粉骨砕身そして鬼哭啾愀
この頃よく夢をよく見る。
明日への夢ではなく、過去の亡霊が化けて出てきたような夢。
夢というより夢の骸と云うべきか。
← 「相馬の古内裏」(歌川国芳画)。滝夜刃(滝夜叉)の操る巨大な骸骨と戦う大宅太郎光圀を描く。 (画像は、「骸骨 - Wikipedia」より)
暗幕の陰で骸骨が躍っている。
裸だからか、滑稽で惨めな姿。淋し過ぎる。隠しようがない。せめて浴衣でも羽織って、風流を気取ればいいのに、輝く骨身を自慢したいのか、コツコツ音を鳴らせながら、誰も見ていないことをいいことに、踊り狂っている。
狂っているだけなのかもしれない。
肉も身も削ぎ落とされ、自棄になってしまったのだろうか。
今夜は晴れ渡った月夜。
今夜にも半月になろうという月影が地を睥睨している。
月の表に揺れる影が映っている。
月の兎は、耳が殺がれて淋しそう。
でも、あと数日もすれば、しゃれこうべ(髑髏)どころか上半身が影に埋もれていく。
そうすれば、足腰と臼が残るだけ。黒っぽい煙が虎視眈々と。
月光が地に満ちている。光が地に溢れているのだ。
光の波が潮となって押し寄せ、引いていく。
地の角が光という柔らかな鏨(たがね)に摺られて嬲られている。
気を付けなくっちゃ!
光は魔物だぞ。光は上っ面だぞ。決してお前の理解者なんかじゃない。お前の表面を抉っていくだけなのだぞ。
そうさ、その証拠にお前は今じゃ、露骨なばかりの裸体の極み、骨の連なり、そう、骸骨じゃないか。
鬼哭啾愀(きこくしゅうしゅう)とばかりにシクシク惨めったらしく哭いている。
→ 鳥山石燕『今昔画図続百鬼』より「骸骨」 (画像は、「骸骨 - Wikipedia」より)
骸骨は喚き、叫び、祈り、希(こいねが)い、平伏する。
ああ、そんなに踊りまくって。硬骨漢のお前には、筋肉はもとより軟骨なんて洒落たものは無縁だろうな。骨身を削って磨り減って、終いには骨の欠片、粉みじんの骨の粉だ。
お前を待つのは、粉骨砕身の挙句の蒼白なる砂漠だ。
そうして目覚めるたびに歯ぎしりする自分がいるのだった。
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コメント
私は最近、夢を見なくなってきました。
もしくは、すぐ忘れてしまうのかも。
仕事の夢はおぼえています(笑)
やいっちさんは、サンバやバレエがお好きだから、骸骨も踊るのかも。
私の夢では、誰一人として踊りません。
やいっちさんの夢は、カラーですか、白黒ですか?
投稿: 砂希 | 2013/06/01 21:02
砂希さん
小生も、夢、目覚めた瞬間に忘れちゃいます。
ガラスの砕けるように、粉みじんになる。
本稿は、夢を思い出して…というより、夢のほんの断片を糸口に、創作(イメージ文)風に書いてみたもの。
夢の中でだったか、それとも、眠れないままに悶々としている中で、朧な意識の中で、包丁が現れ、しかも、諸刃の包丁で、それが体の中で乱舞している、という苦しい感覚だけが印象的だったので、虚構の形で鬱屈した思いを吐き出してみたんです。
投稿: やいっち | 2013/06/02 21:00