郷里の風景今昔
晴天に恵まれた五月の連休も明日で終わり。十年ほど前、まだ父母が健在だ。ったころは、富山市ではこの連休中に田植えをするのが通例だった。
我が家も例外ではない。高校を卒業して郷里を離れた小生だが、十五年ほど前から、正月と夏休み以外に、五月の連休も帰省し、田植えを手伝ったものだった。
→ アウグスト・ペイショット(Augusto Peixoto) 作「Silent Memories」 (画像は、「. T h e A r t O f D r e a m s .」より)
今は富山は、稲の生育の向上を期して、田植えの時期を若干、遅らせている。だったら、小生は五月の帰省は考えられなかったかもしれない。
我が家もとっくに稲作を放棄した。茶の間の窓から見える田圃も、あと一軒のみとなった。
遠い昔、小生がガキだったころは、周り中が田圃で、その中に集落として我が町(村)があったものである。
田圃でなければ、畑か野原。それこそ、昔のマンガなどで空き地というと、何故か工事で使い残された大きなコンクリートのドラム缶の形をした塊(土管)が放置されていたりしたが、まさにそんな空き地が方々にあった。
← ヴラジーミル・ナボコフ著『ナボコフの文学講義 〈上〉』(野島秀勝訳 河出文庫) 「世界文学を代表する巨匠にして、小説読みの達人ナボコフによるヨーロッパ文学講義録」とのことだが、彼に日本の文學作品をも論評してもらいたかった。 (画像は、「紀伊國屋書店ウェブストア」より)
今、わずかに残る田圃は、まだ、耕運機が入っていない。連休明けには耕され、水が張られ、いよいよ田植えとなる。その頃には、待っていたかのように、アオサギなどが飛来して、田圃の虫を漁ったりする。
何処に眠っていたのか、土中から湧き出すように、カエルなどが蠢き出す。
用水路は、昔は土手だったものが、コンクリート舗装されてしまい、ドジョウもメダカもタニシも姿を見せてくれない。まして、六月になっても、蛍が明滅することもない。
→ Augusto Peixoto 作「high」 (画像は、「. T h e A r t O f D r e a m s .」より) 「 T h e A r t O f D r e a m s.」によると、アウグスト・ペイショットはポルト(ポルトガル)在のデザイナー(March 24, 1971生)。彼によると、在住するポルトは、芸術的インスピレーションを得るに最適の地だとか。ミステリーと憂愁に満ち、同時に喜びと活気に溢れていて、彼の創作に反映しているようだ。
我が家の近隣の風景の今昔については、「富山と田圃と私」にて大よそのことを書いてある。
← Augusto Peixoto 作「subsequence」 (画像は、「. T h e A r t O f D r e a m s .」より) 彼は画家であると同時に、ドラマーであり、二つのバンドでドラマーとして活動している。創作していなければ、演奏で達成感を得ているとも。「Augusto Peixoto's Image Gallery - Advanced Photoshop」でも、多数の画像を見ることができる。
その一部を抜粋してみる:
春先には蓮華草の咲き誇っていた田圃に水を張った中を、裸足になって田植え機を押して歩く。泥田に嵌った足をヌポッと抜いて、また、次の一歩を踏み出す。田植え機をテンポ良く押していかないと、この数年は目印となる線を引いていないので、まっすぐきちんと田植えをすることが出来ない。
土の中には数知れない虫たちが生息している。蛭にも似た虫が脛に張り付いたりする。 でも、数年前、水虫だった足が、泥田に浴したことで、呆気なく直ったのは不思議な体験であった。
農協で準備される青いプラスチックの箱に入った苗を少しずつ田植え機に移して、植えていく。けれど、田圃の端のほうは、どうしても手植えになる。大概、数箱残る苗の塊を手で千切っては、ほんの数本ずつ、それこそ2,3本ずつ植えていくのである。
天気さえよければ田圃の泥は手に生暖かい。土と水と幾ばくかの小さな生物たちの感触を味わう。少なくとも西日本の各地で遠い昔から、田に面して多くの人々が生きてきたのだ。
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