フランケンシュタイン・コンプレックス
四月も中旬に入ったというのに、桜も葉桜に近づいてきたというのに、日中でも寒い。
今日は終日の雨。氷雨というほどではないが、真昼間でも薄暗いためか、周囲の眺めが寒々しい気がする。
やや体調が思わしくないこともあるのかもしれない。
→ メアリー・シェリー/著『フランケンシュタイン』(小林章夫/訳 古典新訳文庫) (画像は、「古典新訳文庫 光文社」より)
さて、ようやく、シェリー著の『フランケンシュタイン』を読み始めた。
この二月に「名著41「フランケンシュタイン」:100分 de 名著」の再放送が始まっていて、最初の放送時には見逃していただけに、全編を録画し、じっくりと視聴した。
刺激となって、断然、読むと決め、早速、購入したものの、なかなか読めずに来た。
「フランケンシュタイン」については、7年前も本ブログで特集している。
但し、当時は、小説を読んでの特集ではなく、横山泰子著の『江戸歌舞伎の怪談と化け物』(講談社選書メチエ)の中のある記述に釣られて関心を抱いてのもの。
← 横山泰子著『江戸歌舞伎の怪談と化け物』(講談社選書メチエ)
詳細は、拙稿「フランケンシュタインと出産の神話(前篇)」に譲るが、「お岩の出産が『東海道四谷怪談』の重要なテーマになっていること、お岩がお母さんとして化けて出ることの意味を、ここで考え直してみたい。その際、考えるヒントとしてメアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を引き合いに出そうと思う」という下りに刺激されたのだった。
同書では、さらに、エレン・モアズ著の『女性と文学』に影響されている面もあった。女性によって書かれた「出産の神話」だという解釈が示されているらしい(残念ながら、未だに本書は手にしていない)。
→ エレン・モアズ著『女性と文学』(青山誠子訳 研究社 (1978/12 出版))
拙稿「フランケンシュタインと出産の神話(後篇)」でも示したが、エレン・モアズは、「彼女を特異な存在たらしめた最大の特色は、(中略)若い母としての混乱した経験をもったこと」と述べたうえ、こう指摘する:
メアリー・シェリーのこの小説の最大の興味と、女性らしさは、次の点にあると私は考える。すなわち。生れたばかりの生命に対して突然嫌悪を感ずるという主題、誕生とその結果をめぐる罪と恐怖と逃亡のドラマという点である。(中略)『フランケンシュタイン』が誕生の主題についての、明らかに「女」にしか創れない神話であるように思われる理由は、それが誕生以前や誕生そのものではなく、誕生以後のこと――つまり産後の精神的ショック――を強調しているという、まさにそのことなのである。
まあ、小説の方は、まだ読み始めたばかり。あまり先入観に囚われるのも問題だろう。小説「フランケンシュタイン」は、少年だった頃に読んだだけのはずだし。小説は、虚心坦懐に読むのが大切だろうし。
← 小野 俊太郎 (著)『フランケンシュタイン・コンプレックス―人間は、いつ怪物になるのか』(青草書房) (画像は、「Amazon.co.jp 通販」より)
ただ、本稿を終える前に、上掲の拙稿「フランケンシュタインと出産の神話(後篇)」の中で、小生は、以下のように呟いていることだけ示しておく:
真っ赤な闇の世界から白昼の世界へ紛れ込んでしまい、途方に暮れている、招かれざる(生れなければよかったはずの)子ども…。そんな赤ん坊を手にした母の戸惑い。ある意味、人間は誰も人間界で迷っている不思議な少年・少女なのかもしれない。
参照サイト:
「フランケンシュタインの怪物が現実に?人間の頭部移植が2年以内に可能となるかもしれない(イタリア研究) カラパイア」
「名著41「フランケンシュタイン」:100分 de 名著」
「『醜の歴史』から『フランケンシュタイン』へ?」
「フランケンシュタインと出産の神話(前篇)」
「フランケンシュタインと出産の神話(後篇)」
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