スローなゴンチャロフがいいのです
昨日(土曜日)の早朝は、雪は降りやんでいたものの、前夜に降った雪がカチンカチンに凍結していて、正直、出社するのをビビったくらいである。
こんな朝は、まず車を凍結から呼び覚ますのが一仕事である。
← ゴンチャロフ【作】『 断崖〈1〉 (改版)』(井上 満【訳】 岩波文庫) 新装復刊、大歓迎である! 彼の小説はやたらと長いが、スローな物語の展開もにこだわることなく、語り口そのものを愉しめばいいのだ。
ワイパーは、冬の常識として、ボディから離しておくが、閉じて置いたサイドミラーが凍結でスイッチをオンにしても、まるで動かない。バケツに溜めて置いた水を柄杓で汲んで、何度もミラーの根元付近にかけ流す。
言うまでもないが、車に乗り込む前、服を外出用に着替える前にエンジンを始動させておく。車内を暖めるためもあるが、フロントウインドーの曇り(霜)を温風で吹き払う(拭い去る)ためってのが大きい。
ことに零下2度や3度以下となると、車体にこびり付いた氷を少しでも溶かしたいからでもある。
ようやく準備が整ったところで、降雪こそ、消雪装置で路面からは消え去っているものの、いかにも凍て付いてカチンカチンですといった車道へ恐る恐る滑らせるわけである。
日中のことは、野暮なので省くとして、夜半もかなり回った未明近い4時前に帰宅。我が家の庭はほぼ終日、日が当たらない。なので、少々の雪でも根雪になる。
車を無理やり庭に突っ込んでから、除雪作業に精を出したのは言うまでもない。
ああ、憂鬱なるかな雪の我が家。
さて、自宅では、トーマス・マン著の『ファウスト博士 〈上〉』(関泰祐訳 岩波文庫)を読み始めている。
いかにもマンらしい音楽や哲学、神学、宗教、政治などについて、登場人物たちに(設定上はまだ若いこともあり)高尚な論議をさせている。
下手な論議を書くと、退屈させるところだが、さすがにマンは飽きさせない。
そうした身の下をすっ飛ばしたような、いかにも若造の論議が、彼らが次第に肉の身を自覚していくことで、同時に読者もマンの物語世界へいよいよ誘い込まれていく。
まあ、感想などはいずれ。
車中には、昨日からゴンチャロフ作の『 断崖〈1〉 (改版)』(井上 満【訳】 岩波文庫)を持ち込んだ。
日中は暇だったもので、少将は読めたが、うーん、やはり、自宅で読み浸りたい。
本書は年頭に書店へ本の買い溜めに行った際、文庫本コーナーで見つけた。
まさか、ゴンチャロフの文庫本が出ているなんて、夢にも思わなかっただけに、嬉しい。
本書は、出版社の内容説明によると、「主人公ライスキーを中心に、古きロシアを体現する祖母、新思想に惹かれるヴェーラ、ニヒリストのマルク等を登場させ、農奴解放を遠からず控えた変動期ロシアの姿を描く」とか(「断崖 1 - ゴンチャロフ【作】-井上 満【訳】 - 紀伊國屋書店ウェブストア」より)。
ネットで本書の感想や情報を求めていたら、「岩波文庫赤帯では最もレアな本の一つとして知られ、古書店では五冊ぞろい三万五千円などという値段がつくこともあった」といったコメントが見つかった(「イヴァン・ゴンチャロフ『断崖』 - 読書その他の悪癖について」より)。
三万五千円! そういえば、図書館で『オブローモフ』を探したときも、他の図書館からの取り寄せになっていたし、『断崖』なんて、ヒットもしなかった。
なので、小生は全くノーマークの小説。
← トーマス・マン著『ファウスト博士 〈上〉』(関泰祐訳 岩波文庫) 『魔の山』は近年、再読したが、本書は初めて。現政権によるタカ派路線。経済バブルをいいことにタカ派ムードが高まりつつある。「ナチズムの毒に冒され破滅へむかってつき進むドイツ。重い時代の流れがたくみに描かれる」という本書を今、時代の不穏な空気を感じつつ読む意義があろうというもの!
ともかく、学生時代、『オブローモフ』を一気読みして、その世界に惑溺し、そのまま文字通り溺れていくのも悪くはないかも、なんて思った小生(ほんの数年前にも再読したよ!)、書店で見つけて、慌てて(慌てる必要などないのに!)5冊全巻をまとめ買いした。
うーむ、車中で読むのは、勿体ない気がする。たまたま、生憎、自宅ではマンの『ファウスト博士 〈上〉』(関泰祐訳 岩波文庫)を読んでいる。こちらを読み終えてから、ゴンチャロフに取り掛かるべきか、嬉しい悩みを愉しんでいる。
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コメント
ぉお~、つらい、
その労働の、非生産性がつらい。
大仰ではなく、命がけで、
雪下ろしとかの除雪作業で、
毎年100人くらいが亡くなってます。
転んだなんて当りまえなので、
負傷者は1万人くらいいるのでは。
交通事故も増えるでしょうし、
ほんと雪ってたいへんです。
どうかお気をつけて。
投稿: 青梗菜 | 2014/01/19 23:10
青梗菜さん
雪国とは、不毛な除雪作業や屋根の意雪下ろし作業を黙々とやる国のこと。
その意味で、富山は(山間部は別として)やや中途半端な雪国です。除雪は強いられますが、屋根の雪下ろしは、近年、滅多に必要がない(4年前に、それこそ命がけでやりましたが)。
雪が深々と降る中、何処かの道で誰かとすれ違う際は、どちらかが黙って、その場に立ち止まり、相手方が通り過ぎるのを待つ。
譲り合い? でも、そうしないと、どちらかが必ず新雪の中に足をごぶらせることになりますし。
こうした雪の齎す環境が雪国の人の人間性を涵養するのでしょう。
不毛と言えば全く非生産的ですが、その奥の滋味は温みに至ることも ? !
投稿: やいっち | 2014/01/20 20:51