蒼白の美を生きる
炸裂する瞬間。
吹き出す命。
→ itumademo ikitenai (ホームページ:「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」)
振り返っても、前を向いても、あとはない。
一歩一歩が綱渡り。
誰かが大真面目な顔をして言ったっけ。
川を歩いて渡るには、どうするか? まず、一歩、岸辺から右足を踏み出す。
その足が水に沈む前に左足を踏み出す。
左足が没する前に、大急ぎで右足を踏み出す。
以下、この要領で一気に川を渡ればいい!
なるほど、理屈だ!
私は真に受けた。やってやれないことはないと信じた。
それどころか私は、川を渡るなんて、そんな中途半端な真似は恥ずかしいと思った。
なぜなら、そんなことは先人がとっくにやってのけているに違いないのだ。
二番煎じなど、意味はない。誰も評価しないだろう。物真似など流行らない。
私はその上を行こうと思った。
ある日、私は東尋坊の絶壁の際に立った。
そう、私は空中浮揚をやりたかったのだ。
それでこそ、先人の先を行くことになる。
断崖絶壁の淵に立った。風が足元から吹き上げてくる。
背からは、人々の叫ぶ声。ああ、囃子声だ。みんなが私の勇気を讃えている。
中には、やめろーと叫ぶ奴もいる。やめてくれーという悲鳴にも似た叫びが耳を劈(つんざ)く。
ふん、やめてなるものか。この期に及んでやめるわけにいくものか!
あいつら、私に嫉妬しているのだ。私に先を越されるのがそんなに嫌なのか。誰も思いつかなかった業(わざ)を私がやってのけるのを邪魔しようってんだな。
急がなくっちゃ。いつやる? 今でしょ! って、私へのエールに違いない。
私は吹き上げる風に勇気と励ましを感じた。
足を一歩、踏み出す。風が足への大地となってくれる。さらにもう一歩、踏み出す。雲が私を載せる舟となってくれる。
← itumademo ikitenai (ホームページ:「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」)
ゴーという風の唸りが、目くるめく雲と青空の斑模様が、私への道しるべ。耳鳴りがする。目ん玉が飛び出す。ベロが目ん玉を追って、のたうっていく。
真っ赤な海の潮は遠い日の子宮への誘いだ。
私から腸(はらわた)という腸が飛び去って行く。蜘蛛の糸の乱舞だ。砕けて散っていく真っ白な真珠の煌き。砕ける潮は泡となって私の魂を囲繞し尽くす。
私は蒼白の美を生きる。
ああ、今こそ、世界との和解の時だ!
| 固定リンク
「美術エッセイ」カテゴリの記事
- 生物たちの軍拡競争に唖然(2023.11.22)
- 今日は本の日、シェイクスピアの誕生日(2023.04.23)
- バンクシーをも呑み込む現実?(2022.10.27)
- 今の時期にタンポポ(2022.10.22)
- 週末は薪ストーブ小屋で?(2022.04.07)
「創作・虚構・物語」カテゴリの記事
- ウエストのボタンが締まらない!(2023.10.24)
- 庭仕事でアクシデント(2023.10.22)
- 読まれずとも粛々と(2023.10.17)
- 覆水盆に返らず(2023.10.05)
- 「昼行燈2」を夜になって書いた(2023.09.16)
「駄洒落・戯文・駄文」カテゴリの記事
- 「昼行燈2」を夜になって書いた(2023.09.16)
- 新しいスマホで野鳥を撮る(2023.09.14)
- 光は闇を深くする(2023.09.10)
- パソコンの買い替え(2023.08.20)
- 沈湎する日常(2023.02.23)
「恋愛・心と体」カテゴリの記事
- 指紋認証は止めた!(2023.11.29)
- 敢えて茫漠たる液晶画面に向かう(2023.11.28)
- その須藤斎の著書なの?(2023.11.27)
- 閉じるとピタッと止まる、その快感!(2023.11.24)
- 生物たちの軍拡競争に唖然(2023.11.22)
「ナンセンス」カテゴリの記事
- 「昼行燈2」を夜になって書いた(2023.09.16)
- 先代パソコンの苦難の日々(2023.08.23)
- 不吉な夢の意味をChatGPTに問いたい(2023.03.02)
- 沈湎する日常(2023.02.23)
- 時を空費している(2021.04.05)
コメント