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2014/06/14

富山に地貌を

 久々の連休。本当なら、畑や庭仕事に精出すところだが、昨日はほぼ終日の雨で断念。組合の仕事で外出。関連で、ソーメン販売の手助けなど、雑用仕事。組合と言いつつ、周辺の雑用がいろいろ発生する。

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← 外界から隔絶されたフィヨルド (画像など、詳しいことは、「梅雨空を吹き飛ばす!空から見た美しき世界 ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイト」にて)

 今日は午前は不安定な空模様だったが、お昼頃から安定した天気に。空も雨に埃が洗い流されたのか、綺麗に晴れ渡った。早速、庭仕事と思ったが、やはり、組合の雑用で外出。スト権確立の投票結果を会社の掲示板に貼ったり、ソーメンなどの注文を受けたり、組合への要望を聴いたり。

 組合の執行委員長代行というと、肩書は重々しそうだが、苦情陳情注文の受付係のようなもの。
 真面目な話、組合に課された果されるべきテーマは相当なものがある。

 ワールドカップサッカーのテレビ観戦を深夜や早朝に観たりもする。できれば生でと思うので、時間がどれだけあっても足りないし、たださえ不規則な生活が一層、ハチャメチャに。
 その合間を縫うようにして、有島武郎著の『或る女』(新潮文庫)をちびりちびりと読んでいる。

 一気に読みたいが、老眼となった今、メガネが合わないこともあってか、ほんの数頁読むと目が疲れる。
 というわけで、断片的に読まざるを得ないのだが、不思議というか、有島武郎の筆力の賜物なのか、ほんの数行読むだけで、その世界に引き込まれる。

 文章の秘密は那辺にあるのだろう。名作だからというのは、同語反復に過ぎない。
 世間の評価がどうであろうと、つまらないときはつまらないわけで、その点、漱石や藤村やマルケスやトルストイや、この武郎の文章は、ひたすら魅せられつつ読んでいる。読むことができる。
 武郎が文豪扱いなのかどうかは知らないが、素養の深さ広さに感服するしかない、なんて言い草自体、生意気かもしれない。

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→ 上空から見たベリーズ沖の海 (画像など、詳しいことは、「梅雨空を吹き飛ばす!空から見た美しき世界 ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイト」にて)

 ところで、漱石も藤村も、この武郎もだが、小説を読むと、同時代の東京の下町などの雰囲気が感じられて楽しい。古い地名が数多く登場する。実は、武郎の『或る女』は、二十歳代前半に読んで、大感動したのだが、今回、再読して、一番感じ方が違うのは、(自分なりの三十年以上の読書体験、人生体験は別儀にしても)自分が東京で三十年住み暮らしたという経験である。

 旧町名だとピンと来ないことが多いが、今の区町村名に宛がわれると、新橋も芝も横浜も湯島も、かなりの地名が多少は馴染みがあって、その光景風景が思い浮かべられて、読むうえでの感懐も深くなる。
 自分が済み暮らした新宿(中野)や高輪(三田、芝、芝浦、白金、麻布、品川などなど)、大森(山王)、アルバイトした大久保や飯田橋、更には、12年余り、タクシードライバーとして都内を中心に駆けずり回ったお蔭で、大概の東京都の街並みには(道路側からだが)馴染みがある。

 マルケスに限らず、ドストエフスキーやカフカやエリオットやメルヴィルらの小説に関しては、実際には一切済んだことはないが、それでも幾つかの町には追懐めいた馴染み感を覚えるのだから、小説の力が逆に登場する町に親しみをおぼさせるに過ぎないのだとも言い得るのだろうが、その意味で、小説に関連する町を知っていることは読解の上での優位性を保証するわけではないことを重々知りつつも、小説を読む余禄的な楽しみがあるのは確かなのである。

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← 有島武郎著『或る女』(新潮文庫)  (画像は、「有島武郎『或る女』|新潮社」より)

 ああ、東京在住時代、もっと日本の古典を読んで素養を高めておいて、その読後感を胸に、町を徘徊しておけばよかったなーとつくづく思う。
 さて、6年余り前から富山に暮らしている。帰郷したのである。その意味で富山には東京以上に感じるものがあっていいはずなのである。

 ただ、富山の地名は少くとも文学作品と結びつく場所は多くはない(自分が知らないだけで、案外と多いのかもしれないが)。
 そうであるなら、失望したりせず、自分なりに富山の地貌に文学的なものを浸み込ませたいと、僭越ながら密かな野心を抱いたりするのである。


関連する拙稿:「富山市の地貌」など

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