青い花の女
淋しすぎるって? 悲しすぎるって?
ふん、何をいまさら。自業自得じゃないか!
青い影がお前を取り囲んでいる。吹きすぎる風さえ、青い。
日の光も青。涙の色も青。お前の愛情だって、非情の青だ。
誰もお前のためには泣かない。
透明な湖の水面を覗いてみろよ。そこにはどんな姿も映りはしないだろう。
そう、お前はこの世にはいないのだ。
いる、なんて想いたがっているのは、お前だけ。世界中の誰も、お前の姿など見ない。みんな素通りしていく。
世界の中心で、泣き叫び、喚いてみても、誰にも聞こえやしない。
お前が生まれた時、壁に埋めてしまった女はどうした。
えっ、覚えていないって? 見たことがないって?
だからお前は酷薄な奴と思われてしまうんだ!
見たじゃないか。すれ違ったじゃないか。お前の前を影のように、骨と筋だけの姿になって通り過ぎていったじゃないか。お前はまじまじと見詰めていた。いや、目を離すことができなかったのだ。
なのに、お前は、見たことがない、逢ったことがないと嘯く。
どうしたらお前は認めるのだ。あの子の血の涙をお前のその手で受け止めるのだ。
青い花が咲いている。そう、あの白壁からひび割れ顔を覗かせ、お前を誘っているじゃないか。
血も脂も、骨だって砕けて粉となって、壁に染み込んで、お前を埋めてしまおうとしている。
もう、こうなったら、お前と女の骨と皮と筋と腱とが絡み合い、縺れ合い、いがみ合い、愛し合い、魂魄となるまで諍い続けるしかないのだよ。
ああ、そうして初めてやっとお前は愛を知るのだろう。
なんて、世話の焼ける奴なのだ、お前は。
あのおんなの深情けを奥津城で知る、それがお前にお似合いなのだ、お前だって、分かっているはずだ、そうだろ?
(本文中に挿入した絵は、いずれも、「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」より)
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