画淡彩・絹本・軸・1幅 86.4×139.0 東京国立近代美術館

 見ようと録画しておいたのは、東京在住時代に好きになった向井潤吉の特集(「民家巡歴 向井潤吉の戦後|NHK 日曜美術館」)を見るためだった。
 作品の保存されている「世田谷美術館分館 向井潤吉アトリエ館」へは、砧の公園で憩いたいというのもあって、幾度となく通ったものである。

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2016/02/22

マルカム・ラウリー著『火山の下』を読んだ

 マルカム・ラウリー著の『火山の下』を読了した。正味四日を費やした。

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← マルカム・ラウリー著『火山の下』斎藤 兆史【監訳】/渡辺 暁/山崎 暁子【共訳】 エクス・リブリス・クラシックス 白水社)

 費やしたと、やや歯切れの悪い表現をしたのは、後味の悪い作品だった、読んでいて辛かった、という印象が強くあるからである。
 読後、某サイトに印象として、「アルコール依存症の書き手がアル中の主人公らを語り手に、薬物(本書では酒だが)依存から抜け出せないだけじゃない、逆に益々深みにはまっていく。素面の我々(読み手)は呆れるしかないが、ここまで徹底されると、文学の域に達するということか」などと書いた。

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2016/02/20

石川 達三著「生きている兵隊」を読んだ

 石川 達三著の「生きている兵隊」を読んだ。

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← 石川 達三 (著)『生きている兵隊  (伏字復元版)』(中公文庫)  「虐殺があったと言われる南京攻略戦を描いたルポルタージュ文学の傑作。四分の一ほど伏字削除されて、昭和十三年『中央公論』に発表されたが、即日発売禁止となる」。

 本書は昭和13年に公表され、間もなく発禁となった。中国大陸で陸軍などが苛烈な進軍を続けていて、その間、中国の軍人・民間人を問わず殺しまくった。捕虜も。南京などに至る軍の虐殺・掠奪というタブーなどの実態を敢えて問う本書は軍には目障りだったろう。

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2016/02/19

もうすぐひな祭り

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← 今朝未明、ひな壇を座敷から、奥の間の出窓に移動した。座敷は新たに仏壇を設置したので、雛壇と一緒では法事の際に具合が悪いと思っていた。ようやく落ち着くところに落ち着いてホッとしている。一人でやったので、並びにやや不安。 早くもある人から並びがおかしいと指摘を受けている。持ち主がやってきたら、直してもらうつもり。写真では大きさは分かりづらいだろうが、畳二枚分のスペースを占有しているのだ。

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2016/02/16

ホワイトアウト

 脱色された世界にいた。
 髪も眼も、血の色さえ真っ青に成り果てていた。

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 形の名残だけがこの世への執念のように壁にへばりついていた。

 それは、壁面に滲みだしたリンパの涙。
 神経網をなぞる白い粉どもの足掻き。

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2016/02/14

祭神は栗田定之亟!

 秋田市新屋栗田町に栗田神社がある。
 祭神は、栗田定之亟(くりたさだのじょう)である。

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← 栗田定之亟。 文化・文政期(1804~1830)に、砂防林事業に尽力した秋田藩の武士。 (画像は、「栗田定之丞 - 秋田ふるさと検定」より)

  「栗田神社」によると:
 

その昔、新屋村は、日本海に面した広々とした砂原で草木が生育せず、暴風がおこると、飛砂がしばしば人家を埋没し、その被害はひどく実に村が亡びてしまう程の危機に直面しなければならなかった。
 文化年間、栗田定之亟如茂大人は、藩命を受け防砂事業にとりくみ、村民の罵詈雑言(ばりぞうごん)を背後に受けながらも、一身を捧げてこれに従事し、辛酸を嘗めること数年。

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2016/02/13

母なるロシアはでっけえでなあ!

 小生は、日本人であるし、日本の作家の作品が好きだ。若いころからそれなりに読んできた。ファンといっていい作家も何人か挙げられる。

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→ 「ロシア - Google マップ

 一方、外国の作家というと、欧米の文学が中心で、中国や韓国(朝鮮)、東南アジアなどは、かなり乏しい。
 近年、中国などへ意識的に視野を広げようとしているのだが。

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2016/02/11

雪の白馬村でスタック(後篇)

 車はにっちもさっちもいかない。車から降りて、後輪の前後の雪をどかす。どかすといっても、情けないことにシャベルを準備してこなかったので、ハーフブーツの足で雪を蹴飛ばすように、どかすだけである。 

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← 「一本の木を友にして帰郷せし」参照。

 後輪の周辺の雪だけではダメで、前輪の周辺の雪もどかす。
 車体の下を覗き込み、車の下に巻き込んだ雪が車のどてっぱらにくっついていないことを確認。
 数年前の富山の郷里で、雪の中、真夜中過ぎに帰宅したら、我が家の庭が数十センチの積雪で、呆気にとられるも、えーい、やっちゃえとばかりに、可愛い我が小型車で雪の庭に突っ込んでいったら2メートルもすすまないうちにスタックしたことを思い出した。

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2016/02/10

雪の白馬村でスタック(前篇)

 過日、仕事で白馬村へ行ってきた。北陸道は、時折、雪が舞ったりするが、路面はややウエット。夕刻に向かって次第に気温が下がってくるが、凍結には未だ間がありそう。

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← 「雪の関越自動車道遭難未遂事件(序)」参照のこと。

 現地である白馬村は、スマホでのライブカメラ映像で、少なくとも昼過ぎには吹雪いてるのが分かった。
 海沿いの高速道や糸魚川で降りてからの一般道は、最初は大丈夫でも道が北上し高度が上がっていくにつれ、道のわきに雪が積もり始め、やがては圧雪に。かなりトンネルの場所が多くて、トンネルの中だけは、路面は濡れてるが雪はないのが救い。

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2016/02/08

ウエルベックの「地図と領土」にウィリアム・モリス!

 ミシェル・ウエルベック著の『地図と領土』を読んでいる。さすがに読みごたえがある。車中で読むのが勿体ないが、自宅では別の本を読んでいるので仕方がない。

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→ 『いちご泥棒』Strawberry Thief (1883) 「ウィリアム・モリスの数多いデザインの中でも、ひときわ不動の人気を誇るデザインのひとつが『いちご泥棒』」だという。 (画像は、「『いちご泥棒』Strawberry Thief (1883) MORRIS Archive Collections」より)

 さて、偶然だろうけど、昨日、小説の中にウィリアム・モリスへの言及があった。小説の中とはいえ、かのウエルベックが高い評価を与えている。気になる……と、思ったら、翌日の朝日新聞朝刊(の文化・文芸の「今こそ」の欄:筆者は松沢奈々子氏)に、なんとそのウィリアム・モリスが扱われている。
 小説としての『地図と領土』からは幾分(あるいはかなり)スピンアウトするが、今日はウィリアム・モリスの世界に寄り道してみる。

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2016/02/04

『微生物が地球をつくった』を読む

 ノーベル生理学医学賞の大村智氏が着目した「放線菌」 ということで、脚光を浴びている…はずの微生物の本を入手。まずは、ニコラス・マネー著の『生物界をつくった微生物 』を読んだ(拙稿「泰淳やら『生物界をつくった微生物』やら」参照のこと)。

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← ポール・G・フォーコウスキー (著) 『微生物が地球をつくった -生命40億年史の主人公』(青土社)

 この世界への関心が一層、掻き立てられたので、書店で関連の本を物色。次いで手にしたのが本書ポール・G・フォーコウスキー 著の 『微生物が地球をつくった』である。昨日今日で残りを一気に読み切った。

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2016/02/03

影の女へ

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 あなたは形を失っていく。
 わたしを見つけることもできないままに。

 あなたは形を失い、崩れていく、ひたすらに。
 まるでわたしをなぞらえるように、蕩けていく。
 わたしなど、生まれた時から形がなかった。形を成すすべもなく、無力のままに世界の中に放置された、そう魂の躯。そんなわたしを追いかけてどうするというのだ。

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2016/02/01

『動くものはすべて殺せ』からインディアン悲史を想う

  ニック・タース著の『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』を読了した。副題にあるように、「アメリカ兵はベトナムで何をしたか」がテーマの本で、アメリカ軍の方針は「動くものはすべて殺せ」である。

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← 藤永 茂著『アメリカ・インディアン悲史』(朝日選書 21) 著者のブログ:「私の闇の奥」 

 戦争である以上、戦争に勝つために何でもやるのは当然のようだが、アメリカ軍には、一般の兵士もだが、上官も指揮する将軍も、あるいはアメリカ大統領も含め、アジアの民への思い入れは全くなかったことが分かる。
 というより、ベトナム人への人種的偏見が露骨なのである。

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