有島武郎の周辺の「或る女」
有島武郎の作品は、『カインの末裔』『小さき者へ』『生れ出づる悩み』などを読んできたが、それなりに、というのが正直な感想。
だけど、この『或る女』は別格。
→ 「OL日記 濡れた札束」*加藤彰監督作品 (脚本:宮下教雄 音楽:樋口康雄 出演:中島葵、絵沢萠子、堂下かずき、叶今日子、浜口竜哉、賀川修嗣 1974年/日活) (画像は、「TEA FOR ONE 2008年01月06日」より)
「個性を抑圧する社会道徳に反抗し、不羈(ふき)奔放に生き通そうとして、むなしく敗れた一人の女性の激情と運命を描きつくした、リアリズム文学の最高傑作のひとつ」というが、その解釈や文学史上の位置付けはともかく、島崎藤村の『夜明け前』に匹敵する、世界レベルの小説だと今にして改めて思う。
学生時代、中央公論社の世界の文學シリーズ(あの、濃紺の箱入り本)の中の一冊でたまたま読んだのだが、圧巻であり表現力の卓抜さに圧倒された。
当時、小生自身、若かったこともあり、初恋の人を思い入れしつつ読んでいた気味もあった。下手すると四十年ぶりに再読する今の自分はどう感じるか、自分でも興味深い。今日、冒頭の数十頁を読んだだけだが、その筆力にグングン作品世界の中へ引き込まれていく。これは、自宅で読まねばあかんだろう!
← 有島武郎著『或る女』(新潮文庫) (画像は、「有島武郎『或る女』|新潮社」より)
といいつつ、家事や組合の仕事、お寺(月命日)、その他もろもろあって、日に数十頁を読むのがやっと。なさけない。
ところで、ネット仲間の情報で、武郎の息子に俳優の森雅之がいることを今にして知った。というか、ハンサムな俳優の森雅之の存在は知っていたが、武郎の息子だとは知らなかったのである。
有島武郎の親族の華麗さは夙に有名である。
まず、父が旧薩摩藩士で大蔵官僚の有島武。さらに:
弟に、画家の有島生馬、作家の里見弴、日本油脂取締役の有島行郎。妹シマは東京慈恵会医科大学を設立した高木兼寛の長男喜寛と結婚。妹の愛は、三笠ホテル経営者の山本直良に嫁ぐ。
妻安子は陸軍大将男爵神尾光臣の次女。二人の間に子として、行光(俳優の森雅之。森と愛人との間に日活ロマンポルノで活躍した女優の中島葵)、敏行(翻訳家。石井好子と婚約していたと言われるが、若くして亡くなる)、行三(母方の神尾家を継ぎ、男爵。その次男はシンセサイザー奏者の神尾明朗)。甥(弟・行郎の息子)に創価学会初代音楽隊長で公明党代議士の有島重武。指揮者で作曲家の山本直純は、妹・愛の孫。
森雅之の映画はテレビで観たことがあるかどうか、という程度。往年の二枚目俳優というと、彼の名がしばしばでた。
それより、森雅之と愛人との間に日活ロマンポルノで活躍した女優の中島葵がいることにちょっと驚いた。
日活ロマンポルノで活躍した女優というと、小生は映画館でお世話になったはずだ。そもそも映画は映画館では滅多に観ないが、学生時代からサラリーマン時代にかけて、ピンク映画や日活ロマンポルノだけはせっせと通った。
→ 「 ためいき」(監督 : 曽根中生 脚本 : 田中陽造 原作 : 宇能鴻一郎 出演 : 立野弓子、中島葵、山科ゆり、桑山正一、佐藤輝昭、沢田情児 公開年 : 1973年日活ロマン) (画像は、「日活ロマン ためいき NYK-234-【楽天オークション】」より)
小生が若い頃は、ビデオも入手困難だったし(そもそも再生装置が買えなかった)、ピンク系の映画は映画館で観るしかなかったのだ。
日活ロマンポルノで活躍した女優の名だたる一人である中島葵も、スクリーン上で随分と観たし、お世話になった。
そうか、彼女は有島武郎の孫娘だったんだ。
だからといって、それがどうした、ということだろうが、しかし、何故ともなく感懐深いものがあるのだ。
それと知らず、有島武郎の面影を追っていた…わけは、決してないはずだけれど。
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コメント
間違った画像を貼りつけたのかと思いました(笑)
有島武郎の孫娘?
それはそれは、ビックリしますよ。
有名人ばかりの親族というのも、珍しいですね。
ロマンポルノとポルノは、どう違うのかわかりません。
投稿: 砂希 | 2014/06/14 20:00
砂希さん
生真面目路線(?)の本ブログに、今回のような画像は場違い?
でも、まあ、小生も健康な男子ですから、関心は浅からず、です。
有名人(文学者や芸術家、政治家、財界など)の関係者でこういった路線に走った方は少なからずいるような。
世の偏見もあるから、風当たりも相当なものなのでしょうが。親族も迷惑を被ったりも?
ロマンポルノとポルノの違い。
専門やその業界に通じているわけではないのですが、一般的な話だけ、ちょっと。
ピンク映画は、広い表現。その中に(日活)ロマンポルノがあります。
ポルノやピンク映画とロマンポルノとの違いは、まずロマンポルノは、日活がポルノ映画に路線変更したもの。映画の予算も、普通の(?)ピンク映画は300万ほどが、日活ロマンポルノは一千万。有名な監督が多数。
ただし、予算が少ないからって、ピンク(普通のポルノ)映画がロマンポルノより劣るというわけでもない。
ちなみに、ロマンポルノ(出身)の有名監督・・・神代辰巳・小沼勝・田中登・中原俊・根岸吉太郎・東陽一・藤田敏八・村川透・森田芳光・荒木経惟(写真家アラーキー)等
ピンク映画(出身)の有名監督・・・和泉聖治・磯村一路・井筒和幸・黒沢清・周防正行・瀬々敬久・園子温・高橋伴明・滝田洋二郎・福岡芳穂・山本晋也・若松孝ニ
そうそう、ピンクや(ロマン)ポルノ映画出身の女優さんが結構いて、好きな女優さんも。
投稿: やいっち | 2014/06/14 21:26