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2013/02/09

私のサギ物語

 いつだったか、何処かの川沿いの小道で車の中で休憩していた。
 天気も良かったので、ちょっと窓を開けてみた。
 すると…何やら蠢く影が。

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 見るとそれは、サギだった。
 白っぽいし、図体も大きいが、鶴や白鳥でないのは確か。
 やや青みがかった白という体毛からして、アオサギ(蒼鷺)なのかもしれない。

 流麗な御姿とは言いづらいが、何処か哲人ならぬ哲鳥の風格がある。
 ただ、雄か雌かは分からない。

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 奴はほとんど動かない。
 小鳥のように、あるいはカラスのように、気忙しく動いたりしない。
 時折、嘴で体の何処かをつんつんする。身繕いなのか、体が痒いのか。
 それも、ほんのひと時で、あとはずっと堤防の端っこに佇んでいる。

 奴は、私が眺めていることに気付いている…はずだ。
 オレがシャッターチャンスを逃すまいと、窓から手を差し伸ばし、デジカメで撮影し始めたことに明らかに気付いている。
 それが証拠に、最初は川面を見下ろすように、ほとんど斜め後ろの姿しか見えなかったのが、カメラ(私)に気付いた途端、真横の姿を見せるようになったのだ。
 最初は私を警戒しているのかと思った。
 思わず、デジカメを引っ込めてしまった。
 が、奴は、カメラを意識し始めた途端、微動だにしなくなったのだ。

 横顔に自信があるのだろうか。
 それとも、容易に察しがつくように、真横ということは、目をまっすぐ私に向け、警戒…というより私を観察しているのだろうか。

Sscn2598

← 私が車を止める場所に奴が居た。私を待ち伏せしていた?

 数日してからのことだった。
 私は休憩のため、同じ場所に向かった。
 休憩のための場所は何か所かある。
 そこは閑静というわけではないが、時折、川面に水どりが飛来するし、裏通りなので、警察が取り締まりには来ない。
 すると、驚いたことに、私が車を止めようと思っていた場所に奴がいた。
 お前、ここで休憩するんだろう、オレ、待っていたんだぜ、と云わんばかりである。
 私の車が近づいても、逃げようとはしない。
 それどころか、私のほうをじっと眺めている。私は奴の手前2メートルのところで車を止めた。

 二進も三進もいかなくなった。
 どうすればいいんだろう。
 とりあえず、奴の雄姿を撮ることにした。

Sscn2609


 私たちは睨み合っていたわけではないが、だからといって何をどうするわけでもなかった。
 奴の心中は分からないが、私は車の中で立ち竦んでいた。

 凍り付いた空気が破られるのに、そんなに時間は掛からなかった。
 間もなく、別の車がやってきたのだ。
 そいつは、奴が立っているのもお構いなしに、車を滑らせ、奴をどかせた。

 奴は何処かへ飛んで行った…と思った。
 が、そうじゃなかった。
 
Sscn2610

 しばらくすると、奴は今度は、私の車のすぐ脇に止まったのである。
 やはり、私に横姿をみせて。
 また、しばらく、私と奴の睨み合いが続くかと思われた。
 違った。
 奴は向きを変えて、今度は私からすると後ろ向きになった。
 八の視線の先を追うと、そこには若い女性のヌード像がある。
 メリハリのあるボディで、ウエストがくびれている一方、太ももが逞しい、存在感たっぷりの像。

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 豊かな胸…と云いたいところだが、生憎彼女は腕を組んでいて、胸が見えない。
 何か沈思黙考しているようだ。
 下手に声を掛けるのも憚られる雰囲気である。

 もしかして、奴は、私なんかじゃなく、この女性に関心があるのか。
 私の様子を伺っている…なんて思っていたのは、私の勝手な思い込みに過ぎなかったのか。

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← よく見ると、カラスの奴が高みの見物してる。

 奴の視線は、ついにはまっすぐヌード像に向かった。
 もはや、間違えようがなかった。

 奴の狙いはヌード像にあったのだ。
 私なんか、眼中になかったんだ。

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→ 奴の目からは考えが読み取れない。

 それなのに奴は、時々、視線を私に向ける。
 なぜなんだ? 私なんかに用はないんだろ? どうして私を見遣る?

 そう、奴は私の心中を見透かしていたのだ。
 奴がヌード像に近づいたんじゃない。
 最初にヌード像の脇に車を止めていたのは、私だってこと。
 私がいつもヌード像の脇に車を止めて休憩する習慣だってこと。
 つまり、私こそがヌードを欲しているってことを。

サギ関連拙稿:
とりどりに取り揃って迷います
常緑の葉、冬に咲く花

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コメント

ときどき、不可解な行動をする動物を見ます。
故人が動物の姿を借りて会いに来たのかも、と感じることもしばしば。
身近な人が亡くなったときは、真っ先にそう思いますね。
サギは、練馬区にもいます。
電線にとまっていたりすると、足が細くてすごく変~(笑)
人には近寄らないですよ。
撮影はおろか、近くで見たことすらありません。

投稿: 砂希 | 2013/02/09 20:33

砂希さん

野鳥は人間に苛められたせいか、用心深い。
特に雀などの小鳥は。
サギくらいになると、カラスもだけど、結構、横柄になる。
図々しい。

サギ君(雄か雌か分からないけど)の行動、何か妙。
故人が動物の姿を借りて…という話は信ぴょう性があったりしますね。
身辺にも(特に親戚などに)危ない人がいるし。
枕もとに現れるよりはましだけど。

このサギ、小生の思い込みに過ぎないけど、我が家の近くの田んぼに出現していたサギじゃないかなって、思ったりして。

投稿: やいっち | 2013/02/09 22:04

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