ベル・エポック…富の世襲社会のあだ花か
小生は、昨年来、世界的にも(日本においても)話題の書である、トマ・ピケティ著の『21世紀の資本』(訳者:山形浩生/守岡桜/森本正史 みすず書房)を読んでいる最中である。
→ 「ベル・エポックの精神を表現したポスター(1894年、ジュール・シェレ)」 (画像は、「ベル・エポック - Wikipedia」より)
風邪で仕事を休んでいることもあって、大部なこの本を半ばまで読み進んできた。
本書を読んで教えられたこと、知ったことは多々あるが、今日の話題であるベル・エポックもその一つ。
「ベル・エポック(Belle Époque 仏:良き時代)とは、厳密な定義ではないが、主に19世紀末から第一次世界大戦勃発(1914年)までのパリが繁栄した華やかな時代、及びその文化を回顧して用いられる言葉である」(「ベル・エポック - Wikipedia」より)という。
実際、小生の持つイメージ(先入見)は、そういったものだった。その程度のものだった。
「19世紀中頃のフランスは普仏戦争に敗れ、パリ・コミューン成立などの混乱が続き、第三共和制も不安定な政治体制であったが、19世紀末までには産業革命も進み、ボン・マルシェ百貨店などに象徴される都市の消費文化が栄えるようになった。1900年の第5回パリ万国博覧会はその一つの頂点であった」ともある。
「単にフランス国内の現象としてではなく、同時代のヨーロッパ文化の総体と合わせて論じられることも多い」という。
ミーハーたる小生は、学生の頃からアール・ヌーヴォー、世紀末芸術、世紀末、象徴主義、印象派(ポール・セザンヌ、クロード・モネなど)、エコール・ド・パリ、キュビズム、サラ・ベルナール、マルセル・プルースト「失われた時を求めて」のいずれにも、生半可な関心を示してきたし、実際、興味深かったし、今も、翻訳が刊行中の吉川氏訳のマルセル・プルースト「失われた時を求めて」を読んでいる最中でもある。
これらはいずれも、ベル・エポックと関わる文化(現象)である。
経済にはからきし無頓着な小生、文化や芸術などの観点からこれらの諸現象(?)に関心を抱いてきたが、ちょっと読みが甘かったようである。
← 「1900年のパリ博覧会」 (画像は、「ベル・エポック - Wikipedia」より)
1789年のフランス革命で、王政が打倒され、第三共和政が始まった。だからこそ、民衆の文化が花開いた…ような思い込みでいた。
だが、実情はまるで違うという。フランス(のパリ)では、その富の相当な部分を一部の富裕層が占めているという、富の世襲社会的構造はまるで変わらなかった、それどころか、むしろ19世紀を通じて富の集中の度合いは高まり、まさしく、ベル・エポックの時代は、その頂点に達していたのだった。
そうした事情は、フランスだけの事情ではなかったようだ。イギリスも含めて富の集中は第一次大戦直前まで続いていて、限界にまで達していたのだ。
ある意味、ベル・エポックに開いた文化の華は、極限まで達していた経済的格差と社会の矛盾の齎し生み出した婀娜花だったのだ。
だからといって、花の美しさや妖しさの独自性に変わりはないことは言うまでもない。
うむ。だが、ということは、アベノミクスで一層、経済格差が広まりつつある我が日本、これから文化の華が咲き誇ること、請け合いってことではないか!
慶ぶべきか、嗚呼!
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