一枚の絵 シャバ「九月の朝」
「九月の朝」は、名画ファンでなくても、知っている人も多いようだ。
描いたのは、ポール・マイル・シャバ。フランスの画家&イラストレイター。でも、名前より、この「九月の朝」の複製画の広告画像で馴染んでいる人が多いだろう。小生もその一人。
→ ポール・シャバス(Paul Chabas, 1869-1937)「九月の朝(September Morn)」 (画像は、「September Morn - Wikipedia, the free encyclopedia」より)
あまりに有名で、逆に敢えてこの画家のことを調べようとは思わなかった。ある種の思い込みで、きっとこの画家はこの作品一作が際立って大衆性を持ったのだろう、他の作品はきっと見るべきものが(少)ないのだろうとさえ、勝手に決めつけている。
今日、敢えてこの画家のことを採り上げようと思ったのも、ネット画面の上にシャバの絵(複製画)の広告が何度も横切ったからである。
ネットは小生だったら、こういった類の絵が好きなのだろうと、決めつけている。クソ! 当たりだ!
この絵なら、家族が居ても、居間などに飾っておいても、女性に眉を顰められる恐れも少ないのか。
ポール・マイル・シャバは、人によってはシャバスと表記する人もいる。シャバが語感から娑婆を連想させるから、敬遠したかったようだ。
小生は、シャバ=「九月の絵」という刷り込みが自分の中で成ってしまっているので、シャバと呼びたい。
「HANART-WE BREATHE ART INTO YOUR LIFE」によると、「ウィリアム・ブグローに美術を教えてもらった」とか。なるほど。ブグローの影響がが濃厚である。
ブグローについては、拙稿「ジャン=レオン・ジェローム (2:ヌードを描く光景の淫靡さ)」など参照のこと。
← ポール・シャバス(Paul Chabas, 1869-1937)「はじめての水浴(Premier bain)」 (画像は、「1907年春のサロン展(5)はじめての水浴(Premier bain) 100年前のフランスの出来事」より)
さてシャバのこの一枚の絵「九月の朝」。
やはりというか、「1907年春のサロン展(5)はじめての水浴(Premier bain) 100年前のフランスの出来事」によると、「この絵については、最初ニューヨークの画廊に飾られていたとき、ある人物が「公徳心を損なう」作品だとして排斥運動を起こしたという記録がある。それが逆にこの絵が有名になるきっかけにもなった」とか。
なるほど、観る人(疾しい嗜好を持つ人)が見れば、何処までも嫌らしくは観れる。
でも、一般的な印象は、「子供たちや未だあどけなさの残る少女が水浴する姿は、欲情を刺激するには程遠い。いわば健康的な明るい裸と言えよう」というものだろう。
だからこそ、歌のモチーフや題名になったりもする。
「セプテンバー・モーン~かつてのときめきを思い出す歌|TAP the ROOTS|TAP the POP」によると、「ポール・マイル・シャバの絵画「九月の朝」は、ロマンチックな思いを抱かせる」ということで、「ニール・ダイヤモンドが「ナタリー」などでも知られるフランス人歌手、ジルベール・ベコーと共作した「セプテンバー・モーン」」という歌が生まれたとか。
その頁には、歌詞も載せてある:
♪九月の朝
ふたりは夜が真新しい朝を迎えるまで踊った
恋するふたりは
ロマンチックな芝居の場面を演じた
九月の朝は
今でも私をそんな気分にさせるのだ♪
→ 【ポール・シャバ】9月の朝 (画像は、「Amazon.co.jp: 【ポール・シャバ】9月の朝☆アートパネル 軽くて安全な複製画【L】サイズ ホーム&キッチン」より) 念のため、違う複製画を載せる。随分と印象が違う!
シャバのこの絵に関連して、情報を物色していたら、「『3冊の「ロング・グッドバイ」を読む』 - HARD BOILED CAFE」に面白い話題を見つけた。まさに、シャバの「九月の朝」の絵の雰囲気だからこその話題だろう。
この記事自体が、小生も読んで気に入った、村上春樹訳の「ロング・グッドバイ」に関わるものということで、興味津々なのだが、それは本文に当ってもらうとして、関連するくだりだけ転記させてもらう:
「九月の朝」という話が出てくる。依頼人の妻で夢のように美しいアイリーンがマーロウを 落としにかかる場面で、ローブの下は一糸纏わぬ姿であることを“September Morn”という言葉で表現しているところがある。指摘を受け、自分の迂闊さに悔やんだが後の祭り。ポール・シャバが描いた絵『九月の朝』なら、新聞等に 掲載された複製名画の広告で何度も目にしたことがある。「売り絵」という偏見から軽視していたのだろう。確かにアメリカ人が好みそうな健康的な色気を漂わせた美女だ。
うーむ。「ロング・グッドバイ」を読み返したくなった。…原書が望ましいが、まあ、再度、村上訳で。
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