「汚染水漏れ」よりオリンピック東京招致だってさ

　過日、「『汚染水漏れ』閉会中審議、オリンピック東京招致への影響が理由で先送りへ」（「朝日新聞デジタル | 執筆者： 朝日新聞社提供」より）というニュース報道があった。
「原発の放射能汚染水漏れについて国会閉会中に審議を行うか検討をしていた問題で、オリンピックの東京招致に悪影響を及ぼしかねないという理由で、審議が先送りされることになった」というのだ。

　心底、日本の政府らの姿勢にがっかりした。がっかり以上に怒りを覚えた。
　何が一番、大事なのか。

　東京へオリンピックを承知したいという東京などの気持ちはともかく、多くの人々にはなにゆえ日本に、東京にオリンピックを招致したいのか、その理由がさっぱり見えない。
　選手ら関係者はともかく、もっぱら経済的動機ばかりが目につく。
　別にそれが悪いとは云わないが、今はどういう時期なのか、その肝心のことがおろそかにされていること、ないがしろにされてきたことに憤るのだ。
　選手や関係者の中でも、心ある人は、表向きはオリンピック東京招致と唱えながら、実のところ、今はそんな場合じゃないと危惧して、内心忸怩たるものがあるのではなかろうか。

　福島第一原発の事故で被災している方々の困窮やは未だ道半ばどころか、道の先がまるで見えていない。
　先行きの生活の展望がまるで真っ暗なままなのである。

　放射能で汚染された地下水の漏出やその対策も、選挙が終わってやっと政府が重い腰を上げ始める始末。
　汚染水の状況の全貌はまるで見えていない。
　そもそも、原子炉の中のメルトダウンした燃料棒の現状が把握されていないのだ。
　溶け落ちた炉心は、原子炉格納庫の底を突き抜け、地下にめり込んでいったのではないか。
　とすると、コンクリートや冷凍壁などで隔壁を作っても、間に合うはずもないのではないか。

　膨大な量の放射能が、大気へ、あるいは海へ、つまりは太平洋へ漏出する。
　世界は、日本の対策を固唾をのんで見守っているなかで、、「『汚染水漏れ』閉会中審議、オリンピック東京招致への影響が理由で先送りへ」とは何事か。

　放射能で汚染された太平洋の波に洗われる東京で何がオリンピックなのか。
　能天気も甚だしい。

　除染作業も進まない。
　小生は個人的には進むはずがないと考える。
　そう、「除染は「移染」放射能無毒化は不可能」なのである。

　鉄の容器であるタンクに汚染水を溜めても漏出する。漏れ出た汚染水は、水で洗って済むはずのものか。
　住宅や農地やを水で除染しても、表面の土を張り替えても、山からドンドン放射能が風に乗って（つまり放射能に汚染された葉っぱや花粉となって飛散して）、雨水としてあるいは地下水の形で住宅街などの平野部へ漏れ出してくる。
　汚染された地下水問題は、福島第一原発周辺の施設の問題に限らないのだ。
　福島の放射能汚染地域の除染作業は、今のやり方だと半永久的な時間を要するのではなかろうか。
　
　小出裕章さんの語るように（「除染は「移染」放射能無毒化は不可能」より）：

①除染は、環境の循環によって効果は上がらないが、子どもの健康を守るために、何度でもやるべきだ。集めた汚染ゴミは、できれば東電本社に返すべきで、それができないのなら福島第二原発をゴミ捨て場にすべき。
②事故原発収束作業は、小出さんも呆然としてしまうほど、困難な事業である。
③海洋汚染は、太平洋全域に広がっており、その実態は識りようがない。