頑丈と岩乗 素養のなさを曝け出す
本編を読んでみて、初期とは云え、さすがにガルシア=マルケスの作品と思わせるリアル感。ただ、同時に『百年の孤独』の鬱勃感とは程遠い、明瞭な表現。分かりやすい。
が、このリアル感が曲者で、何処か作り物じみている。遭難者の話をルポルタージュの名手がうまく編集した…のかもしれないが、あまりに編集ぶりが見事過ぎて、実話のドキュメントなのか、創作なのか、訳者も含め、多くの人の論議を呼んできた。
小生も、仮に実話が元だとしても、本編は作品としてしか読めなかった。ただ、想像では手に余る事実を実際の遭難者の話に拠っているのだとは感じる。まさに、当時者ならではの信憑性。
→ 島 泰三 (著) 『はだかの起原―不適者は生きのびる』(木楽舎) 「寒暖、風雪、晴雨にかかわらず、常に体を守る完璧な衣類となる毛皮。なぜこんなに大切なものを、人間は失ったのだろうか? 人類の裸の起源を学術的視点から考察」だって。
この海での遭難者については、過去、拙稿「はだかの起原、海の惨劇」にて、ダグ・スタントン著の『巡洋艦インディアナポリス号の惨劇』(平賀 秀明訳、朝日新聞社)を援用する形で特集している。
ところで小生、本書ガルシア=マルケス著の『ある遭難者の物語』の訳文について、とんでもない非難をしてしまった。
ツイッターで下記のように呟いてしまったのだ:
ガブリエル・ガルシア=マルケス(著)『ある遭 難者の物語』( 堀内 研二訳 水声社; 〔新装版〕 版)を読み出した。翻訳で唯一、未読の本。驚いたことに、新装版なのに、校正ミスがそのまま。怠慢。
← ダグ・スタントン著『巡洋艦インディアナポリス号の惨劇』(平賀 秀明訳、朝日新聞社) 「太平洋戦争末期、日本軍潜水艦の魚雷を受けて沈んだ米巡洋艦。原子爆弾の部品を積み、密命を帯びた同艦の乗組員のうち300人は即死。海に投げ出された者にはさらに過酷な運命が待ち受けていた。低体温症、サメの群れ、飢え、乾き…紅蓮の炎と荒れる波間でいったい何が起こったのか」だって。マルケス著の『ある遭難者の物語』でも、遭難者は広大な海原に一人きり、容赦なく照りつける陽光、食べ物がなく餓えに苦しみ、サメに怯える日々が描かれている。
その<校正ミス>とは、<頑丈>と表記すべき個所が、<岩乗>とされていたのだ。
しかーし、である。実は、「岩乗」という言葉は、あまり使われてはいないが、ちゃんとした言葉なのだった。
「岩乗とは - 歴史民俗用語 Weblio辞書」によると、「人や物・馬などのすこぶる強健なこと」だって!
ということで、以下の訂正というか、お詫びのツイートを発した:
すみません。小生の勉強不足でした。「頑丈な」のはずが、「岩乗な」になっていた。目を疑った。漢字にも弱いので、こんな漢字があるのかなって。断然、校正ミスだと。でも、「岩乗」って言葉があるんですね。
ただ、「岩乗」は、中世・近世の言葉(用字)のよう。知らない自分の素養のなさを責められない、なんて言い訳したり。
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