虫愛づる姫君からギリシャへ
風邪や葬式などで、珍しく一週間の休みをとった。
その間、ル・クレジオの『隔離の島』などを読んだが、休みの最後の日に選んだのは、何故か、『堤中納言物語』 だった。
→ 映画「風の谷のナウシカ」(監督: 宮崎駿 原作者: 宮崎駿 音楽: 久石譲)
まあ、『問わず語り』や『蜻蛉日記』を読んできて、今後も、予定では、『紫式部日記』や『古語拾遺』など、日本の古典を読む一環の一冊なのである。
本書は、古典の中でも親しみの度合いが強いかもしれない。
「蝶ではなく毛虫などの恐ろしげな虫を愛し,服装,動作などことごとく伝統的習俗に反逆する異端の姫君を描いた「虫めづる姫君」が,とりわけ著名」な、短編集。
作者はもとより、編集者も不明だとか。藤原定家編者説も捨てがたいらしい。
「成立年代や筆者はそれぞれ異なり、遅いものは13世紀以後の作品と考えられる」らしい(「堤中納言物語 - Wikipedia」参照)。
← 『堤中納言物語』 (大槻修校注 岩波文庫) (画像は、「紀伊國屋書店ウェブストア」より)
それはともかく、古典(古文)に弱い小生でも、注に助けられながらだけれど、楽しめるのはありがたい。読み手、あるいは聞き手がすぐに理解できるよう、物語が工夫されているのだろう。
「堤中納言物語」をわかりやすく紹介・現代語訳したサイトである、「堤中納言物語」など覗くもよし。
ところで、「堤中納言物語 - Wikipedia」を覗いたら、集中の白眉(?)、少なくとも一番の任期作品である、「虫愛づる姫君」について、「アニメーション作家・宮崎駿の『風の谷のナウシカ』のヒロイン・ナウシカはこの姫君から着想を得ている」とあった。
調べてみたら、「「ナウシカ」のルーツは、ギリシャ神話と平安時代のお姫様だった!」( LAURIER (ローリエ)(1-2))とか。
つまり、「平安時代に書かれた「堤中納言物語」、そして3千年近く前に生まれた「古代ギリシャ神話」に出てくる姫君」だという。
古代ギリシャ神話「オデュッセイア」という物語に出てくるナウシカアなるお姫様なのだとか。
「ホメロス『オデュッセイア』―オデュッセウスとナウシカア」などが参考になる。
ここには、「宮崎駿氏は、ナウシカを主人公とするアニメ作品をつくるきっかけとして、このバーナード・エヴスリンの『ギリシア神話小事典』(小林稔訳、教養文庫)に読みとれるエヴスリンのナウシカへの愛情をあげておられた」とある。
小生、かなり若い頃、「オデュッセイア」を読んだはずなのだが、内容をすっかり忘れている。
→ 「オデュッセウスとナウシカアー」 (画像は、「ナウシカアー - Wikipedia」より)
余談だが、日本とギリシャとの結びつきというと、ラフカディオ・ハーンを逸するわけにいかない。
日本は、虫(昆虫の鳴き声)を雑音ではなく、風情のあるものとして聴く、世界でも珍しい国民性を持つと(俗に)言われている。
欧米は、昆虫学者などを覗けは、虫はあくまで虫けら。そんな中、少なくとも古代のギリシャには、虫を愛でる感性があったとされる。
その名残りは現代にも見受けられるようで、ハーンが日本に来たとき、何か懐かしいものを感じたのも、何処か深いところで、ハーンの母の母国であるギリシャを感じさせたからでは……と云われることがある。
「2009年 秋号 (10-11月) [連載:いにしえの心]虫の声 科学するこころを開く サイエンスウィンドウ」など参照。
鳴く虫のひとつこゑににも聞えぬは心ごころにものや悲しき 和泉式部
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