井上 清 著『「尖閣」列島―釣魚諸島の史的解明』を読む
かねてより、尖閣列島の問題が気になっていた。史実はどうなのか、政府の説明に胡散臭いものを感じていたので、何かしっかりした本を読みたいと願っていた。
← 井上 清 著『「尖閣」列島―釣魚諸島の史的解明』(第三書館; 新版 新書版 (2012/10)) (画像は、「Amazon.co.jp 通販」より)
すると、入手困難だった井上清氏の本が、2012年に新書の形で出ていることを新聞の広告で知り、早速入手し読んだ。
タカ派現日本政府の主張の根拠薄弱さを痛感させられた。
ネットで、本書や井上氏へ論考への反論めいたサイトもざっと眺めてみたが、井上氏は左翼だとか、なんとか、きちんとした論になっていないものばかり。
アメリカの姿勢が尖閣の問題に腫れ物に触れるような歯切れの悪さなのも、なるほどと思えた。
さて、冷静な議論の開始は現下の情勢下でありえるのか。かなり難しそう。
政府は、ビデオの広報で、尖閣は日本の領土だと主張しているが、この主張について、かの佐藤優氏は、以下のように述べている(「【佐藤優の眼光紙背】竹島、尖閣に関する外務省の稚拙な広報戦略」より一部を抜粋。太字は小生の手になる。この太字部分も含め、本書に縷々解き明かされている):
第2は、尖閣問題について、このような手法で広報を行うことで、却って、領土問題が存在すると事実上日本政府が認めているという効果をもたらすからだ。確かに外務省の尖閣問題に関する動画には、領土問題や領土係争という言葉は用いられていない。しかし、客観的に問題が存在するので、日本政府として応戦せざるを得なくなっていると国際社会は認識する。さらにこの動画で、1895年の閣議決定で尖閣諸島を日本に編入したことを強調しているが、これはよくない。なぜなら、この閣議決定は秘密決定で、官報に公示されておらず、また、日本政府がこの閣議決定を公表したのが1952年だからだ。中国側が、「尖閣編入に関する日本政府の閣議決定はいつ公知の事実になったのか」と反論した場合、決定から57年間も事実を秘匿していた日本が不利になる。本件に関しては、「1970年代初めまで中国が尖閣諸島の領有権を主張したことはなかった」という事実を淡々と説明し、日本が不利になる論点を焦点化すべきでない。

→ 「林子平「三国通覧図説」付図「琉球三省并三十六島之図」、釣魚諸島位置図、釣魚諸島略図」 是非、拡大してご覧願いたい。
釣魚諸島の歴史と領有権
1 なぜ釣魚諸島問題を再論するか
2 日本政府などは故意に歴史を無視している
3 釣魚諸島は明の時代から中国領として知られている
4 清代の記録も中国領と確認している
5 日本の先覚者も中国領と明記している
6 「無主地先占の法理」を反駁する
7 琉球人と釣魚諸島との関係は浅かった
8 いわゆる「尖閣列島」は島名も区域も一定していない
9 天皇制軍国主義の「琉球処分」と釣魚諸島
10 日清戦争で日本は琉球の独占を確定した
11 天皇政府は釣魚諸島略奪の好機を九年間うかがいつづけた
12 日清戦争で窃かに釣魚諸島を盗み公然と台湾を奪った
13 日本の「尖閣」列島領有は国際法的にも無効である
14 釣魚諸島略奪反対は反軍国主義闘争の当面の焦点である
15 いくつかの補遺
本書の本文については、「釣魚諸島の史的解明」を参照のこと。
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