月を巡る浮世絵
19日には、月を巡る小文を書いた。
せっかくなので、月の(も)描かれている浮世絵(一点だけ、日本画)を幾つか紹介する。
観月もいいが、月の浮世絵の鑑賞も乙なもの。
→ 豊国(歌川豊国三代)・広重(歌川広重二代)「江戸自慢三十六興 高輪廿六夜」(元治元年(1864)2月) (画像は、「港区ゆかりの人物データベースサイト・浮世絵散歩 高輪の月見] 」より)
紙面(?)の都合上、紹介には限りがあった。
このほか、田毎の月が描かれている、安藤広重作の「田毎の月」や、月岡芳年作の『大物海上月 弁慶』(1886年) などを紹介したかったが。
月を巡る浮世絵の数々を見ていると、日本人も、古来より月が、月影を追うことが好きだったのだと感じさせられる。
← 広重(歌川広重初代)作「東都名所年中行事 七月 高輪廿六夜(安政元年(1854)4月 「東都名所年中行事 七月)」 (画像は、「港区ゆかりの人物データベースサイト・浮世絵散歩 高輪の月見] 」より)
月岡芳年作の『大物海上月 弁慶』(1886年)についは、「【これが130年前!?】最後の浮世絵師が描いた『100枚の月』がとんでもなく新しい【月岡芳年】 幕末ガイド」によると:
能楽『船弁慶』の有名なシーン。波に立ち向かっているのは武蔵坊弁慶。源頼朝の追っ手から逃げる弁慶たちの行く手を阻むのは、月をも飲み込まんとする漆黒の大波。かつての敵・平家の怨霊の仕業ですが、弁慶の必死の祈りにより嵐はおさまります。

↑ 広重(歌川広重初代)作「江戸名所 四季のながめ 高輪月の景(けい)」(弘化4-嘉永4年(1847-51)頃) (画像は、「港区ゆかりの人物データベースサイト・浮世絵散歩 高輪の月見] 」より)
「【これが130年前!?】最後の浮世絵師が描いた『100枚の月』がとんでもなく新しい【月岡芳年】 幕末ガイド」には、「幕末から明治にかけて活躍した月岡芳年(読み:つきおかよしとし)。彼が晩年に描いた連作 『月百姿』」が紹介されていて、壮観である!
→ 鳥居清長作「真崎の月見図」 (画像は、「オヤGナイトさんのタグ - 浮世絵 - 写真共有のlivedoor PICS(ピクス)」より) 「太田記念美術館」のコレクションにもある。
「田毎の月」とは、「GSD 月と文学(月ことば)」によると:
小さく区切られた階段状の水田(棚田)の一つひとつに映る月影。田毎の月の名所として知られるのが長野県更埴市の冠着山(かむりきやま/標高1252m)、別名姥捨山の北麓。因みに実際に田毎に同時に月影を見ることはできない。→帰る雁田毎の月のくもる夜に(蕪村)

← 広重.二代作「江戸名所四十八景 駿河台.月夜」(文久2年.1862年)
さらに、月をテーマの浮世絵と言えば、この絵は外せない。
そう、歌川広重作の「月に雁」である。
まさに、真打登場といったところ。切手のデザインとしても、有名。
というより、小生は、小学生の頃、父の収集していた「月に雁」切手で脳裏に刻印された。
→ 鳥居清長作『美南見十二候 九月 漁火』 (天明4年(1784年頃)) 漁火も見えるが、お月さんの姿も。 (画像は、「鳥居清長 - Wikipedia」より)
「月に雁|歌川広重|浮世絵のアダチ版画オンラインストア」には、以下のように紹介されている:
上空から眺めるような幾重にも盛り上がった空から、舞い降りる三羽の雁を短冊判にまとめた広重の傑作です。1949年に切手の図柄にもなっているおなじみの作品です。左右から藍のボカシを交錯させ立体感を作り出しています。冴え冴えと輝く満月、静かに流れる蒼い雲、そして三羽の落雁。澄み渡った秋の空遠く、物悲しげな雁の声が聞こえてくるかのようです。
← 橋本関雪作「残月杜鵑」 (画像は、「特集 日本画でお月見:おんらいんぎゃらりい秋華洞」より)
最後に、拙稿「月影に寄せて」より:
月の光は、優しい。
陽光のようにこの世の全ての形を炙り出し、曝け出し、分け隔てするようなことはしない。ある柔らかな曖昧さの中に全てを漂わせ浮かばせる。形を、せいぜい輪郭だけでそれと知らせ、大切なのは、恋い焦がれる魂と憧れてやまない心なのだと教えてくれる。
せめて、月の影ほどに、この世に寄り添いたいと思う。
窓の外の定かならぬ月影を見ながら、そんなことを思ったのだった。
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コメント
橋本関雪は京都で回顧展開かれてますね。
月を描いた美術作品は沢山あるのに、なぜ浮世絵?
僕は浮世絵ってあまり好きではなく、せいぜい国芳くらいかな。
だから、浮世絵専門の太田記念も滅多に行かないな。
明日は秋分の日ですね。当然お墓参りされますよね。
投稿: oki | 2013/09/22 23:08
okiさん
浮世絵なのか、明治以降にも素晴らしい作品はいろいろあります。
本ブログでも紹介した、川瀬巴水の「馬込の月」など、素晴らしい。小生が住み暮らした地域でもあるから、猶更、好きな作品です:
http://www.photo-make.jp/hm_2/ma_magomebashi.html
彼岸。小生は墓守のようなもの。彼岸前に、そして彼岸のあとに掃除します。その時、まいります。
投稿: やいっち | 2013/09/24 16:51