哲学的考察でここまで考えられるものなのか!
今日は、スヴェーデンボリからカント、そしてラプラスに至る宇宙論の流れを少し辿ってみる。
推論で、哲学的考察で、18世紀の時点で、ここまで考えられるものなのか! という感動を素直に表現する一環である。
「エマーヌエル・スヴェーデンボーリ(Emanuel Swedenborg, 1688年1月29日 - 1772年3月29日)はスウェーデン王国出身の科学者・神学者・神秘主義思想家」である(以下、「エマヌエル・スヴェーデンボリ - Wikipedia」など参照)。
← 『霊界と哲学の対話 カントとスヴェーデンボリ』(金森誠也編訳 論創社) 「人間は霊界を知り得るか? 18世紀中葉、ヨーロッパを賑わした視霊者スヴェーデンボリ。その評判に触発されたカントが、鋭い舌鋒で論争を挑む」だって。
「スヴェーデンボリは当時、ヨーロッパ有数の学者として知られ、彼が精通した学問は、数学・物理学・天文学・宇宙科学・鉱物学・化学・冶金学・解剖学・生理学・地質学・自然史学・結晶学などである。結晶学についてはスヴェーデンボリが開拓者の一人である」。
ヘレン・ケラーなど、「影響を受けた著名人としては、ゲーテ、オノレ・ド・バルザック、フョードル・ドストエフスキー、ヴィクトル・ユーゴー、エドガー・アラン・ポー、ストリントベリ、ホルヘ・ルイス・ボルヘスなど挙げられ」る。
一方、哲学者のカントは、『視零者の夢』などでスヴェーデンボリの思想を躍起になって批判したが、一定の評価は与えざるをえなかった。
→ ニール・ドグラース・タイソン /ドナルド・ゴールドスミス(著) 『宇宙 起源をめぐる140億年の旅』(水谷 淳(訳) (画像は、「宇宙 起源をめぐる140億年の旅ハヤカワ・オンライン」より) 本書には、古くからの宇宙像(論)から最新の理論を紹介してくれている。結構、評判のいい本らしいが、小生は未読。
ニール・シュービン 著『あなたのなかの宇宙 生物の体に記された宇宙全史 』(吉田三知世訳 早川書房)によると、スヴェーデンボーリは、「生涯を通して重要な問いを考えることに没頭し、「八〇年を超える生涯のほとんどを、一日に一つずつ偉大なアイデアに思い至らねばならないという義務を自らに課してすごした」という。
彼は、「神経や神経系が存在することを推論によってつきとめた」という。
その彼は、「宇宙についても考察し、太陽系の起源に関する説を提案した。ガスと塵の雲が内側に向かって崩壊し、凝縮したものから進化して太陽系ができあがったと推論した」のである!
さらに、「太陽が形成されるあいだ、原初の塵は円盤状に広がった形状を保ちながら、生まれたばかりの太陽の周りを回転し続けた。やがて、この円盤状の塵の雲が凝集し、太陽系を構成する惑星となった――このような仮説に到達したのである」!
推論で、18世紀の時点で、ここまで考えられるものなのか!
この仮説は、久しく無視されたままだったが、「発表から二〇年経った一七五五年、ドイツの哲学者イマヌエル・カントが太陽系の起源を説明する説を構築しようと試みた。そしてカントは最終的に、スヴェーデンボリの説とほとんど同じ理論に到達した」!
← ピエール=シモン・ラプラス著『ラプラスの天体力学論〈1〉』( 竹下貞雄 大学教育出版) ニュートンやケプラーの運動法則を解析的に説明し、海の潮汐の解析と実測との比較の結果も報告。さらに「惑星が不規則運動をする原因として、太陽の扁平率や惑星の軌道の離心率や傾斜角などを挙げ、また、惑星の運動の解析と実測から、エーテルの存在を否定している」。「第4巻では、衛星の不規則運動の原因のほかに、液体の毛管作用についての解析結果と実測結果との比較を報告」し、「第5巻では音の速度式のほかに、流体や水蒸気の運動方程式を提案している」。有名なラプラスの魔については、「1009夜『確率の哲学的試論』ピエール・シモン・ラプラス松岡正剛の千夜千冊」など参照すると面白いかも。 (画像は、「ラプラスの天体力学論〈1〉 - ピエール=シモン・ラプラス - Yahoo!ブックストア」より)
さてこうした理論(推論…アイデア)に数学ツールを与えたのがかの有名なピエール=シモン・ラプラス(一七四九-一八二七)なるフランス人である。史上最高の数学者のひとりでフランスのニュートンとも呼ばれている。
同じくニール・シュービン 著の『あなたのなかの宇宙 生物の体に記された宇宙全史 』によると、「彼が最も情熱を注いだのは、天空の秩序、惑星の形状、天体の軌道を明らかにすることだった。ラプラスは、この目標を達成しようと、スヴェーデンボリとカントの哲学的考察を数学によって厳密に表現した」のである。
つまり、ラプラスがスヴェーデンボリとカントの説を数学的に再定式化してくれたわけで、その結果、「彼らの説は単なる面白いアイデアから、検証可能な予測が出せるれっきとした理論へと変貌した」わけである。
カント‐ラプラスの星雲説と呼称されることもある。
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