柏原兵三著の『長い道』を読み始める
過日、ラジオで、芥川賞作家・柏原兵三氏の自伝的小説『長い道』を原作にしたマンガ『少年時代』を書いた藤子不二雄Aの話を聞く機会があった。
← 柏原兵三著『長い道』(桂書房) 出版社の案内によると、「太平洋戦争末期、父の古里へ一人で疎開した少年。土地っ子の級長は手下どもを動員して、彼を除け者にしたり、献上品を出させたり、強制的に話をさせたり、さまざまな屈従を強いる。しかし、ついに魂をゆるがす暴力が発生して物語は最高潮をむかえる。洗練された都会の文化としぶとく完結した田舎の文化の衝突。疎開文学の最高傑作」とある。
このマンガを読んだかどうか、記憶にない。映画『少年時代』は観ていない。ただ、主題歌の「少年時代」は、井上揚水の作詞作曲であり大ヒットしたので、耳馴染みではある。
この辺りの消息は知らないではなかったが、先だって藤子不二雄Aの話を聞いて、やはり、郷土富山に関係する作家(小説)だし、一度は読んでおかないとというプレッシャーを覚えていた。
実を云うと、富山県ゆかりの作家、宮本輝、岩倉政治、柏原兵三と、いろいろ居られるのだが、読んだことがあるのは宮本輝だけなのである。岩倉政治からは父が手紙を受け取ったりしているし、存命中の岩倉とコンタクトを取る道もあったはずなのだが、一冊も読んでいないという後ろめたさもあり、行動には移せなかった(他に、久世光彦や堀田善衛などは読んだことがある。別に富山にちなむから、という理由で読んだわけではない)。
小生は(今もだが)、足元を踏み固めるより、視線は身の程知らずなほどに高い人間なのである。
そうはいっても……
→ 藤子不二雄A著『少年時代 - 1巻』(小学館) 「作家・柏原兵三の小説「長い道」を、藤子不二雄Aが漫画化」した。ところで、柏原の小説『長い道』の各章の扉カット(挿絵)は、藤子不二雄Aの『少年時代』から転載。
つい先日、書店へ行った際、富山の本のコーナーへ立ち寄って、柏原兵三著『長い道』(桂書房)を探したら、あるではないか。これはゲットしないとと、慌てて(なぜ、慌てないといけないのか、自分でも分からないのだが)手にし、カウンターへ。
先日来、読んできていたスティーヴン・ウェッブ著の『宇宙物理学者がどうしても解きたい12の謎』を今朝早々に読了したので、次はこれと、読み始めた。
自伝的疎開文学の最高傑作とも云われる『長い道』は、芥川賞の受賞作品ではない。その意味で、柏原の最高傑作なのかどうかも小生は知らないのだが、読み始めて彼の筆力や疎開当時のいろいろな体験や観察を実によく覚えていて、丁寧に且つ念入りに書き込まれている。読み手の小生が時に文章の熱気に(苛めなどの迫真的描写とか)煽られ過ぎて思わず本を遠ざけてしまったりした。
彼の屈辱の日々の怨念が籠っているような、その意味で憾みの念を文学に昇華せんとした作品にも見受けられる(まだ、冒頭の百頁ほどしか読んでいないが、文学作品ではあろうが、まさに体験談風でもある。感想については、読了後、書くかもしれない)。
柏原は、千葉生まれだが、戦争のため、「1944年4月、父の郷里の富山県下新川郡入善町吉原に縁故疎開し、入善町立上原小学校(現在は廃校)に転入。敗戦に伴って1945年9月に帰京するまでを同校で過ごし、よそ者として過酷ないじめを受け、この時の体験を中学時代から『長い道』として小説に書き始めた」という(「柏原兵三 - Wikipedia」より)。
「1968年、『徳山道助の帰郷』で第58回芥川賞を受賞。1972年2月13日未明、東京都文京区西片の自宅にて脳溢血で急逝。享年40(満38歳)」というから、小生が大学受験間際の頃に、亡くなられたわけだ。
ほとんど夭逝と言っていいだろう。本人も無念だったろう。
← スティーヴン・ウェッブ【著】『宇宙物理学者がどうしても解きたい12の謎』(松浦 俊輔【訳】 青土社) 内容説明には、「理論物理学と望遠鏡の驚異の進化によって、宇宙をめぐる科学はその姿を一新した。結果として判明したこと―「地球人は想像していた以上に宇宙のことを知らない」。そもそも全宇宙の5パーセントしか見ることができないなかで、いったい何ができるのか?」云々とある。ところが、本書を読んで知ったのは、そのバリオン物質である5%についてすら、その半分の所在が分からないでいたという事実。 (画像や情報は、「宇宙物理学者がどうしても解きたい12の謎 - ウェッブ,スティーヴン【著】 松浦 俊輔【訳】 - 紀伊國屋書店ウェブストア」より) ちなみに、原題は、『宇宙への新しい目 12の宇宙の謎とそれを解くための装置』だ。理論家の書ではなく、実験観察(観測)に力点がある。本ブログでも幾度となく書いているように、宇宙像は激変しつつある。そのためのツールからして大変貌を遂げつつある。こんなにも数知れない天体観測装置があることに素直にびっくり。
余談だが、フランツ・カフカの『判決』や『流刑地にて』なども翻訳しているとか(集英社)。となると、もしかしたら
翻訳書を通じて、彼に触れていた可能性もある…かもしれない。
これまた余談だが、「1963年、政府交換留学生としてベルリンに留学。1965年に帰国し、東京藝術大学でドイツ語を教える傍ら、柴田翔の芥川賞受賞に刺激を受けて小説を執筆」という事実に、意味不明な興味を掻き立てられた。
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