渦のこと少々
過日は、爆弾低気圧なんてものが日本列島を襲った。その余波は我が富山にも。実際、古木が倒れたり、人的被害も出た。
低気圧の気圧配置を見ていると、渦巻く形が目につく。
→ 水の渦 (画像は、「渦 - Wikipedia」より)
まあ、台風なのだから、空気が巨大な渦を巻いていると、ほとんど同義だろう。その局地的な、脅威に満ちた現象は竜巻。
台風は、海の潮にも渦を巻かせるのだろうか。波を逆巻くだけで、渦までは巻かせないか。
「渦 - Wikipedia」によると、渦には、「洗濯機の中の水の渦、風呂の水を抜く時の渦、海峡などで発生する渦潮(うずしお)」といろいろある。いずれも馴染みのあるものばかりだ。
今、読んでいる、大和 岩雄著の『日本神話論』(大和書房)によると、大和氏は、うずめの尊の「うずめ」あるいは「うず」について、通説である、「木の枝葉や花などを頭に挿したものをいう。ウズメはウズを頭に挿した女、すなわち神女・巫女のいいである」に対して異論を唱えている。
鎌田東二は、『ウズメとサルタヒコの神話学』において、「アメノウズメと海人・海女文化とのつながりを物語る神話」を紹介したうえで、「ウズメは海を支配する力をもつ渦女ではないか」、「谷川健一氏はウズメの「ウズ」は海蛇を指すと述べているが、海蛇と渦との形態類似や隠喩関係を考えると、「ウズ」は文字通り海の渦であり、その渦の化身であるかのごとき海蛇なのではないか」と、主張しているとか。
大和氏によると、縄文時代の土偶には、頭上に渦巻表現のあるものがあるとか。さらに、中には、頭には蛇がとぐろを巻いた文様を表現した土偶も見出されるという。
さらには、女陰にも渦巻表現の施されたものがあり、これは洋の東西を問わない、神聖性を持つ造型なのだとか。
← オワンクラゲ (画像は、「クラゲ - Wikipedia」より)
大和氏は、上掲書の中で、ジル・パースの著書『螺旋の神秘』からの引用を紹介している。
「すべての生命のもっとも根源的な無形の母胎である水が、一時的とはいえ、一定の間安定した形を保って生み出す渦の流れにこそ、生命形成の根源形態があるというべきかも知れない。渦巻形式をとるすべてのエネルギー、物質または意識のいとなみの中に、この生命の根源形態が反映している」と書いているとか。
上掲書において、大和氏は、『古事記』の岩屋伝説に関連して、「神懸りして、胸乳を掛き出で裳緒(もひも)を番登(ほと)に忍(お)し垂れき」といった下りを紹介しつつ、この渦巻表現や渦の文様をさらに探求している。
小生などは、本ブログでも何度か紹介したが、『古事記』では、「次に国椎く、浮ける脂のごとくして、くらげなすただよえる時に、葦牙 のごとく萌え騰る物により成りませる神の名は、宇摩志阿斯訶備比古遅の神…云々」のくだりが好きである。特に、「くらげなすただよえる時に、葦牙 のごとく萌え騰る物により成りませる…」の辺りである。
「くらげ」は、『古事記』では、「久羅下(くらげ)」と記述されている。現代では、水母 とか海月(乃至はクラゲ)と記述する。英語ではメドゥーサ(Medusa)、ジェリ ー・フィッシュ(Jelly-fish)だとか。
クラゲは海を浮遊するように生きている。
→ 宇宙から見た台風(平成16年台風第18号) (画像は、「台風 - Wikipedia」より)
海に潮水を勢いよく注ぎ込むときにできる渦…水流の形そのままに命を形にしたものがクラゲではないか。
渦という激しいものではなく、もっと穏やかな水の描く螺旋、渦巻、水に秘められた神秘の生命力の結晶がクラゲなんて、夢想をたくましくしてしまう。
このクラゲ妄想も、きっと洋の東西を問わない生命の根源形態のイメージなのではないかと、根拠なく想っているのだ。
まあ、こんな夢想・空想・妄想を逞しくしつつ本を読むのも楽しからずや、である。
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