こんな秋の日に、こんな想い
たとえば、この頃は夜空を眺めても、東京在住時代のようには感動しなくなった。
それは、東京の夜空が、都会の喧騒と対比されて、一層、深みを感じさせるから…でもあり、当時は私も少しは若かったから、なのかもしれない。
好きな人もいたし。
そう、あの頃は恋する心があった。
なんて、センチというかロマン惚けというのか、実のところ、ホントは目が悪くなったからではないかと、情けない事情から目を背けている。
天蓋の深い藍、際限のない深みは、肉眼の良さがあってのものだ。光の微粒子を、その一粒一粒までも感応できる能力があってこそなのだ。
← 「クロスランドタワー」 「最高部118mの高さを誇り、地上100mの展望フロアからは散居村に点在するメルヘン建築物や壮大な北アルプスが一望でき」るとか。
50歳頃までは、老眼鏡などなくても、夜、枕元のスタンドがあれば、十分、本が読めた。新聞だって、どうってことなかった。そんな目だからこそ、空の青も、山の緑も、霧の白も、あの人の瞳の碧をもどこまでも見入ることができた。魅入られもした。
帰郷して故郷の山も海も、川も道も、いつでも愛でることができる。が、肝心の肉体が悦びに浸りきることを許さない。紺碧の空を眺め入ろうとしても、輪郭がぼやけている。もしかしたら脳みそも呆けているのかもしれない。
恋と縁遠くなった今。それは恋することに怯えるようになったからなのか。
美に浸ること、その官能に溺れることを怖がっている…自分がいる。
→ 上掲のタワーの直下に、何故か、自衛隊機が。展示物なのか、駐機場なのか、分からない。
空気の微粒子の全てを手の平で感じ切ることの悦び。
手刀で空気を切ると、血の吹き出るような新鮮な腸(はらわた)が飛び出してくるようだった。
手のひらで存在を撫でまわしてもみたあの頃。自分の命を抱きしめられるかのように、いや、存在の耐えがたいほどの悲しみと酷さを思い知るために、私は真っ白な雪の寝床に横たわる。
秋の日の深まりゆく悲しさの念。終わりの予感。
日々の散文的すぎる経過。だからこそ、救いを求めてだろうか、恋と愛を懇願する。
自分にもそんな能が、せめて欠片ほどでも残っていることを確かめたがっている。
← 「相倉合掌造集落」 「五箇山の落ち武者伝説と民謡を巡って」あるいは「世界遺産 相倉合掌造り集落|観光スポット|とやま観光ナビ」参照。間もなく、深い雪に籠っていく。
焦れる想いを、その熾火を、ああ、この期に及んでも見栄を張っている。火種は燻っているだけではないか。命が息も絶え絶えになっているじゃないか。人の目を盗んで、懸命になって、ふーふーと息を吹きかけて、灰の中に埋もれた命の残骸を拾い集め、夢をもう一度と燃え上がらせようとしている。骸。
せめて、骸の皮を剥ぎ取って、赤みの名残りでも見出そうとしている。
哀れだ。でも、本人は大真面目なんだよ。
秋の日の、こんな爽やかな空の下で、こんなことを想っている奴がいるなんて、誰も想像だにしないだろうな。
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コメント
私も木曜日にクロスランドタワーに行ってました。休憩に立ち寄りました。セイタカアワダチソウですが県西部の方が早く進んでいるように感じます。
投稿: SILVIAおじさん | 2014/10/25 19:18
SILVIAおじさん
クロスランドタワーに行ってこられたとのこと、直下に自衛隊のヘリコプター、なかったでしょうか?
クロスランドタワーと自衛隊機。何か不思議な光景でした。
セイダカアワダチソウ、凄い繁殖力ですね。
なんだか、怖いくらいです。
投稿: やいっち | 2014/10/26 02:28