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2013/02/02

孫崎 享著『日本人のための戦略的思考入門』読了

 孫崎 享著の『日本人のための戦略的思考入門―日米同盟を超えて』を読了した。
 面白くて、仕事中も含めてだが、読破するのにまる一日を要しなかった。

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← 孫崎 享【著】『日本人のための戦略的思考入門―日米同盟を超えて』(祥伝社新書)

 本書の著者である孫崎 享(まごさき・うける)氏の強味は、なんといっても、類稀なその経歴にある。
1943年、旧満州国生まれ。1966年、東京大学法学部中退、外務省入省。英国、ソ連、米国(ハーバード大学国際問題研究所研究員)、イラク、カナダ勤務を経て、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。2002~09年まで防衛大学校教授」!

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 孫崎氏は、1968年のチェコ事件中ソ衝突、ソ連のアフガニスタン侵攻、イラン・イラク戦争、米国同時多発テロ事件これに続くアフガニスタン戦争、これらを外務官僚としてつぶさに誰よりも見てきた。
 彼は、1985年、ハーバード大学国際問題研究所で安全保障を学ぶ中で、米国では、「日本は同盟国」と言いながら、一方で、日本人は戦略的思考ができないと馬鹿にされているのを見た、という。
 だからこそ、孫崎氏は、「ほかの誰よりも日本がしっかりした戦略を持つ必要を感じていた」のだ。
 

 本書の内容は、「戦略とは、「人や組織に死活的に重要なことをどう処理するか」を考える学問である。日本人はこれについて深く考えることなく、今日まで来た。その理由の最たるものは、戦後、対米追従だけが日本の“戦略”だったことによる。しかし、単に米国追随でよい時代は、もはや過去となった。台頭する中国、そして軍事力を誇示する北朝鮮にどう対応すべきか?普天間を中心とした米軍基地問題、そして日米同盟の行方は?今こそ、日本独自の戦略が不可欠である。本書では、戦略について基本から解説するとともに、これからの日本人に必要とされる戦略的思考とは何かを考える」に尽きる。
 付言するなら、日本人といっても、戦後、それも特に日米安保条約が成った以降の(国民や政治家もだが、外務官僚も含めての)大方の日本人ということになろう。

 明治維新前後や、戦後でも早々の頃は戦略もだが、米国追従一辺倒ではなかった。
 一旦、アメリカ追随となると、それ以外の発想はまるで浮かばない。
 ちょっとでも枠を外れる人物がいると、アメリカが叩き潰す前に、日本の世論がバッシングし、葬り去ってしまう。
 田中角栄の日中外交しかり(日本の検察がアメリカと手を組んでマスコミも含め同氏を追い詰めていった。キッシンジャーの憾み骨髄か)、鳩山由紀夫しかり、検察の異常な執念に面した小沢一郎しかり、である。

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← 孫崎 享【著】『 戦後史の正体―1945‐2012』(「戦後再発見」双書〈1〉  創元社) 拙稿:「孫崎 享【著】『戦後史の正体』再び

 孫崎氏は、「日本を取り巻く環境が新しい戦略を考える必要を感じ」させていると述べる。
「中国が経済的、軍事的に大国化する、この中、日本が頼りとしてきた米国は「東アジアの最も重要な国は日本ではなく中国」と位置づけた、という。

 実際、奇しくも、「ヒラリー・クリントン国務長官が1日、退任」した。多少は日本重視の視点を持っていた。尖閣の問題でも中国を強くけん制する発言をしたのは、つい最近のことである。
米大統領、次期国務長官にケリー氏を指名」という。
 ケリー氏は、オバマ政権の方針としてのアジア重視は変わらないものの、長期低落の日本より、近い将来世界一の経済軍事大国となる中国を強く意識しているのは間違いない。

「東アジアの最も重要な国は日本ではなく中国」という認識が現実のものとなるのも時間の問題かもしれない。
「今後、米中関係が変わる。それに応じ、日米関係も変わる。日本の安全保障を米国に依存していればよいとい」う時代は終わりつつある。それを踏まえて、日本の戦略を考察せざるを得ない」と孫崎氏は述べる(本書あとがき)。
「キッシンジャーやルース・ベネディクト、ポーター教授、クレピネヴィッチ教授、ブレジンスキーらから、日本人は戦略的思考はできないと馬鹿にされて、へらへらしながら、しかし、実利だけしっかり手に入れられると思っていた時代は終わった」のである。
「戦略論を学び、この国の現状と行く末を真剣に考えるべき時代に入った」という認識のもと、著者は本書を世に問うたわけである。

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