富山市の地貌
過日、富山市のやや郊外の地域へ仕事で行ってきた。
郊外…というのは、正確さに欠ける表現かもしれない。なんといっても、富山駅から車で十分ほど。富山市の地図を広げたら、真ん中に近いエリアなのだ。
ただ、富山のようなローカルな街だと、車で十分も走ると、その方角によっては、民家の疎らな地域にあっさり至ってしまうのである。
実際、あと数分も走れば、呉羽山に踏み込んでしまう。
呉羽山は、富山県を二分する、小高い丘のような山。標高は高いところでも、百メートルをやっと超えるかなというもの。
随分と細長くて、地図を見れば歴然とするが、まさに富山県を二分している。実際、文化や歴史においても富山県を二分している(実際には、もっと複雑に入り組んでいるのだが)。
さて、富山駅からそんなに遠くもない地域を敢えて、郊外という文言で表現したくなったのにはわけがある。
富山には来年、新幹線が来る。東京から直通の新幹線が来る。
メリットもデメリットもあろうが、人の流れが随分と変わるだろう。
← この丘の上には、巨大な墓地がある。
そんな差し迫った頃になって、富山県も富山市などの各自治体も、富山の観光を含む呼び物を懸命になって探している。新幹線が来る前に予め大よそは探しておくものだろうと思うのだが、まあ、仕方がない。
さて、富山県でも、立山黒部など、地域によっては観光客の増加が見込めるのだろうが、我が富山市はどうだろう。
ビジネス関係の来富者は増えるだろうが、観光客はなかなか厳しい。
我が富山市の町としての魅力は那辺にあるだろうか。
富山市といっても、八尾や大沢野、婦中町、水橋など、市町村合併で富山市の仲間入りをした地域もあり、その地域に拠っての特色はある。
ここでは、富山市の中心部、そう、富山駅から車で十分前後の圏内に限っておく。
富山の町は、お世辞もあるのだろうが(あるいは、何もなくてすっきりしているを婉曲に表現しているのかもしれないが)、観光客やビジネス客は、綺麗な街だと云われることが多い。道路も広いし(これは、冬季の除雪のための幅員であるのだが)、碁盤の目状に道路が交差している。
とにかく、実際、綺麗な街だと思う。
しかし、これは、歴史と文化を匂わせる目玉が乏しい(敢えて、ないとは言わないが)ことの裏返しでもある。
空襲で市街地のめぼしい場所や建物はほぼ全て消滅した。
神社仏閣はあるが、京都や奈良に比べないとしても、市街地の真ん中で、周辺の喧噪を忘れさせるような、別世界を感じさせるエリアがない。
富山城(城址公園)や、駅の北側の富岩運河環水公園などもあるが、緑がまだあまりに乏しい。
森とまではいかなくても、林程度の、先を見通せないような鬱蒼たる樹木のエリアがないのだ。
環水公園も城址公園も、木々がもっと繁茂したら、雰囲気も変わるだろう(その前に、安全を理由に刈り込まれてしまう懸念があるが)。
← この道は何処に続く。車は滅多に通らない。まだ一度も走ったことはない。
雄山神社なみの神社が富山市の中心部にあれば、随分と町の(いい意味での禍々しさの)雰囲気も高まるのだろうが)。
松川縁の長い桜並木が頼みの綱だが、その並木からどこか訳の分からない(かのような)一角へ紛れ込んでいくような雰囲気があると嬉しい。
そうすると、京都の哲学の道のような雰囲気も醸し出せるかもしれないのだが…。惜しい!
富山市の中心部を地貌上、平板に感じさせているのは、土地があまりに平坦で起伏がなく、戦災で路地がなくなったことも相俟って、この先を歩いたら何処に至るのかという、いい意味でのわくわく感を覚えさせないことだ。
八尾のような町が富山市の中心部にあったら、富山の印象も激変していただろう。
土地の起伏もメリハリもない、濃淡のない、秘密のない町。
それこそ、新興住宅地の綺麗だけど、とってつけたような平明さの印象の、どこか味気ない雰囲気をそのまま巨大化しただけのような感じが濃厚なのだ。
→ 薄暗い一角に何かあるぞ!
(誤解のないようにメモしておくが、富山市には海岸もあるし、神通川などの一級河川もあるし、大きな植物園や動物園、大きな池、緑地、山林などなどはある。美術館や博物館などは言うまでもない。ここではあくまで中心街を巡っての話である。)
そんな中、過日、富山駅から車で十分ほどの地区に、高低差のある雑草の繁茂する、道もやや入り組んでいるような一角を見つけたのである。
富山市の五艘などは、演出家で作家の久世光彦氏が小説の舞台に選んだ町だけあって、丘陵地帯であり、林に囲まれた細い道もあって、小説の舞台に相応しい謎めいた雰囲気が感じられる。
宮本輝氏が小説『蛍川』の舞台にした、蛍川というのは、どんな町なのか、知りたいものだ。
道の先がどこに続くのか(地元の人はともかく、余所から来た人には)分からないような、謎のエリア。
小生が住んでいる町も、昔は藪や林、野原があって、畑や麦畑、小川もある、興を覚えさせなくはない町(村)だった。
← 巨大な墓が一基。どんな人が葬られているのか。
今では、平板な町になってしまった。近くに綺麗に整備された公園もあって、家族連れにはいいのだろうが、小説の想を得るにはつまらない。
闇がない。これは犯罪を抑止する点ではこの上ないが、町としての面白みに欠ける。
そんな息が詰まる日々の中、偶然、やや興を湧き立たせるような地貌という言葉を使ってみたくなる一角に出会ったのだった。
たまたま、一昨日、小川などを話題の俎上に載せたこともあり、小川のある町外れの光景に出会えて嬉しかったのである。
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