マンからランドールへ
久々の連休で、人形の間作りをしつつ、合間合間にトーマス・マン著『ファウスト博士 』(関泰祐訳 岩波文庫)を読んでいた。本日、読了。一気に読み切ったとは言えない。
← リサ・ランドール【著】『宇宙の扉をノックする』(向山 信治【監訳】/塩原 通緒【訳】 NHK出版) 「宇宙の根本的な構造について、物理学の大きなパラダイムシフトが起きようとしている。宇宙についての私たちの理解は、がらりと変わるかもしれない。LHCをはじめとする世紀の実験の成果とともに、最先端の現代物理学が、宇宙の扉を開く大冒険へと読者を誘う。いま、宇宙の起源と運命の謎が、劇的に解明され始めた」だって。(画像は、「宇宙の扉をノックする - ランドール,リサ【著】〈Randall,Lisa〉-向山 信治【監訳】-塩原 通緒【訳】 - 紀伊國屋書店ウェブストア」より)
難解ということより、構成構造が複雑で一回では理解しきれない(自分には)。
主人公のモデルは、ニーチェ(梅毒などが原因で狂気に至った)やシェーンベルク独特な音楽理論実践者)ということで、興味津々だったが、音楽理論は、マンによると、アドルノの音楽哲学に拠るところが大だとか。これまた小生には理解できない。
肝心の(ゲーテなどの)ファウストとの関係はあまり見いだせない。梅毒に罹患して、その狂的な状態で創造力を掻き立てようという魔的な邪道に走ったのがファウスト的ということなのかもしれないが、確かに邪道だが、創造力の泉が枯渇した、創造という営みの断崖絶壁に圧倒された敗者が惑いがちな道で、そうした発想は安手の芸術家像を描く小説にありがち。
ドイツ民族が一丸となって(?)狂的な道を突っ走ったという、その時代背景と異能なる音楽家の狂気とを重ねることで、時代批判、自己批判を試みたのだろうが、自分には作品として成功しているとは必ずしも思えなかった。
右傾化する現今の日本と重ねて読み込みたいと思ったが、やや空回りに終わった。
肝心の音楽理論がチンプンカンプンなのに、何を偉そうな! と言われそうだが。
やはり、今のところ、「魔の山」の傑作ぶりには敵わない気がする。再読したら感想も変わるのだろうか。
ついで、今度は理系の本を読む。リサ・ランドール著の『宇宙の扉をノックする』(向山 信治【監訳】/塩原 通緒【訳】 NHK出版)である。
同氏著の『ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く』が実に面白かったので、読むのが楽しみ。
← リサ・ランドール【著】『ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く』(向山 信治【監訳】/塩原 通緒【訳】 NHK出版) 拙稿「物理学界がいま最も注目する5次元宇宙理論」や「宇宙の神秘に対する畏敬の念」などを参照のこと。
待望の近著。書き手は、名だたる物理学者で、且つ美人。
原題は、「Knockin' on Heaven's Door」で、云うまでもなく、ボブ・ディランの楽曲「天国への扉」である。サブタイトルは、「物理学と科学的思考がいかにして宇宙と現代世界を解き明かすか」なので、邦題も「天国」じゃなく「宇宙への扉」なわけだ。
ボブ・ディランの歌詞だと、「目の前が暗くて 何も見えない」あるいは「真っ黒な雲が垂れ下がってきて」と来て、「天国の扉を叩いてる気分」と続いていく(学生時代、ディランのLPをどれほど聴いたことか!)。
今、暗黒物質や暗黒エネルギーの謎もあって、宇宙像が激変を遂げつつある。まさに、「目の前が暗くて 何も見えない」状態に我々はあるのかもしれない。
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