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2016/01/27

『動くものはすべて殺せ』を読む

 猛烈な寒波が通り過ぎ、昨日から晴れ間にも恵まれている。となると、やることは一つ。雪搔きである。

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← ニック・タース著『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』(布施由紀子訳 みすず書房) 

 例年のことだが、暖冬の今年は、本格的な雪搔きは今回が初めて。体が慣れておらず(体が鈍っているし)、せいぜい積雪50センチ足らずなのに、除雪で体は悲鳴を上げつつある。
 我が家の庭は細長くて、幅2メートル長さが十メートル以上。それをずっと除雪しないと、車は出入りできないし、人も身動きが取れない(新聞配達や郵便配達、あるいはメーター調査員などがメイン)ので、やるっきゃないのである。

 そんな中、晴れ間を幸いに、お昼前、自転車で月に一度の通院へ。
 午後からは免許証の更新のため免許試験場へ。二度目のゴールドである。たぶん、14年以上、無違反。
 それから入院している組合の仲間のお見舞いに。
 組合は会社の抱えるトラブルで、フル稼働寸前。
 
 それでも、合間を縫って(免許試験場でも病院でも)読書。
 今日は、リチャード・ロイド・パリー著の『黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実』を読了させた。
 面白いというべきか、日本(日本だけの、というつもりはない。被害者の母国であるイギリスではもっと類似の事件が頻発している)の闇の深さに暗澹たる思いをさせられた。犯人は、在日韓国人の二世ということで、なんとか日本人の犯行じゃないと、事件を矮小化しようとする向きがしばしば見られた。差別の深刻さは今も。

 だからといって、差別などを犯罪の理由にできないし、まして正当化は論外である。
 犯人の性格的特異性も大いにある。どうしてそういった人格が形成されたのか、本書でも解明を懸命に試みられていたが、本人の自分を隠蔽し秘匿する用心深さの前に、著者自身が認めるように、得心のいく解明に至っていない。まして、ドラッグの蔓延する社会の闇の深さ、警察組織の旧態依然たる有様には暗澹たる思いをさせられる。

 この事件には、小生が東京在住時代のものだっただけに、思い入れが一入あって(その理由については、過日の拙稿「溶けると分かっていても雪搔きする!」にその一端を書いた)、本書こそは極めつけの本と直感し、読んだのである。

 さて、次は、これも前から気になっている本である、ニック・タース著の『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』に取り掛かる。
動くものはすべて殺せ:みすず書房」によると、「4時間で500人以上の村人を虐殺したミライ(ソンミ村)事件は逸脱ではなかった。“動く者はすべて殺せ”という命令の下になされた軍事作戦の一部だったのだ」とか、「アメリカの戦争とはいかなるものか。生々しい戦慄とともに語られる戦争の真実」とあって、読まないではいられない。

 アメリカ軍の(かなり計画的意図的な)蛮行による、ベトナム人の犠牲者は数百万人に上る。アメリカ兵の犠牲者も相当数に上り、アメリカ社会の深く大きな傷となった。
 が、この悲惨に鑑み、戦争報道が大きく制約されることになる。戦争を反省するのではなくて!

 アメリカ軍が行ったイラク侵略戦争での蛮行は、マスコミではほとんど語られていない。あるいはベトナムにおいての野蛮以上の虐殺・強姦・拷問などなどを行ったはずなのに。
 日本では(マスコミの力が政府寄りだからか)先の戦争での日本軍(兵)の犯した蛮行(一九三〇年代から一九四〇年代前半にかけて日本軍が中国農村部で決行した〝すべてを殺し、焼き尽くし、略奪する〝焦土作戦。アメリカのベトナム戦争当時などの戦争立案者たちは、日本軍のやり方を学んだわけである。むろん、豊富な物量でより組織的に大規模に!)を語り伝える努力が乏しい。
 南京で、あるいは朝鮮や東南アジアなどでの蛮行も、多くの証拠書類は敗戦と同時に焼却されたりして処分された。また、自ら蛮行を証言したりする人は(ほとんど?)出なかった。
 アメリカ軍も、ベトナムでの蛮行を証拠立てる書類の類の隠蔽・焼却を図った。どの国も都合の悪いことは隠蔽するものなのだ。それでも、アメリカには反省する個人や組織がある。日本には、今やタカ派アベ一派に席捲され、過去の反省などどこへやら、である。それどころか、日本人にあるまじき裏切り行為と指弾される。

Dark

← リチャード・ロイド・パリー著『黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実』(濱野 大道【訳】 早川書房) 書評でも評価が高い。文庫版が出たら読もうと思っていたけど、我慢できずに単行本に手を出しちゃった。本日読了!

 南京(や重慶)で大虐殺を行ったのだろう。それこそ、本書を読んでいて、ああ、日本兵はもっとひどいことを自暴自棄的に、それこそ滅茶苦茶にやったんだろうと感じさせられる。
 本書を読みながら、アメリカ軍(兵)の野蛮をただ指弾するのではなく、かといって日本だってたかだか数十年前、アメリカ軍(兵)以上の蛮行を行ったという反省だけじゃなく、そもそも、一旦、戦争が始まってしまったら、国家や上官や組織の論理や命令や戦場の切迫した状況下で、多くはせいぜい二十歳ほどの兵士たちが野蛮の限りを尽くしてしまうものだと理解すべきなのだ。

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