ハートのエースが出てきたよ!
過日、ネッ友の緊急メッセージがあり、西田幾多郎の『善の研究』とヘーゲルの『大論理学』のテキスト(本)を求む、という。
← 閻連科著『愉楽』(谷川毅訳 河出書房新社) (画像は、「asahi.com:朝日新聞社の書評サイト」より) 「書評:愉楽 [著]閻連科 - いとうせいこう(作家・クリエーター) BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト」や「愉楽 閻連科著 深い絶望こもる現代中国の寓話 :日本経済新聞」など参照。「閻連科。とんでもない腕力の作家である。もちろん創作が人間という大地を掘る力であり、想像という砲丸を限りなく遠くまで届かせる力のことだ。ユーモアが起こす笑い声の大きさ、あるいは泣き声が震わせる範囲の広大さ、共にケタ外れと言っていい」に尽きる ! ?
ヘーゲルは、『小論理学』(岩波文庫)を使って、学部生時代、院生らと共に輪読していたことがあった。
けれど、『大論理学』は一切、手つかずのまま。手元にテキストがあるはずもない。
一方、西田幾多郎の『善の研究』(岩波文庫)を探したが見当たらず。東京を引き払った際に処分したのかもしれない。
代わりに、家の書庫に日本の名著シリーズ(中央公論社)の一冊である『日本の名著 西田幾多郎』が見つかった。
埃をかぶっていた本を引っ張り出して、箱から本を取り出したら、パラッとトランプのカードが一枚、落ちてきた。
見ると、ハートのエースのカード。祝入学と上段にあり、ハートの下には、奇術研究会とある。
見た瞬間、思い出した。入学式の日、門を潜ると、新入生の勧誘のため、いろんなクラブの先輩方が居並び、我々新入生に声を掛けてくる。
クラブなんてものには、高校一年(の、しかも半年!)で辟易しているので、一切、加入するつもりはなく、なんとかやり過ごしていったが、とうとうあるクラブに引き止められてしまった。
空手部! 高校の先輩であり、下宿の紹介者でもある。
義理がある。余儀なく、二日だけという約束で道場へ。
→ 大学入学式の日、校門で手渡された入部勧誘のカード。
約束通り、二日間の厳しい練習に耐え通した。
体はふらふらである。でも、約束は果たした。それ以上は関わるつもりはない。
でも、背後からは、「大丈夫かな?」「大丈夫さ 来るさ」という先輩方のやり取りが聞こえてくる。行くつもりのない小生には、辛いやり取りである。
後日、生協の書店で本を物色していたら、かの先輩がやってきて、部に来ないの? と訊く。小生は、行かないと一言だけ。
断られた先輩も落胆だろうけど、断った小生にしても、厳しい練習に耐えられないと思っているんだろうと、淋しい思いでいたのだった。
そのハートのエースのカードは、直接、空手部の苦い思い出に繋がるものではないが、入学当時の明暗に渡る思い出を一瞬にして喚起する、魔法のカードなのだった。
さて、『日本の名著 西田幾多郎』は、そんなカードが挟んであったくらいで、高校三年から大学一年の頃に入手し、せっせと読んでいたのだろう。
← 莫言作『赤い高粱』(井口晃訳 岩波現代文庫) 拙稿「莫言作の『赤い高粱』に手を出す」や「莫言…言う莫(なか)れ…もう、云えん」など参照のこと。
高校二年の頃から哲学(や宗教)に凝り出し(文学には高校一年の頃から)、当時出版され始めた、中央公論社の世界の名著シリーズ、ついで日本の名著シリーズを、刊行される都度、入手し、片っ端から読んでいったものである(同時に、河出書房新社の世界の大思想シリーズの本も並行して読んでいった)。
高校から大学は、岩波文庫と上掲書を中心に読む、古典遍歴の時代、我が教養課程だったのである。
バーバラ・ドゥーデン著の『〈新版〉 女の皮膚の下 十八世紀のある医師とその患者たち 』(井上茂子訳 藤原書店)を読了。解剖学や生理学を始め医学が未発達の時代において、皮膚の下は暗黒の世界で、体調の異変があっても、先祖伝来の知恵や風習などを頼りにするしかなかった。母乳にしても、迷走した挙句、経血や皮膚の膿(我々の理解する膿ではなく、体の調節物質)として出てくる、などなど。
いわゆる医師にしても、せいぜいアドバイスを与えることができるだけ。実際に、体を看るなんて論外だったりする。患者の口頭での症状の表現を頼りに処方を与えることが普通だったり。
しかも、本人が医師のところに来ることは滅多になく、大概は、使いの者が本人の症状や訴えを伝えるだけ。
→ 高校三年か大学入学の頃に入手した西田幾多郎の本。箱から本を引っ張り出したら、本の中からハートのエースが出てきたよ。
それだけ、昔は、逆に言うと我々の肉体は我々のものだったとも言えるのかもしれない。
さて、今日からは、前々から気になっていた、閻連科著の『愉楽』(谷川毅訳 河出書房新社)を読み始めた。
一昨年、続編も含めて読んだ、莫言作の『赤い高粱』(井口晃訳 岩波現代文庫)に引き続く、中国の作家。
いずれも、ガルシア=マルケス(の『百年の孤独』)に影響されている。村上春樹との交流もあるらしい。
特に、閻連科は反逆の作家。超リアリズムの世界が待っている!
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