蘇鉄の花
過日、オリヴァー・サックス著の『色のない島へ: 脳神経科医のミクロネシア探訪記』 (ハヤカワ文庫 NF) を詠んだことがあった。サックス本としてはドキュメント風で異色だったが、面白かった。
→ 「19世紀の浮世絵に描かれたソテツ(広重『東海道五十三次』より赤坂宿)」 (画像は、「ソテツ - Wikipedia」より)
本書については、必ずしも主題ではないのだが、「ソテツの島へ」という後段の章が印象的だった。
グアムなどの歴史も興味深いのだが、特にソテツの話が何とも忘じがたい。
上掲書を読む二三か月前に、ピータークレイン著の『イチョウ 奇跡の2億年史: 生き残った最古の樹木の物語』 (矢野 真千子訳 河出書房新社)を読んだばかりだったことも印象を強めたのかもしれない。
ソテツというと、日本の九州南部および南西諸島の、主として海岸近くの岩場に生育するに分布するソテツがなじみ深い。春日八郎の歌唱でヒットした歌(「長崎の女」)にもソテツが織り込まれていて、南国情緒を覚えさせたものだった。
「ソテツ - Wikipedia」によると、「名前は、枯れかかったときに鉄クギを打ち込むとよみがえるというのに由来すると考え, 鉄を受けると元気になる(蘇鉄)という伝承があり、茎にクギを打ち込まれていることがよくある」とか。
同上の項にも触れられているが、オリヴァー・サックス著の『色のない島へ: 脳神経科医のミクロネシア探訪記』 では、「グアム島など、ソテツ澱粉を常食している住民がいる地域ではALS/PDC(筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合、いわゆる牟婁病)と呼ばれる神経難病が見られることがある」がメインのテーマの一つなのである。
ソテツについては、「ソテツ 蘇鉄」が詳しい。ここでは、「イチョウと共に 最も原始的な性質を持ってい」て、「そのひとつが精子の存在」などと書いてある。
しかしながら、同書によると、グアム島のソテツは日本でも観られるソテツではなく、遠くから見るとまるでヤシの木のような、ナンヨウソテツなのだとか。
以下、同書より、(ナンヨウ)ソテツに関わる記述をアトランダムにメモっていく。
ソテツはヤシよりはるかに古い植物で、ヤシやその他の花弁植物が地上に現れる一億年前から存在している。
「ソテツ 蘇鉄」にも書いてあるのだが、本書でも、「ソテツの精子発見は 1896年(明治29年) 東京帝大農科大学(現 東京大学農学部)助教授であった 池野成一郞博士によるもので、平瀬作五郎助手による イチョウの精子発見と同じ年であった」ことにも言及されている。
世界には九属に含まれる一〇〇種のソテツがある。
デンプン(サゴ)を含むことから、多くが食用にされている。非常食以上の食用だった。但し、食べるには、毒を取り除く作業が必要。
琉球諸島では、ソテツから酒を作る。
毒を含むが、薬としての効用も期待されてきた。
ソテツの中には樹齢一〇〇〇年を超えるものがある。
ソテツが雄であるか雌であるかは、成長して見事な球果をつけるようになるまで分からない。
ソテツは強い生命力と環境に適応する優れた能力を発達させて、同時代の植物が次々に消滅する中で、二億五〇〇〇万年前から今日まで生き続けている。
ソテツは過去五億年の間に多くの植物に起きた過度の分化を防いでいる。
独特のコラロイド根を発達させて藍藻類と共生している。これによって大気中の窒素を吸収できる。
← 「ソテツ (Cycas revoluta)」 (画像は、「ソテツ - Wikipedia」より)
などなど、まだまだソテツを巡る記述は豊富である。ネットで(ナンヨウ)ソテツについて詳しいサイトを探したが、小生には見つけられなかった。きっとあるはず!
「ナンヨウソテツ おすすめコンテンツ ≫ 植物図鑑 筑波実験植物園(つくば植物園) Tsukuba Botanical Garden」
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