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2015/07/30

楽しみは読書だけど

 昨日、先月、行われた健診の結果通知票をもらった。やはり、思わしくない数値が並ぶ。
 改善されている数値も散見されるけど、これ以上は拙いという結果も。

Hunter

← ウェンディ・ムーア【著】『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯』(矢野 真千子【訳】 河出文庫) (画像は、「紀伊國屋書店ウェブストア」より)

 6月から病院通いしているので、気長に治療を受けたり、生活改善を心がけていくしかない。

 今や愉しみというと、読書くらいしかない。畑での野菜作りは、好きな人なら羨ましいくらいの収穫があって、それは素晴らしいのだが、生憎、未だに野菜を受け付けない。
 でも、生活改善のためには、ご飯も控えめ、ラーメンも我慢、炭酸飲料は御法度、野菜を中心の食事と、食べることを愉しみに生きるのは難しくなっている。ラーメン屋さん通いするとか、行きつけの定食屋さんを作るのも、憚られる。

 なんてさびしい生活。彼女が欲しいが、誰にも相手にされないしね。
 自分に積極性が足りないのは、紛れもない事実。

 ということで、家では体を休めること(つまりは居眠り)と読書の生活。
 今朝は、プルースト作の『失われた時を求めて〈8〉ソドムとゴモラ〈1〉』を読了した。車の中で読んだりしていたのだが、やはり、窮屈なところで読むには勿体なくて、家に持ち帰って、一気に読み終えた。

 本巻は、いよいよユダヤ人問題と同性愛がテーマ。
 プルースト本人はともかく、小説の語り手は、同性愛のようでもあり、異性愛のようでもある。若く美しい女性を漁ることに喜びを覚えている。恋と性愛は別個ということで。

 ところで、思うに、同性愛というのは、やや違和感を覚える表現だ。
 同性愛と言いつつ、当人たちは、それぞれに男性と女性なのだから、異性愛に違いないのだ。
 ただ、肉体的外見上は、女性同士、男性同士、つまり同性同士に見えるってことなのだ。
 でも、心は、そして深い意味での肉体的資質においては、異性愛。
 だからこそ、男女の仲は入り組んでいて、複雑怪奇になりがちだが、それだけドラマチックでもあるのだろう。

Photo

← プルースト【作】『失われた時を求めて〈8〉ソドムとゴモラ〈1〉』(吉川 一義【訳】 岩波文庫) (画像は、「紀伊國屋書店ウェブストア」より)

 車中では、プルーストに代わって、「遺体の盗掘や闇売買、膨大な標本…ユーモラスなエピソードに満ちた波瀾の生涯を描く傑作」という、 ウェンディ・ムーア著の『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯』を読み始めた。
 実に面白い。今の時代から振り返ると、ユーモラスなドタバタ劇の連続だが、見様によっては(素人の目には特に)グロテスクの極みのようなエピソードに満ちていて飽きない。
 とにかく、目次を眺めるだけでも、その突拍子もない人生が察せられる:

御者の膝
死人の腕
墓泥棒の手
妊婦の子宮
教授の睾丸
トカゲの尻尾
煙突掃除夫の歯
乙女の青痣
外科医のペニス
カンガルーの頭蓋骨
電気魚の発電器官
司祭の首
巨人の骨
詩人の足
猿の頭蓋骨
解剖学者の心臓

 さて、自宅では、プルーストを読了したので、読み止しだった、ニコラス・ローズ著の『生そのものの政治学』の続きを読み始めた。副題には、「二十一世紀の生物医学、権力、主体性」とある。
 今日のNHKクローズアップ現代のテーマは、「遺伝子革命が病を治す がんも糖尿病も ! ?」で、まさに本書とも深く関わりのある題材。

 人類の医学や生物学の研究の進展は、いよいよ遺伝子操作、ゲノムそのものに手を出すところまで来た。
 遺伝子の異常が単純に病気に直結するなら、たとえばエイズの治療について、朗報以外の何物でもない。
 しかし、ヒトの欲望は限りない。遺伝子の生前診断(治療)となると、何か異常があったら、産まないという選択肢に繋がる。あるいは、特定の病気になりやすい遺伝子配列だったりすると、その情報を元に、社会から(会社や地域や仲間から)排除されかねない。

 そもそも、ある特定の遺伝子が単純に一つの機能や肉体的形状に直結するわけでもない。いろんな遺伝子配列が複数の機能を担っていたり、幾重もの反応の末に何かの形状や機能の発露に繋がるケースが多い。

9784588010170

← ニコラス・ローズ:著『生そのものの政治学 二十一世紀の生物医学、権力、主体性』(檜垣 立哉:監訳, 小倉 拓也:訳, 佐古 仁志:訳, 山崎 吾郎:訳 叢書・ウニベルシタス 1017) (画像は、「法政大学出版局」より)

 さらに、近年、ウイルスの研究が進んできて、遺伝子配列の中に数知れないウイルスの遺伝子が組み込まれていることが分かっている。その遺伝子が人類なり動物なり植物の機能に深く関わっている。
 番組の中でも、遺伝子操作の研究にも、その成果には功罪があると、山中博士が控えめに述べていたが、功も大きいが、罪や脅威も、想像以上のものがある。

 現代の生物学の研究は、その成果が多くは国や大手の製薬会社が握ってしまっている。
 つまり、遺伝子情報が特定の機関に握られてしまいつつあるということだ。つまり、遺伝子情報、ゲノム情報の占有という形での、新たな権力機関が生まれつつあるのである。

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コメント

健康診断の結果は以前から記事にされていましたが、思わしくないですか。
ボディメイクは楽しいですよ。
少々面倒ですが、体にいいものを調理して、数値が改善するのも一興かと……。
その分、読書の時間は減りますが。
なるほど、同性愛といいながら、本質的には異性愛なのかもしれません。
しかし、体が異性の場合は恋愛対象にならないようですから、やはり同性愛なのでは?
私は今どきの草食系男子が理解できません。

投稿: 砂希 | 2015/08/01 17:56

砂希さん

前に本ブログでも書いたけど、6月から病院通いを始め、同時に、栄養士さんか看護婦さんに生活改善指導を受けています。
体重も1キロから2キロ、減りました。
年内に80キロ以下を目指しています。

まあ、レズであれホモであれ、同性愛の感覚は分かりません。まあ、吾輩がターゲットにならなければ、よきにはからえ、です。

草食系男子の気持ちは小生にも分からない。目の前に美女がいたら、みただけでビジョビジョになるよ! 勿体ない。
ま、縁はないけどさ。

ところで、草食系女子もいるのでしょうか?

投稿: やいっち | 2015/08/01 21:13

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