『醜の歴史』から『フランケンシュタイン』へ?
過日、「『醜の歴史』から『ピノキオの冒険』へ?」と題した読書日記を書いた。
→ 『フランケンシュタイン』(1831年出版)の内表紙 (画像は、「フランケンシュタイン - Wikipedia」より)
ウンベルト・エーコ編著の『醜の歴史』(川野 美也子【訳】 東洋書林)を読んで、古典など自分なりに知っている(つもりでいた)作品を改めて読み返したくなった、そういった作品の一つとして、カルロ・コッローディ著 『新訳 ピノッキオの冒険』 ( 大岡 玲翻訳 角川文庫)を採り上げたのだった。
上掲書から読み返したくなった作品は幾つもあった。ボードレールの『悪の華』やカフカ、などなど。
メアリー シェリー 著の『フランケンシュタイン』 ((芹澤恵/訳 新潮文庫) もその一つ。
フランケンシュタインについては、「フランケンシュタインと出産の神話(前篇)」や「フランケンシュタインと出産の神話(後篇)」などでそれなりに採り上げたことがある。
その際の読書日記の趣旨は、「一般には、「創造主(キリスト教の“神”)に成り代わって人造人間やロボットといった被造物(=生命)を創造することへのあこがれと、さらにはその被造物によって創造主である人間が滅ぼされるのではないかという恐れが入り混じった複雑な感情・心理のこと」という「フランケンシュタイン・コンプレックス」がテーマと思われている」が、エレン・モアズ著『女性と文学』(青山誠子訳 研究社 (1978/12 出版))の主張によると、「メアリー・シェリーのこの小説の最大の興味と、女性らしさは、次の点にあると私は考える。すなわち。生れたばかりの生命に対して突然嫌悪を感ずるという主題、誕生とその結果をめぐる罪と恐怖と逃亡のドラマという点である。(中略)『フランケンシュタイン』が誕生の主題についての、明らかに「女」にしか創れない神話であるように思われる理由は、それが誕生以前や誕生そのものではなく、誕生以後のこと――つまり産後の精神的ショック――を強調しているという、まさにそのことなのである」ということだった。
← メアリー シェリー 著『フランケンシュタイン』 (芹澤恵/訳 新潮文庫) 「若き科学者ヴィクター・フランケンシュタインは、生命の起源に迫る研究に打ち込んでいた。ある時、ついに彼は生命の創造という神をも恐れぬ行いに手を染める。だが、創り上げた“怪物”はあまりに恐ろしい容貌をしていた。故郷へ逃亡した彼は、醜さゆえの孤独にあえぎ」…といった作品。 (情報や画像は、「メアリー・シェリー 芹澤恵『フランケンシュタイン』|新潮社」より)
ウンベルト・エーコ編著の『醜の歴史』を読了したのは、2月の10日頃だったが、時あたかも、2月11日に「名著41「フランケンシュタイン」:100分 de 名著」の再放送が始まった。この「名著41 100分 de 名著」は、見たことがないのだが、このテーマについては、偶然を面白く感じて、思わず録画してしまった。
「天才的な科学者ヴィクター・フランケンシュタインは科学の粋を集め人造人間の製造に成功します。しかし誕生したのは見るにたえない醜い怪物」(出産自体が作者にとって恐怖の対象)だったが、「一人うち捨てられた怪物は元々善良な存在だった」のが、自我に目覚め、「姿が醜いというだけで苛烈な迫害を受け始め、いつしか怪物は人類に復讐を誓うようになった」!
→ 100分de名著 メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』 2015年2月 廣野由美子 語り手 (画像は、「NHK出版 | メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』 2015年2月」より)
このフランケンシュタインについては、「本来人類に幸福をもたらすはずの科学が暴走し、やがて人類を破滅の危機へと導いていくという、現代人が直面している問題」とか、「 自らが創り出したものからの反乱だからこそ、私達は「怪物」を否定できない」など、名作の名に違わず、解釈が多様に生み出される。
というわけで、本書は大人になった今の自分として、読み返しが必要と感じられているのだ。
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