ワンちゃん像の大変貌…の途中
昨日の営業は信じられないほどに暇だった。富山で3年目となるが、過去、最低を記録してしまった。
自分だけかと心配していたが、他の人も似たり寄ったり。
天気は四月上旬を思わせる陽気で車など利用せず、可能な限り歩いてみようということなのか。
← ジョン・ブラッドショー【著】『犬はあなたをこう見ている―最新の動物行動学でわかる犬の心理』(西田 美緒子【訳】 河出書房新社) ワンちゃん像が、近年、大変貌を遂げつつある!
車中では、ジョン・ブラッドショー著の『犬はあなたをこう見ている―最新の動物行動学でわかる犬の心理』を読んでいた。
ワンちゃんを飼いたいが、一人暮らしでなかなか飼えないので、せめて本などで愛玩する!
残りが百頁ほどだったので、一気に読み切れるかと思ったが、文章がなんとなく読みづらく、面白さにつられてあっという間、というわけにはいかなかった。
書き手が「ぼく」というのは、違和感がある。一応は科学(犬の行動学・心理学。どうやら人間動物関係学のようだ)の専門家が書いているわけで、やはり「私」としてほしかった。
内容については、「犬の世界に群れの序列はなかった」(つまり、放っておくと犬は自分がボスになりたがる、という従前の見解は誤り)など、新しい知見も盛り込んである。
一方、言うまでもないが、人間は視覚の動物だとしたら、犬は(聴覚もだが)嗅覚の動物という違い、従ってその違いの齎すそれぞれの認識している世界の諸相違い(相互理解の不能性)は、なかなか乗り越えられないということ。
人間は圧倒的に視覚からの情報を元にして生きている。むろん、知能でその世界を膨らませているが、何処までも視覚中心という現実は変わらない。
一方、犬は、視覚という点では、視力が0.2か0.3ほどだというのは意外だった。少なくとも昼間については、多くの平均的な視力の人間より劣るらしい。色の識別能力も人間より劣るとか。
が、夜間については、人間よりは視覚が効く。人間が手探りするような暗闇でも結構、平気で歩いていく。
聴覚も人間より鋭い。特に人間には聞けない周波数の高い音も聞き分ける。
なので、金属などのこすれる音にも敏感。金網は無論だが、金属がぶつかり合う音は苦手のようだ。
本書を読んで改めて再認識させられたのは、犬は、犬同士でもだが、人間と遊ぶのが大好きな動物だということ。
このあまりに当たり前の事実の特異性は、どれほど再認識してもし足りないと思った。
従来、犬に近縁種ということで、オオカミを研究することで犬の性質を推し量る試みが多かったが、実のところ、オオカミの科学的な研究も近年になって進み、変貌を遂げたという(GPSや超小型カメラなどの発達の資するところ大だとか)。
ワンちゃんがまだ幼いうちに犬同士、あるいは人に慣れ親しむことの大切さを思い知る。
犬をペットとして売っている店は、生まれたてのワンちゃんをどのように育てているのか、気になってならなくなった(言うまでもないが、日本ではペットショップで犬を終夜、網(籠)の中に閉じ込め、通りすがりの人の目に晒しているのは犬にとって拷問に等しい!)
血統書付きが持て囃されるようだが、その弊害(犬に近親相姦を強制している、その罪たるや!)は何度繰り返しても足りないだろう。
小生は犬が大好き。ただ、いかにもペットという小さな犬は嫌いだ(小さな犬に罪があるわけじゃない)。
出産に際し、頭が大きくて帝王切開しないと出産できないなんて、人間の横暴の結果の際たるものだ。
さて、犬にとって基本的な感覚器官である嗅覚。
こればかりは、人間が敵わないのは言うまでもないとして、そもそも犬の嗅覚の世界が人間にはまるで想像がつかない。
以前、「冬薔薇(ふゆさうび):」にて以下のように書いたことがある:
犬の記憶力がいいのかどうか、分からない。あるいは劣るのかもしれない。が、少なくとも匂いについては、一度嗅いだ匂いのことはずっと忘れないのではなかろうか。会った人、犬、猫、食べ物などはクンクン嗅いで、嗅覚の中枢にしっかり収められるのではなかろうか。
数分子の匂い成分でも残っていたら、嗅ぎ分けることができる。単なる視覚だけだと、人間にはあるいは敵わないのかもしれないが、嗅覚という能力で見られた世界の広がりという点では、人間は犬から見たら全くの鈍感野郎に過ぎないのだろう。視覚的には視角となる角を曲がった先の人や動物、一昨日、この道を通り過ぎた猫、何処かの家に勝手に入り込んだ奴の匂いの痕跡。
誰かが浮気でもしようものなら、ああ、この人、あの人と出来てる! なんて一発で分かる。町中の人の愛憎相関図など、犬は全てお見通し(嗅ぎ通し)で、肌の触れ合いの相関図をお犬様の意見を参考に描くと、複雑すぎて解きほぐしえないほどになるのかもしれない。
← 、ライアル・ワトソン著『匂いの記憶―知られざる欲望の起爆装置:ヤコブソン器官』(旦 敬介訳、光文社)
また、「「匂い」のこと…原始への渇望」の中で、ライアル・ワトソン著の『匂いの記憶―知られざる欲望の起爆装置:ヤコブソン器官』(旦 敬介訳、光文社)に学ぶ形で、以下のように書いている:
ライアル・ワトソンは本書『匂いの記憶』の中で、(人間の)ヤコブソン器官に非常に拘っている。解剖学的に未だ解明されていない謎の器官だからでもあろうか、想像を膨らます余地があるのか、それとも、嗅覚というある意味一番原始的な感覚器官であるにも関わらず人間は視覚という感覚に過度に(?)依存することで聴力も嗅覚もその発達を、あるいは本来は持っていた能力を後方に追いやってしまったかのようである…。
が、空中に際限もなく散在し飛散しているのだろう匂いの元の情報をヤコブソン器官を通じて嗅覚中枢に集約しているのだが、視覚に依存しすぎてしまった結果、匂いは感じてはいるのだが、認識できない、分析し分類し解釈する、つまり識別ができないだけであって、実は匂いからあれこれ脳は感じ取っているのであり、そのことが心の揺らめきや心情に微妙に(もしかしたら時には苛烈に)左右している、そんなこともありえるのかもしれない。
小生にとって、ワンちゃんに接することは、その愛らしさに接することであり、ある意味、それ以上に、我々にはほとんど全く想像を超える嗅覚の世界という異次元世界の、その不可思議を想うことなのである。
犬や嗅覚関連拙稿:
「フラクタルからワンちゃんへ!」
「犬が地べたを嗅ぎ回る
「ワンちゃんを飼えたらいいなー!
「トンビに油揚げをさらわれていた!」
「「匂い」のこと…原始への渇望」
「冬薔薇(ふゆさうび):」
「我がガス中毒死未遂事件」
「「夏の夢」は季語ではない」
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