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2014/08/06

忘却は宇宙を糾合するのです

 「忘却は宇宙を糾合するのです」

 あの星々は蒸発し去った魂の欠片たちなのに違いない。
 地上で焼き焦がされた骸の数々。
 見るも無残な変わりよう。

 ああ、でも、地上に肉片一つ残せなかった人たちもいる。腐臭すらなく、飛び出した眼球を手で戻すことも叶わず消え去った人々。

 道端の石ころに影だけが残っている。
 あの日の高い太陽にじりじり焼かれて、肉の形に黒々と刻まれている。

 なのに、あれから幾度も降った雨が、ダメだよダメだよの声も空しく、片鱗すら残さず洗い流してしまった。
 地上の星々が天の星々となって、みんな散り散りになって、酷いくらいの煌めきを放っている。

 孤独の深さ、憤りの強さ、恨みのしつこさ、諦めの悪さ。

 幾夜もの嘆き、日々の妄執。遠ざかる蒼穹。忘却への誘惑。
 空白の深さを思い知れとばかりに、今日も空は晴れ渡る。明る過ぎて、哭くこともできない。

 死の灰は今日も降り続く。まるで平和のシンボルを気取っている。
 地上が黒い雨にしとどに塗り込められたら、忘却の念に浸りきったなら、きっとその日こそ、点々は宇宙の攪拌を止め、地上の星々となって糾合し、あの日の復讐を遂げるに違いない。


 「点々は 宇宙を攪拌しないのです

 我々は攪拌された宇宙の片隅に点在する点々なのかもしれない。

 星の一つ一つが、我々の誰彼の心の投影なのかもしれない。

 道端の石ころや空き缶にしても、誰かの眼差しに晒される。

 梅雨の束の間の日の光にジリジリと焼かれて、つい、本音を洩らしそうになる。

 もう、昔のことは忘れちまったとか、先のことなどどうでもいいだとか。

 なのに、日が暮れて、宵闇が訪れると、今度はまた、違う本音が洩れてくる。

 遠いあの日のことが胸を差すとか、いつの日かの破局を予感するだとか。

 わがまま一杯の梅雨の谷間の呟き。きっと、今夜の雨に呆気なく流されていくんだろうな。

              (03/07/07頃、作成か

関連拙稿:
黒い雨の降る夜」(03/04/07 記 )
闇に降る雨」(04/08/13 記)
黒い涙」(2013/08/08)
海の響きも聞こえない」(12/12/12 作)
葡萄の涙」(2013/05/31)
路上に踏み潰された蛙を見よ」(2007/04/17)

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