無限の空間の永遠の沈黙
「我々は、考えられる限りの空間の彼方に想像を巡らしてみても無駄である。我々の生み出しえるものは、事物の実在に比べれば、原子でしかない。実在とは,至るところに中心があり、どこにも周縁がないような、無限の球体なのだ。」(『パンセ』より)
← デイヴィッド・ドイッチュ【著】『無限の始まり―ひとはなぜ限りない可能性をもつのか』(熊谷 玲美/田沢 恭子/松井 信彦【訳】 インターシフト) (画像は、「紀伊國屋書店ウェブストア」より)
地球が宇宙の中心にはなく、天蓋は我らが地球や大地を覆う大いなる蓋ではなく、無限の彼方まで突き抜けた際限のない底なのだと知った日から、人間はその存在を安らかならしめる大地を失ってしまった。
人間は決して格別な存在ではないし、地球すら宇宙の中の際立った天体ではない。
宇宙の孤独。人間も地球すらも、宇宙の中ではカスに過ぎない…。近代人の意識・自覚の土台にある認識だろう。
科学は生命すらいつの日か創造してしまうやもしれない。脳すら凌駕するマシンを創造してしまうのだろう、という思い。
ところで、本書によると(あるいは拠らなくても)、恒星間宇宙の物質密度は、人間のテクノロジーがこれまで到達した最高の真空より低い。銀河間空間にある原子は、ほぼすべてが水素かヘリウムなので、化学反応は起こらない。そんな「低温で、暗く何もない。そんな想像を絶するほど荒涼とした環境が、宇宙では典型的なの」である。
つまり、地球は(人間も)化学物質の浮きカスかもしれないが、実は純粋に物理的な意味において宇宙空間にあっては、どれほど典型的ではないかを再認識すべきなのである。
なんてことは、本書の主題ではないのだが、改めてパスカルの認識を思い起こさせたので、ちょっと触れてみた。
← 勝浦 令子 (著)『孝謙・称徳天皇 出家しても政を行ふに豈障らず』(ミネルヴァ書房 ミネルヴァ日本評伝選) 「異例の女性皇太子を経て即位し、藤原仲麻呂ら多くの政敵と闘い、父聖武天皇の仏教政策を継承しつつも、道鏡を重用し独自の政治を行った孝謙・称徳天皇」。道鏡とのことは、政敵の策謀で自堕落な世迷言に貶められたが、次期天皇(皇太子)候補が次々と亡くなる中、一時的にしろ、能力や宗教的権威に優れたものこそ、天皇の座に据えるべきと思い詰めた…。結果的に政敵の反対や伝統の厚い壁に阻まれたが、とんでもない企てが実現する瀬戸際に至ったことも事実。能力や人間性ではなく、生まれながらにして特別な存在として生きるべく宿命づけられること、血筋・血統本位が本当に人間社会として最善の道なのか、一考の余地くらいはあっていいのではないか。 (画像は、「本:hontoネットストア」より)
ということで、今日からデイヴィッド・ドイッチュ著の『無限の始まり―ひとはなぜ限りない可能性をもつのか』を読み始めた。600頁以上の大著。
著者は、ホーキングやペンローズも受賞したディラック賞を受賞した、オックスフォード大学の天才物理学者。
今朝未明読了した、勝浦 令子 著の『孝謙・称徳天皇 出家しても政を行ふに豈障らず』からは一転して、物理学の世界に触れてみる。
年末年始は本書で明け暮れるわけである。
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コメント
立派なお仏壇ですね。
うちのは、木目の質素なものです。
コンパクトに収まるよう、余分な飾りはなし。
たしかに、宇宙の規模から考えると、人はカスです(笑)
私たちが何をしようと、宇宙には何の影響もないわけで。
それでも、カスなりの人生があるんですから、不思議ですね。
年末年始は仕事を持ち帰っています。
読書は空き時間にするつもりです。
投稿: 砂希 | 2014/12/28 09:18
砂希さん
座敷の一角に収まる大きさです。
人間も地球も宇宙の中ではカス。
だけど、宇宙空間の大半は、人間にも再現ができないほどの真空状態。
なので、そもそも、我々を成す物質があるってこと自体がありがたきことってのが著者の主張です。
読書はいつも、空き時間に、です。大抵は睡眠の前の睡眠導入剤のように!
投稿: やいっち | 2014/12/28 22:21