ウミガメの遥かなる回遊の謎
昨日、仕事でお客さんを出迎えるため、初めて一昨日開業したばかりの富山駅の構内に入った。さすがに賑やか。ちょっとだけ、東京の新宿や東京駅などの混雑ぶりを思い出した。実際には、遥かに及ばない賑わいだけど、それでも、嬉しくないはずがない。
← 新しい富山駅 (画像は、「富山駅 - Wikipedia」より)
ただ、小生、仕事中ということで、構内を見て回るわけにはいかない。
それでころか、恰好が駅員さんの制服姿と似ていたからか、トイレは何処だ。市場(マルシェ)は何処だ、在来線の切符はどこで買えるか、などと質問攻めに。
ジョン・ブロックマン著の『知のトップランナー149人の美しいセオリー 』(長谷川 眞理子【訳】 青土社)を楽しく読んでいる。多分野の学者やジャーナリストの短いが、それだけに凝縮された(科学などの理論の美しさについての)見解を読める。
サイエンス系の啓蒙書を読むのが好きなのだが、視野を広げたいと本書を手にしたのである。
いろいろ面白い話が多いのだが、ここでは小生の好きな哲学者であるダニエル・C・デネットの「ウミガメの一部はなぜ回遊するのか」という一文を紹介してみる。
同氏については、これまで、『ダーウィンの危険な思想―生命の意味と進化』 や『解明される意識』などを読んできた(共に青土社刊)。拙稿「ダニエル・デネット著『ダーウィンの危険な思想』の周辺」
ただし、下手な紹介にならないよう、一部を転記しておく:
私が選ぶのは私が楽しいと思っている一つの説明だ。それは正しいかもしれないし、間違っているかもしれない。私にはわからないが、おそらく、エッジの読者の誰かが、適切な文献も添えて、権威をもって判定してくれるだろう。私は、本当にその真偽を知りたいのだ。数年前、誰かが私に、ある種のウミガメが、アフリカの西海岸で交尾したあとに、わざわざ南大西洋を横断して南アメリカの東海岸にまで産卵しにくるのは、その行動が始まったときにはゴンドワナ大陸が分裂を始めていたときで(1億3000万年までの間)、そのころにはカメたちは狭い海峡を泳いで渡っていただけだったからだと言った。毎年毎年、泳ぐ距離が1インチかそこらだけ増えていったのだが、誰がそれに気づくだろう? 最終的には、彼らは産卵のために海洋を横断することになったのだが、なぜこんなとんでもないことをするようになったのか、もちろん、カメたちの誰も知らない。(本書 p.173-4 より)
→ 「ツバメ H. rustica」 「日本で繁殖するツバメの主な越冬地は台湾、フィリピン、ボルネオ島北部、マレー半島、ジャワ島などである」とか。 (情報や画像は、「ツバメ - Wikipedia」より)
このあと、「この例で素晴らしいのは、いくつかの重要な進化的テーマを活写しているところだ。何百万年にもわたる変化があまりにもゆっくりしたものであるので、それが持つ力の大きさがわからないこと、動物行動のほとんどが、たとえそれが適応的である場合にさえ、理解する手がかりがないこと、そして、もちろんのこと、自然淘汰による進化が、好奇心に満ちた自然誌家の想像力に、目からうろこの視点を与えてくれること」云々と続いていくのだが、ここでは省略する。
小生自身、渡り鳥について、不思議に思っていたことがある。渡り鳥がどうやって遠い距離を移動できるのかについては、一定の説明がある。
「渡り鳥 - Wikipedia」によると、星や太陽を使って、「ある時間にある方向に向かって飛ぶことを何度か繰り返すことにより、目的地から数百kmほどのところまで進む」、地形や「磁場などがかかわる、生まれながらにして持つ地図を頼りに目的地まで数kmのところまで進む」、最後には、「地形や環境の特徴を頼りに最終目的地まで到達する」などと。
← 「カオジロガン」 (画像は、「渡り鳥 - Wikipedia」より)
渡り鳥は、「食糧、環境、繁殖などの事情に応じて定期的に長い距離を移動(渡り)する鳥のこと」だが、疑問なのは、そもそも何故、何百キロ、何千キロもの長距離を移動するのか、その理由である。
あるいは、渡りを始めた動機(?)というべきか。
デネットが紹介した説を援用すると、渡り鳥にしても、最初は鳥の視野の圏内を移動していただけなのであり、それが何千万年の間に、気がつけば数千キロもの距離を当たり前のように移動するようになっていた、ということなのだろうか、さて。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- シェイクスピアからナボコフへ(2025.01.24)
- 日本の常識は世界の非常識(2025.01.23)
- 庭仕事を我武者羅に(2025.01.21)
- 兵どもが夢の跡(2025.01.20)
- 寒風にアカギレしてる(2025.01.19)
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- シェイクスピアからナボコフへ(2025.01.24)
- 日本の常識は世界の非常識(2025.01.23)
- 庭仕事を我武者羅に(2025.01.21)
- 兵どもが夢の跡(2025.01.20)
- 寒風にアカギレしてる(2025.01.19)
「科学一般」カテゴリの記事
- 日本の常識は世界の非常識(2025.01.23)
- 庭仕事を頑張った褒美に入浴(2025.01.06)
- 元旦から四日連続仕事(2025.01.05)
- いつか掃除機も綺麗にしたい(2024.12.31)
- 年末特番大流行り…視野狭窄(2024.12.30)
「富山情報」カテゴリの記事
- 更新世パークとは(2024.09.03)
- 野菜畑から果樹園へ転換…その顛末(2024.06.25)
- 励ましてくれる存在(2024.03.15)
- 途方に暮れる夢続き(2024.02.01)
- 木はなぜ燃やすとぱちぱちとなる?(2024.01.24)
コメント
こんにちは。
新幹線の開通で富山も恩恵を受けているのでしょう。以前何度か車でワンチャン達を連れて富山周辺を回った事がありました。
投稿: シゲ | 2015/03/21 16:44
シゲさん
確かに今は新幹線効果があります。
でも、当面は、です。
今、なかったら話になりません。
問題は、宣伝効果の薄れる三か月や半年先以降です。
隣の金沢が圧倒的。悔しいけど。
投稿: やいっち | 2015/03/21 22:31