一つの漢字(熟語)で読みが二通り
あるネット上のサイトで、「末路」の「路」を「期」に直したときにルビもふるべきだったなと、(後で)思いいたった。「まつご」のつもりだったが、「末期」は「まっき」と読むほうが身近だと気づいたといった趣旨の記述があった。
確かに、自分では、この熟語はこのようなつもり(意味)で読むと(しかも、他の読み方はないと)思い込んでしまうことがある。
→ お絵かきチャンピオン作「夜を葬る13番街地」 (「異形の画家「小林たかゆき」を知る」参照)
あるいは、他の読み方もあると分かっていて、でも、わざわざルビを振るのも癪というか、わざとらしいし、脈絡で分かってくれよと、やや祈るような気持ちで熟語の漢字を綴ってしまうこともある。
せっかくなので、こうした一つの熟語で二通りの読み方(乃至、異なった意味合い)を持つ熟語を調べてみた。
というか、調べようと思ったら、こういった疑問を持つ人が案外と多いことが分かった。
これは、日本語(漢字)の持つ便利さのやや困った側面であり、甘受すべき性質なのかもしれない。
「「建立」(けんりつ・こんりゅう)「末期」(まつご・まっき)みたいに、読... - Yahoo!知恵袋」によると:
追従(ついじゅう・ついしょう)
評定(ひょうじょう・ひょうてい)
身代(しんだい・みのしろ)
分別(ぶんべつ・ふんべつ)
変化(へんか・へんげ)
気骨(きこつ・きぼね)
造作(ぞうさ・ぞうさく)
後生(ごしょう・こうせい)
好事(こうじ・こうず)
能書(のうがき・のうしょ)
利益(りえき・りやく)
一途(いっと・いちず)
足跡(あしあと・そくせき)
一見(いっけん・いちげん)
谷間(たにま・たにあい)
顔色(かおいろ・がんしょく)
人気(にんき・ひとけ)
忠実(ちゅうじつ・まめ)
脂(あぶら・やに)
面子(めんこ・めんつ)
素振り(すぶり・そぶり)
背筋(はいきん・せすじ)
一寸(いっすん・ちょっと)
犠牲(ぎせい・いけにえ)
下野(げや・しもつけ)
強力(きょうりょく・ごうりき)
取得(しゅとく・とりえ)
逆手(さかて・ぎゃくて)
歪み(ゆがみ・ひずみ)
細々(こまごま・ほそぼそ)
支えて(ささえて・つかえて)
退く(しりぞく・どく)
例(れい・ためし)
書物(しょもつ・かきもの)
軍(ぐん・いくさ)
大事(だいじ・おおごと)
強請る(ゆする・ねだる)
僕(ぼく・しもべ)
強い(つよい・こわい)
厳しい(きびしい・いかめしい)
上手(じょうず・かみて・うわて)
このほかにもまだまだあるような。下手も、「へた」だったり「しもて」だったり。源義経(芝居)好きなら、「判官」だろうか。「ほうがん」と読む。現代では、「はんがん」が普通なのか。
宗教の分野だと、「礼拝」が浮かぶ。「らいはい」であり「れいはい」である。
この分野だと、「開眼」も外せない。「かいがん」であり「かいげん」なのは、言うまでもない。
最中も、「さいちゅう」が一般的なんだろうけど、「もなか」と読むことだって決して珍しくはない(「最中のこと」参照)。
「大家」と言えば、親も同然、と綴ると、「おおや」だが、脈絡を変えれば、「たいか」も珍しくない。
似たような意味を持つ熟語(意味の異なりの有無をわざわざ調べないと判明しないケース)も見受けられるが、多くは一つの熟語で異なる意味を持つ場合が多いようだ。
上掲の事例集に、谷間(たにま・たにあい)がある。小生なども、エッセイや掌編を書く際、「山間」と書いて、「やまあい」と読んでほしいが、「さんかん」と読む人も多いんだろうな、でもルビを振るのも癪だなと思ったりする。
脈絡で察してよと、心の中では念じるのだが、前後の脈絡を吟味しても、「やまあい」じゃなく、「さんかん」と読む人を責めるわけにはいかないよなと、諦めの気持ちのままに、自分を無理やり納得させてみる。
「形相」という熟語がある。普通は、「ぎょうそう」と読むだろう。
けれど、こう見えても(どう見えてる?)、曲がりなりにも哲学科出身の小生、脈絡を離れて、単独でこの熟語を目にすると、「けいそう」と読んでしまう。
以前、ある短編を書いたことがある。その主人公の名前が、陽子だが、無論、読み方としては「ようこ」である。
けれど、下手の横好きというか、理解など到底できないくせに素粒子物理学の一般書を読むのが好きな小生、「ようし」という読み方もあるなーと、小説の文章を練りながら、ずっと二つの読み方の間で揺れていた。この名前の読み方の複数性が終始、念頭を去らず、とうとう小説の中身にまで次第次第に影響を及ぼしたことがあった。
← お絵かきチャンピオン作「坊主ゴッホ」 (「異形の画家「小林たかゆき」を知る」参照)
これは違う小説なのだが(また、本題とは離れるのだが)、ある別の創作の主人公の名前(実は小説のタイトルともなった)が「涼子」だったことがある。
これは言うまでもなく、また誰が読んでも「りょうこ」なのだが、実は、素粒子論好きな小生、創作する脳裏のずっと奥で、「りょうし」と読んでいて、(量子の持つ)その粒子と波動の両義性を意識して創作の想を練っていたこともあった。
小説の題名の「涼子」は、テーマの上でも象徴的だったというわけである。
参照:
「「建立」(けんりつ・こんりゅう)「末期」(まつご・まっき)みたいに、読... - Yahoo!知恵袋」
「日本語の広場 あなたはこの漢字を読めますか? 連載22」
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