IT is キラー・クラウン
ピエロは嗤う。あなたを、世間を、世界を、そして自分を。
えっ、舌をペロッと出してるって? ベロが鏡に釘付けされているのさ、なんて言って信じる? あなた。
← ピエロ姿のジョン・ウェイン・ゲイシー 「ジョン・ウェイン・ゲイシー (John Wayne Gacy, 1942年3月17日 - 1994年5月10日)は、アメリカ合衆国生まれの連続殺人者」。(以下、コメントや画像は、「ジョン・ウェイン・ゲイシーまとめ【ゲイシーが描いた絵画】 - NAVER まとめ」より)
心は殴られ潰されてしまった。涙の河は行き場を失い眼窩へと流れ込む。
サテンだったはずの衣裳は、まるで心と体を甚振るように、風と戯れる。風に舞う。
疾風に飛ばされた砂利が更紗の生地を貫通し、生身の皮膚に食い込んでくる。
紗は擦り切れ、ガーゼのように半透明となった。ああ、美しき包帯、それが我が衣なのだよ。
覗かれてしまった、一番、見られたくなかった姿を!
赤裸の心など、誰にも見せたことなどなかった。自分にさえ!
→ ゲイシーが描いた絵画 「子供たちを楽しませるため、パーティなどでピエロに扮することが多かったことからキラー・クラウン(殺人道化・殺人ピエロ)の異名を持つ」。
わたしがこんな姿だったなんて、知らなかった。知りたくなかった。
それを、あなたが暴露してしまった。あなたの目がわたしの心を剥き出しにした。
ひん剥かれて、わたしは身も心もパサパサだ。ドウランも塗ったそばから乾いて剥がれ落ちてしまう。
疎らな髪の毛をウイッグで隠してきたけど、もう限界だってことはわたしだって分かっちゃいたんだ。
マスカラは涙と汗で垂れてしまい、睫毛すら瞳の悲しみを覆い隠すことはできない。
← ゲイシーが描いた絵画 「1972年から1978年のあいだ、少年を含む33名を殺害したことが明らかになっている。資産家の名士でチャリティー活動に熱心だった彼の犯行はアメリカ社会を震撼させた」。
ああ、でも、何も楽屋裏を覗くことはなかったでしょ!
足腰が立たないの。魂の抜け殻なの。骨身が砕かれちゃったの。
世界の不幸を呪うのに疲れてしまった。
それでも、わたし、祈っているの。あなたの幸せを、わたしの幸せを。
→ ゲイシーが描いた絵画 「彼の描いたピエロの絵画はマニアには大変な人気があり、展示会が開かれたり、高値で取引されている。著名人では俳優のジョニー・デップが購入して所有している」。 彼については、「ジョン・ゲイシー - Wikipedia」など参照。
命が体液のように零れていく。いえ、蒸発していくの。パサパサの心。
口内では、凝結した血が岩になっている。目いっぱい開いても空気は吸えない。
ドウランという鎧で身を守ってきたけど、それも、もう、限界。
マスカラは心というキャンパスに描くクレヨン。血の赤と、脳漿の白と、便の緑との三原色は揃っていたのに。
← IT/イット(1990) 映画(TVドラマシリーズ)「IT」の「原作は1986年に発表されたスティーヴン・キングのホラー小説」。 (画像は、「TVM IT/イット - allcinema」より) 「人間の弱さに付け込む不気味なピエロ、ペニーワイズに翻弄される人々を描く」この作品で、「ペニーワイズは、実在する連続殺人鬼ジョン・ゲイシーを基にしている」とか。
ああ、わたしは生きたい。ただ、普通に風に吹かれたいの。
その証拠に、今日も私は嗤う、世間の面前で。
(地の文章は、拙稿「ピエロは嗤う」より。地の文と画像とは、一切、関係ありません。)
関連(?)拙稿:
「ピエロなんだもの」
「ボクはダイオウイカだよ!」
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コメント
うへ~、こんな殺人鬼がいたなんて…。
ジョニー・デップは彼の絵を持っているんですね。
ちょっとわかるような気がしました。
狂気は誰にでもあります。
でも、この人のものは相当大きかったみたい。
現実とのギャップを埋めるのが、ピエロの絵だったのかしら。
投稿: 砂希 | 2015/05/09 18:33
砂希さん
ピエロの姿恰好は、己の真実を隠し、演じたい人間像を示すには便利な道具。
シャイな人が、己が秘する人や子供への愛情を思いっきり示す。
人を愛する溢れるような強い感情を素直に公然のもとで表現するって、普段はなかなか難しい。
そこがピエロ像の皮肉な両面性なのかな。
キラー・クラウンは、ピエロのマスク(衣裳)の裏で、子供たちをどんな目で眺めていたのか。
投稿: やいっち | 2015/05/09 22:22