オースターから9・11へシリア人質事件へ
ポール・オースター著の『闇の中の男』(柴田 元幸【訳】 新潮社)を読んでいる。日中、さしたる用事もなく、時間もあったはずなのだが、疲れていて、一気に読了とはいかなかった。
← 「パレスチナ人の少年、生きたまま火で焼かれる? イスラエルとの間で「憎悪の連鎖」」 (画像などについては、「ガザ攻撃で民間人が次々に殺されている。なぜイスラエルは虐殺は繰り返すのか。(伊藤和子) - 個人 - Yahoo!ニュース」を参照のこと)
この小説は、「祖父と孫娘が、眠れぬままに語る家族の秘密と歴史―ポール・オースターが21世紀に生きる人すべてに贈る、闇の中の光の物語」というものもっと。
より詳しくは、「ブルックリン在住のオースターが、9・11を、初めて、小説の大きな要素として描く、長編。ある男が目を覚ますとそこは9・11が起きなかった21世紀のアメリカ。代わりにアメリカ本土に内戦が起きている。闇の中に現れる物語が伝える真実。祖父と孫娘の間で語られる家族の秘密――9・11を思いがけない角度から照らし、全米各紙でオースターのベスト・ブック、年間のベスト・ブックと絶賛された、感動的長編」(「 紀伊國屋書店ウェブストア」より)といった作品。
作品が出版されたのは、2008年なので、構想が練られ書かれたのは、9・11の衝撃はまだ熱い時期なのだろう。
9・11は、通常は、「アメリカ同時多発テロ事件」と呼称され、「2001年9月11日にアメリカ合衆国で発生した、航空機を使った4つのテロ事件の総称」(「アメリカ同時多発テロ事件 - Wikipedia」)である。
「アメリカ軍は報復としてアフガニスタン紛争、イラク戦争を行った」が、その後、中東などで革命や政変が連続して起き、リビアやイラク、エジプト、アフガニスタン、イラン、イラクなど、政権が変わったり潰されたりした。
無理やり政権を変え、それまでのカダフィなどの指導者を排除したため、地獄の釜ではないが、パンドラの函が開いて、世界が一気に混迷に陥って行った。9・11はその端緒になった事件だった。
アメリカはテロを被った当事国として傷が疼いているのは当然として、小説のテーマに採り上げられるのも必然だが、イスラム教の国々のバランスが崩れて、とうとうイスラム国なるものが登場するまでに至った。
日本は、現首相の言動が引き金となり、人質事件に巻き込まれることになった:
「人質の2邦人、シリア北部ラッカで拘束中か:朝日新聞デジタル」
首相は、「中東の安定を、私たちがどんな気持ちで大切に思い、そのため力を尽くしたいと念じているか、意欲をお汲み取りください」と、中東の安定と平和に貢献するため、援助などを行うと説明している:
「安倍総理大臣の中東政策スピーチ(中庸が最善:活力に満ち安定した中東へ 新たなページめくる日本とエジプト) | 外務省」
本気なのだと信じたい。しかい、本気で戦争を仕掛けているイスラム国にすれば、干渉してくる連中は、敵か味方かのどちらかでしかない。中立の第三者などは認めない。
安倍総理大臣の中東訪問 (平成27年1月16日~21日)では、イスラエルとパレスチナの争いの仲介者役をも買って出ようとした。だが、イスラエル(ネタニヤフ首相)との親密ぶりは、日本が欧米側に与するというスタンスを世界に示した:
「安倍総理大臣の中東訪問 | 外務省」
昨年、「イスラエル軍は17日午後10時30分(日本時間の18日午前4時30分)に「ガザ地区での地上部隊による作戦を開始した」と発表し、ガザ地区に侵攻したことを明らかにし」た:
「3分で分かるイスラエル・パレスチナ問題 激化する空爆・地上戦・イスラム国… - NAVER まとめ」
この際、イスラエルはパレスチナの住民を子供を含め、多数を虐殺した:
「ガザ攻撃で民間人が次々に殺されている。なぜイスラエルは虐殺は繰り返すのか。(伊藤和子) - 個人 - Yahoo!ニュース」
だが、世界(日本を含む欧米)は、イスラエルの蛮行を非難しない。
→ 「航空機の衝突で炎上する世界貿易センタービル」 (画像は、「アメリカ同時多発テロ事件 - Wikipedia」より) 今般の事件を予期して、一昨日からオースターの小説を読みだしたわけではないが…。
欧米はテロを非難するが、イスラエルという国による国家テロは黙認である。このダブルスタンダードぶり。
日本も平和への貢献を標榜しつつ、ダブルスタンダードを顧みることはない。
「イスラエルによって明らかな国際法違反が戦後ずっと繰り返され、国際社会は結局これを止めることなく、容認してきたのだ」。
イスラム教の宗派などを巡る対立は、石油など資源の問題と共に、背後にイスラエルの存在がある(もっと言うと、イスラエルを支持するアメリカの存在がある。
この国の存在が棘となって喉仏に刺さったままでは、何ら根本的な解決に至らないだろう。
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