埒外のオレ
見たくない、傍に寄って欲しくないってのは、分かるよ。醜いものは観たくない、傍には近づきたくないってのは、正直な気持ちだものね。
← ディケンズ【作】『大いなる遺産〈上〉』(石塚 裕子【訳】 岩波文庫) (画像は、「紀伊國屋書店ウェブストア」より) このところ、啓蒙書の類の読書が続いてきた。久しぶりに小説、それも、大作を読みたくなった。これまた久しぶりにディケンズ! せっかくなので、刊行されて間もない、初めて手にするこれ!
試食コーナーとか、一定以上の金額のレシートを提示したら、チェックの上、粗品を提供するって場所の店員(明らかにバイト、あるいは新人)は、オレが近づくと、突然、その場を去る、あるいは声を潜める、そうでなかったら、オレにそっぽを向くようにして声を出す。
オレが立ち去ると、何事もなかったように、その場に戻り、あるいは向き直り、定められた業務を続ける。
あの若い女性店員、オレがレジを済ませて店の出入り口に近づいてくるのを観て、小父さん店員に商品受け渡し業務を代わってもらう。オレが去ったら、さも、トイレ休憩で一時、代わってもらったとばかりに、そう、何事もなかったようにして、出ていく客に愛想を振りまき、笑顔で声を掛け、客から渡されるレシートを確認し、ボールペンでチェックし、粗品を渡す。
あてつけのように、愛想よく。
あの店員だけの話じゃない。オレには毎度の経験。いつものこと。
彼女らにすれば、不快な時を逃れただけなのだろう。不潔なもの、醜いもの、在ってほしくない状況を賢明にやり過ごしたというだけのこと。誰も責められやしない。
苦しむのは俺だけ。
彼女らに無視…どころか忌避されて、オレの心は泣いてしまう。こころの肉が引き裂かれる思い。
世にどんな立派な御託を並べる奴がいたって、この現実は永遠に変わらない。その御託は、オレを埒外にしての話。彼女らの行動をほんの僅かでも変えられるわけじゃない。彼女らだって、一般論では御託を信じるのだろう、誰にも分け隔てなく振る舞いますって言い募るんだろう。
でも、いざとなったら、オレを忌避する習性は変わりはしない。さぞ、当たり前のようにそう行動する。しかも、そう振る舞う自分を疑いもしない。
オレは埒外に居るのだ。つまりは、此の世にいないってことだ、彼女らには。
← ロジャー・イーカーチ【著】『失われた夜の歴史』(樋口 幸子/片柳 佐智子/三宅 真砂子【訳】 インターシフト) (画像は、「紀伊國屋書店ウェブストア」より) 本日読了。少なくともヨーロッパでは、産業革命以降、夜もおちおち眠れなくなってしまったようだ。照明が発達して、夜も働け、働け、である。できれば、日本の夜の歴史の本を読みたい。
それにしても、こういう扱いにはもう慣れてもよさそうなものなのに、未だにああいう仕打ちに遭うたびに、心の肉が破れちゃう。下手すると血の涙も溢れそうになる。
この思いをどうしたらいいのか、全く分からない。
やり過ごしていくしかないんだろう。運命という訳の分からぬ言葉で糊塗するのが賢明なのだろう。
独りぼっちの道を行く。道なき道を遠からぬ終わりの時まで。
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