しわくちゃのナスの漬物
小生は、ナスの浅漬けは、甕(壺?)に入れて作っている。
ナスを四つ切にし、ナス漬けの素を加えて、素を刷り込むように揉む。ナスがしんなりしてきたら、下準備ができたということで甕に入れ、その上に漬物石を載せる。
さらに蓋をして、冷蔵庫に。数日でできる。
キュウリは、文字通りの浅漬けで、ポリ袋に入れて、浅漬けの素を加えて、袋の上から揉むだけである。
冷蔵庫に安置し、二日もすれば、食べごろになる。
その点、ナスは浅漬けじゃなく、本格的…に近いかもしれない。
さて、小生、本年の六月から通院している。血糖値や肝臓の機能を表す数値がやや悪い。
肝機能の薬などは飲んでいるが、血糖値を下げる薬は飲んでいない(処方箋も書いてもらっていない)。
先生いわく、肝機能などがよくなれば、おのずから血糖値もよくなり、血糖値を下げる投薬治療は不要になる、という。
実際、三か月、通院して、今月、採血検査の結果、血糖値の数値は改善の傾向が見られ、まずまずの数値だったようである。
さて、小生、ナスやキュウリなどを浅漬けにして、食べている。野菜嫌いなので、調理すると、食べられなくなる。
キュウリだと、生か浅漬けが限界なのだ。
が、漬物…浅漬けということで、どうしても気になるのが塩分の取りすぎである。
一方で、通院して体の機能を示す数値の改善を目指しているし、食事だって、飲むものだって、甘いものを避ける、塩っ辛いものは避ける努力をしているのに、他方では、いくら自宅の畑からの収穫だからといって、漬物をせっせと食べていたんじゃ、何のための生活習慣の改善の努力なのか、分からなくなる。
そんな中、漬物のことで、気づいたことがあった。
つい先日のことである。甕からナスを取り出して、皿に盛る際に(盛る…というほど、いっぱい、皿に載せるわけじゃないのだが)、あーあ、ちょっとしょっぱいなー、でも、せっかくの自作の野菜だしなーと思って、やや複雑な気持ちでナスを眺めていた瞬間、そうだ、何も甕から取り出したままに、皿に載っける必要なんてないんだと、漬物のナスを食べる分だけ手のひらに載せ、一気にギュッと握ってみた。ナスの中の水分が指の隙間から流れ出す。
しわしわになったナスの漬物。
なんだ、これだけのことで、相当程度、塩分が減るじゃないかと気づいた瞬間、遠い日の光景が蘇ってきた。
小生は高校を卒業後、富山(郷里)を離れた。
それまでは、食卓にお袋の作った漬物が上るのが日常の当たり前の光景だった。
キュウリは酢の物にされることが多かったので、漬物というと、ナスや沢庵が多かった気がする。時々、白菜の浅漬けも上ったかも。
そのナスの漬物が、皿に載っているのだが、いつも、なんだかしわくちゃになっている。
不思議だなーと思いつつも、漬物石のせいで、こんなしわくちゃになるのかと、深く追及することもなく、当たり前の現実として受け入れていた。
だが、数日前、気づいたのだった。漬物を作る際には、塩分をやや多めに加える。
けれど、食べる際には、少し塩っ辛い。なので、お袋は、甕から取り出す際、手でギュッと握って、汁と同時に塩分を調整していたのだ。
だから、勢い、ナスがしわくちゃな格好になっていたのだ。
せっかくできたナスの漬物。汁の中には塩分も多いかもしれないが、栄養分となるエキスも多いだろう。
ナスの漬物をギュッと絞ってしまっては、エキスも塩分と一緒に流れ出してしまうに違いない。
それでも、濃すぎる塩分は避けたほうがいい。
自分が甕から取り出したナスを、少しでも塩分を減らそうと手でギュッと握った瞬間、あるいは、しわくちゃになったナスの漬物を見た瞬間、遠い日の母の作ったナスの漬物のしわくちゃな形、あるいは、お袋の仕草をふと、思い出した…という話であった。
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