オレはロマンチスト
雪が降ってきた。水の中だというのに。
雪なんて大嫌いなのだ。だから、わざわざ凍て付く水中へと飛び込んできたというのに、雪の奴が追いかけてきやがった。
← チャンプ(@takayuki419)さん作「構成主義が解体」 (画像は、「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」より)
雪は水を凍らせ、まるでガラスの海に変貌させてしまった。ゆらゆら揺れて、どんな世界へも移ろい彷徨えたのに、今じゃ、誰もがその場で立ち尽くしている。息さえできず、かといって苦しさのあまり喘ぐ…なんてことすら、叶わない。
なのに、雪は構わず次から次へと氷の海に降り積もってくる。もう、いいじゃないか、もう、すっかり氷の世界に成り果てているじゃないか、そんな怨嗟の声も、噎せぶ風に掻き消されていく。
降り積もる…なんてものじゃなかった。雪は放射線のように一切を刺し貫いていく。こころの翳りも天使の微笑みもアクリルの板に放射線で彫られた輪郭と化している。
心は過大な密度に罅割れている。笑みは粉塵の束の間の集積に過ぎない。
放射線は、氷の海に死の軌跡を描く。菊の花にも似た、可憐な罅割れが、海の底の蒼穹を修飾する。
美し過ぎる無数の渦巻きたち。眩暈を熾さずには居られない。
ああ、それでもオレは夢見ずには居られないのだ。
吹雪くこともできない氷の海の中を、我が身を削ってでも、あの青を目指して突き進む。
→ チャンプ(@takayuki419)さん作「たらりん」 (画像は、「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」より)
何がある? 何もなくてもいいのさ。何があるなんて、端から期待しちゃいないのさ。ただ、衝動と本能に駆られて。焼けたトタン屋根の上の終わりなきダンスのように、蒼白なる海の中の、決して交わることのない夢を奏で続けるのさ。
そうしたら、いつかは、きっと、ひび割れどもの描く、骸骨よりも筋金入りの、琴線の骨格が完成する…、そんな日が来るに違いないのさ。
ああ、それにしても、なんてオレは、ロマンチストなんだろう!
| 固定リンク
「美術エッセイ」カテゴリの記事
- 奈落の底へ落ちるように(2025.09.24)
- 松本莞著『父、松本竣介』からあれこれと(2025.08.15)
- 夏と云えば怪談?(2025.08.12)
- アオサギの撮影叶わず(2025.07.15)
- 夜半の待機は休憩モード(2025.07.14)
「祈りのエッセイ」カテゴリの記事
- 沈湎する日常(2023.02.23)
- 日に何度も夢を見るわけは(2023.02.17)
- 観る前に飛ぶんだ(2022.10.25)
- 月影に謎の女(2019.12.26)




コメント