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2013/03/25

寒さにめげず『流離譚』へ

 寒い! 昼間は、畑や庭仕事に没頭し、汗が滲んだりして、それほど寒さが気にならなかったが、部屋でじっとしていると、寒さが身に沁みる。
 灯油が切れている。

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→  安岡章太郎/〔著〕『流離譚 上』(講談社文芸文庫) 「父親を主題に名作「海辺の光景」を書いた安岡章太郎が、土佐の安岡一族のルーツを遡つて、幕末の藩士達に辿り着く。その一人安岡嘉助は文久二年、藩の参政吉田東洋を刺殺、脱藩、天誅組に入って京に上るが、志半ばにして刑死する。日記や書簡を手掛かりに、自分の実感を大切にしながら臨場感あふれるスリリングな語り口で、歴史のうねりに光を当てる長篇歴史小説。日本文学大賞受賞」とある。

 ボイラーのための灯油を流用することも考えないではないが、なぜか意地のようなものがあって、今冬はもう灯油を買わないと決めた以上、ボイラーの灯油の在庫も使いたくない(← 理屈になっていない)!

 マーカス・デュ・ソートイ著の『数字の国のミステリー』を読了した。
 数学の楽しさを楽しむ…というには、数式をサンプル程度にしか示していないにも関わらず、理解が及ばないことも。
 驚いたのは、本書は、王立研究所に依頼されの、11歳から14歳のこどもに向けての五回講演を基にしているということ。
 数学(など)が好きな子たちを対象なのだろうが、これだけの内容を小学生から中学生ほどの子供たちが楽しんでいる、というのは小生にはショックである(イギリスの啓発啓蒙のレベルの高さや充実ぶりはさておくとしても)。

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← 安岡章太郎/〔著〕『流離譚 下』(講談社文芸文庫) 「安岡文助の次男嘉助は天誅組に入り京都で刑死するが(上巻)、一方長男覚之助は勤王党に関わって、入牢、出獄の後、討幕軍に従って戊辰戦争に参戦、会津で戦死する。戦いの最中に覚之助が郷里の親族に宛てた書簡を材に、幕末維新の波に流される藩士らの行く末を追って、暗澹たる父文助の心中を推し測りつつ物語る。土佐の安岡一族を遡る長篇歴史小説」。

 次に何を読むか。これは読書好きにはたまらない瞬間なのではないか。買うのは論外で、積読派ではない小生ならではの特権?

 図書館へ行くか、それとも自宅の蔵書から何か選ぶか。
 
 古い蔵書の中で目に付いたのは、メルヴィルの『白鯨』と、もう一つは安岡章太郎の『流離譚』である。
 メルヴィルは前回読んで十年を経ていないので、もう数年経ってから、三度目の挑戦をしよう。
 というか、頭の中では既に安岡章太郎の『流離譚』に決まっている…。
 それというのも、同氏が今年1月に亡くなられていること、冥福を祈る意味でも何か読むか、という朧な考えもあったが、やはり、先月まで四か月以上を敢えて費やして(これまた三度目となる)再読をした島崎藤村の『夜明け前』の影響だろう。

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→ 我が家の水墨画的に地味な庭をわずかに彩るのは、梅の花の淡い紅色、山茶花の赤、そして水仙の眩しいほどの黄色である。世話など全く焼かないのに、毎年、律儀に咲いてくれる。感謝!

 この本(文庫本の分冊で最後の第四分冊)に取り掛かっていた最中に、安岡章太郎の死という報道に接した。
 その訃報に関連して、同氏の著『流離譚』がある意味で幕末ものであり、藤村の『夜明け天』とも無縁ではないし、幕末から明治維新当時の日本の政情、それ以上に世情に関心のある小生には、じっくり読み返すに十分以上に値する本だと再認識させられたのである。
 恥ずかしくも、同氏の訃報報道で思い出させてくれるまで、『流離譚』のことは、すっかり忘れていた!

 小生は、『流離譚』を新潮社版の第二刷で所蔵している(新潮社版の表紙…といっても、箱入りだが…画像がネットでは見つからないので、講談社学芸文庫の表紙画像で代用した)。

 手に入れたのは、昭和57年。
 上京して四年目。なるつもりのなかったサラリーマンとなって二年目。
 昭和55年(1980年)に、「ガス中毒死未遂事件 」を起こし、死に損なったこともあってか(友人曰く、脳細胞が相当程度死んだ!)、自信喪失というか神経衰弱状態になり、哲学への関心はやや薄らぎ、文学志向が高まりかけ、しかし、それすら縮小していった…それが昭和56年の頃だった(当時は自分では認めたくなかったが、失恋の痛手が大きかったようだ)。

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← マーカス・デュ・ソートイ/著『数字の国のミステリー』(冨永星/訳 新潮社) 本書を入手したいきさつについては、拙稿「バレンタインデープレゼント!」参照のこと。

 当時は、安岡章太郎というと、『海辺の光景』くらいしか読んでいなかった小生が何故、本書を手にしたのか、今では記憶に定かではない。
 それだけに、やはり、当時の小生が安岡の『流離譚』を手にする(当時の小生には高価な本だったはずだ)というのは、解せないのである。
 長く、田舎の自宅の書棚に収まったまま、ほんの時折、背表紙を眺めるだけだったのだが。

 ただ、内容からして、藤村の『夜明け前』を読了した今こそ味読できると期待している。

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