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2013/07/06

失敗続きの一日

 もう、多少の日にちを経たので、日記に書いてもいいだろう。
 まあ、自分の失敗談だし。
 なぜか不思議と失敗が重なる日というのは、あるものだ。

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 その日、たとえば、釣銭でドジをした。
 夜、車が目的地に無事着いた。もう、夜半に近いか。
 お客さんが、「大きいおカネで大丈夫ですか?」と訊ねるので、この稼業に携わって十数年の小生、釣銭を切らしたことは一度もないのが自慢(?)の小生、「大丈夫ですよ」と答えた。

 この時点で思い込みがあった…。

 料金(運賃)は千数百円ほど。
 小生、せっせと五千円札1枚、千円札3枚、そして小銭を用意し、お客さんに渡そうとすると、あれ? 五千円、多いですよと指摘された。
 観ると、お客さんがカルトン(トレー)に置いたのは、五千円札。
 小生、見もしないで、勝手に一万円札と思い込んでいたのだ。

 この時は、お客さんが正直で、ちゃんと指摘してくれたので、<お釣り>を五千円も余分に渡すことは未然に防げたのだが、もし、お客さんが、しめしめ、この運転手、ドジな奴だぞとばかりに、釣銭を受け取って、さっさと降りて行ったなら。
 客席のドアをバタンと閉め、料金メーターも空車に戻し、やおら、お客さんがトレーに載せたお金を確認し…という段階で、自分の間違いに気づくわけである。
 もう、後の祭りである。

 今回は未然に防げたが、実際に五千円、余計に渡したことがあった。
 それは、その日の失敗ではないのだが、その日、料金の精算も終え、お客さんは降りられ、小生も空車に戻して次のお客さんを求めて走り出している。

 察しのいい方なら、もう、気づいておられるだろう。
 小生、何かを忘れている。
 さて、次のお客さんが乗ってこられ、やはり清算を済ませ、「ありがとうございました」とばかりに、お客さんの無事の降車を見守り、ドアを閉めようとした、その瞬間、客席の足元に五千円札が落ちていた。
 正直者の小生、「お客さん、おカネ、落とされてますよ」と教え、拾って渡した。

 が、あとで冷静になって考えた。
 あの五千円札は、その前の客の支払いに使ったものではなかったのか。
 トレイの上に置いたのを小生が回収するのをうっかり忘れてしまっていた…。
 トレーは、左ひじ下の辺りにある。

 ちょっと身動きすると、肘か制服の裾に触れ、五千円札が客席側の足元に落ちてしまった。
 冷静に思い返してみると、やはり、どう考えてみても、前の客が差し出したお金は五千円札だった。その五千円札を小生、回収した記憶がない!
 ああ、次のお客さんに、落としましたよと渡した五千円札は、本来は、売り上げの中に加えないといけない大切なおカネだったのだ!
 後の祭り!

 大抵、お客さんというのは、釣銭を余分に渡したときは、何も言わない。
 けれど、十円でも少ないと、叱るように、足りないぞ! という。
 なので、今まで釣銭を余分に渡したことは、間々あっても、少なく渡したことは皆無だろうと思う。
 世知辛い世の中なのである。

 さて、失敗が重なったという、その日の最大の失敗を語ろう。
 簡単に云えば、お客さんの荷物をトランクに入れていたのをうっかり忘れ、そのまま、目的地から富山市の中心部へ戻ってしまったという、それだけのことである。
 結婚式の引き出物のバッグである。お客さんは二人の男性。

 通常、荷物の出し入れは運転手たる小生が直接間接に行う。
 だが、その時は結婚式場でのお客さんで、式場で案内係りをしていた職員が積み込みをしてくれた。
 なので、荷物たる引き出物を積んだという認識はあるのだが、実際に立ち会って自分で作業していないので、今一つ実感がなかった…のが災いした。

 お客さんを目的地へ届け、清算を済ませ、意気揚々と出発地の富山市へ戻る。
 この表現からも察せられるように、お客さんの目的地というのは、高岡だった。
 富山市と高岡市は、20キロ、離れているのだ!

 しかも、お客さんは自宅ではなく、何処かの店で降りられた。
 さらに、小生がお客さんの忘れ物に気付いたのは、富山へ帰ってから、なのである。
 いろいろ伝手をたどって、何とかお客さんと連絡がつき、トランクの中の引き出物を届けに、一路、高岡へ。
 往復すると、40キロ。
 返却したのは、夕方という、一日でも一番、忙しい時間帯。
 二時間ほどを、その大切だが売り上げという意味では不毛な作業に費やしてしまった。

 これには、後日談ならぬ、あとに引きずったドジがオマケに付いた。
 というのは、その次のお客さんは、チケットの方。
 それはいいのだが、お客さんは富山市内の駅周辺から、車で十分ほどの寿司屋さんへ。
 チケットには、乗車のルート(出発地・目的地)、時間、乗務員の名前、料金などを記入する。
 そのチケットのルートに、小生、富山から高岡と書いてしまった。
 つまり、頭の中は、失敗した高岡の件が刻み込まれていて、思わず、まるで見当違いのルート名を書いてしまったというわけである。

 とにかく、その日は、失敗続き。会社側を含め、お客さんにも謝ってばかり。
 小生の厄日であった。

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コメント

まあ、大きいお金で、大丈夫ですか?と、聞かれれば、誰でも一万円札だと思いますよ。
クロネコヤマトの宅急便の兄ちゃん、代引きで、9555円だというから、一万円札で払おうとしたら、お釣りがない。しょうがないから、こっちが555円出して、1000円のお釣りを貰ったけど、気の短い人なら、もたもたしているうちに、何やってんだ!と怒りますよ。
ましてや、タクシーは同じ場所に長く止めると通行人や後続の車両の迷惑になる。急ぐのは仕方ないです。

投稿: oki | 2013/07/06 19:38

はあ。
そういう日もありますよね。
てか、私もそういうことばかりというか(笑)
いいことも悪いことも、続くのが普通なんだと思ったほうがいいかも。
悪いことが続いたなら、今度はいいことが続くはずです。
私は段々運が好転し始めました。
まだまだですけどね。
今度はやいっちさんの番ですよ。

投稿: 砂希 | 2013/07/06 20:20

okiさん

大きいおカネといっても、人によっては違う。女性には五千円が大きなおカネだったということで、予見予断を持つのは危険ということですね。

十数年に渡るタクシー業務で釣銭が足りなかったことは一度もない。なくなりそうになり、コンビニに駆け込んで買い物したり、自動販売機で飲みたくもないジュースを買ったりとう経験はありますが。

とにかく、釣銭など清算業務は時間との闘い。
コンビニなどのように、清算機械があるわけじゃなく、手仕事なので、不器用な小生には焦りが募ります。

投稿: やいっち | 2013/07/06 21:38

砂希さん

悪いことが続けば、そのうち、バランスを取るためにも、いいことが続く…なら、いいですね。

悪いことがあったときは、あるいは、仕事で売り上げが最低だったとき、タクシー業務では、以下のような慰め方をします。

無事で事故なしで仕事を終えることができた!
なんだか、惨めなような慰め方ですが、それだけ、タクシー業務は危険と隣り合わせだということです。

投稿: やいっち | 2013/07/06 21:45

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