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2013/02/27

読書拾遺…本を通じて世界を巡る

 本を買って読むという楽しみを持ちたい…と思いつつも、これで半年以上、本を買えないでいる。
 小生の働きが悪いと云えば、それまでだが。

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→ 狩野博幸/河鍋楠美 著『反骨の画家 河鍋暁斎』(新潮社) 観るたび、知るたび、驚倒される、まさに画鬼・河鍋暁斎。こんな奴が活躍出来た江戸も凄い。「浮世絵師・歌川国芳に師事した後、狩野派で研鑽を積んだ「画鬼」暁斎。本格的な仏画から戯画まで何でもござれの売れっ子絵師として、八面六臂の大活躍!! 幕末から明治にかけての激動の時代を生き抜いた稀有なる画家の、波乱万丈の人生と多彩なる作品世界を余すところなく紹介し、その才能を再検証する!」だって。 著者の一人・ 河鍋楠美は、察せられるとおり、「河鍋暁斎の曾孫。1977年11月3日、自宅を改装して、河鍋家に伝わる画稿・下絵類を中心に暁斎とその一門の作品を収蔵・展示する河鍋暁斎記念美術館を開館」とか。

 ということで、またまた図書館のお世話に。
 二週間前に借りた本を返却し、新たに本を借りる。新しい出会いは楽しいものだ。

 と云いつつ、大崎 茂芳【著】『クモの糸のミステリー―ハイテク機能に学ぶ』(中公新書)は、とうとう読み切れず、返却しようかどうしようか、迷ったが、話が佳境に入ったので、やはり、最後まで読み切る。
 実際、クモの世界は深く広い。
 但し、申し訳ないが、それでもクモは見かけからして嫌いという感じ方は変わらない。

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← 大崎 茂芳【著】『クモの糸のミステリー―ハイテク機能に学ぶ』(中公新書) 「クモは人間よりはるかに長い四億年の進化の過程で、糸を生み出した。住居をつくるのも糸、餌を捕えるのも糸。クモの糸は伸縮性、耐久性などで現代のハイテクをしのぐ高い機能性をもっている。 (中略) 安全性を考慮し、リサイクルに配慮した糸をつくるクモに、われわれが学ぶことは多い」。文学や古代史など、クモの科学を幅広い観点から探求。小生は、「蜘蛛の巣をめぐるエトセトラ」「藤原作弥…香月泰男…蜘蛛の糸」など、クモを巡るエッセイを幾つか書いてきた。クモの糸(巣)というと、芥川やドストエフスキーなど、小説のモチーフに深く関わったり、時には発想の発端になったりする。いろんな意味で刺激的な生き物なのだ。

 ハンス・ベルメール(Hans Bellmer) 著というか、文章はないので、あくまで写真集の『新装版 ザ・ドール ハンス・ベルメール人形写真集』(The Doll エディシオン・トレヴィル 河出書房新社)は予約していた本。
 学生時代、古本屋で「ベルメール」の写真集に出会い、その過剰なる、横溢するエロス、禁忌の世界に圧倒された。小生の感性に食い込んでしまった。

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→ ハンス・ベルメール(Hans Bellmer) 著『新装版 ザ・ドール ハンス・ベルメール人形写真集』(The Doll エディシオン・トレヴィル 河出書房新社) 「澁澤龍彦が終生その人形愛について思いをめぐらせたシュルレアリスト。現代美術史に呪術的球体関節人形誕生を刻印し、日本の創作人形世界に多大な影響を与えた貴重な人形写真集成」とか。学生時代、ベルメールの世界にどれほど魅せられたことか。性愛というより偏愛の極み。反ナチスを通した硬骨の画家でもある。拙稿「ハンス・ベルメール…球体関節人形」や、さらには妄想的詩文「ディープスペース:ベルメール!」など参照のこと。 

 狩野博幸/河鍋楠美著の『反骨の画家 河鍋暁斎』(新潮社)は、図書館へ行けば必ず一瞥する返却本の棚で見つけた。

 河鍋暁斎と北斎の世界は、凄いとしかいいようがない。
 本書を借りようと決めたのは、河鍋暁斎の春画があったから。
 春画も迫力満点である。
 
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← 上平 恒【著】『水とはなにか―ミクロに見たそのふるまい (新装版)』(講談社ブルーバックス) 「水素と酸素からなる最も簡単な化合物―しかし、見かけは単純でも水は常識を超えた多様な性質を持つ。固体(氷)よりも液体(水)のほうが密度が高く、物質を溶かす能力は群を抜き、表面張力が極めて大きい。生命システムでも重要な役割を果たす「水」の不思議をさぐる」。

 上平 恒著の『水とはなにか―ミクロに見たそのふるまい (新装版)』(講談社ブルーバックス)は、ひたすら水の神秘への関心から。
 水ほど身近でありながら、不思議なものはない、と思う。

 小生は、これでも、高校三年の夏休み直前までは理系志望だった。能のなさもあったが、高校三年の或る日、学校で哲学者・宗教哲学研究者である西谷啓治の講演を聞いたことが、哲学志望への転向の大きなきっかけになった。

 西谷は高校の教頭の京大での知人(友人)とか。
 確か、「水の哲学」あるいはもっとシンプルに「水について」と題して話された。ターレスあたりから話は始まった…ようだが、話の中身はすっかり忘れた
 ただ、小生の頭の中に「水」のイメージがどこまでも膨らんで、心底感動したのである。以後、この講演の要旨を書いた記録を探し、彼の本を漁ったりしたが、それらしき文章は見つかっていない。

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→ ツルゲーネフ【著】『猟人日記抄』(工藤 精一郎【訳】 未知谷) 「本作『猟人日記』にインスピレーションを得てトルストイは『森林伐採』『三つの死』など、チェーホフは『葦笛』『猟兵』、国木田独歩は『武蔵野』、島崎藤村は『千曲川のスケッチ』を書き上げた。ありのままの自然と人間の姿を素直に知ろうとする自然主義文学がここから始まる」というが、まあ、そんな固いこと抜きで、久しぶりにツルゲーネフの世界を楽しむ。実際、いままでツルゲーネフの小説を読んで独歩や藤村を想ったことはまるでなかったし。

 出不精の小生は、本を通じて日本のみならず、古今の世界、自然の神秘を巡るのだ。 


関連拙稿:
西谷啓治と水の哲学と富高生時代の思い出

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コメント

ほお、高校で西谷哲学に触れられたのですね。
まあ哲学とかそういうジャンルはどうしても文献研究が主になりますが、弥一さんは美術の世界でも本あるいはネットを通して、知ったことを纏められるのが凄い。
まあ富山に美術館があまりないということもあるでしょうが。
今年は日本におけるイタリア年、で、ルネサンスの三大巨匠の展覧会が開かれるとか、東日本大震災支援で、アメリカから、プライス夫妻が応援して、東北で、若冲がきてくれました、が開催されるとか話題はいろいろある。
暁斎もここに繋がりまして、愛知では、応挙の展覧会、府中では、かわいい江戸絵画なる展覧会と江戸絵画ブームでもあります。
暁斎もどこかで出ているんでしょうね、調べないけど。

投稿: oki | 2013/02/28 21:59

okiさん

哲学プロパーは、やや離れ気味ですが、センス・オブ・ワンダーの理念は大切にしたいと思っています。
表現の形は、どんな風になるか分かりませんが。

富山にも立派な美術館はあります。
ただ東京と比べるのが、論外なだけ。
もっとも今の小生は、貧乏してて、外出はままなりませんが。

ホント、北斎や暁斎などの実物を見たいものです。特に、これは不可能ですが、実際に作画する光景が興味深い。

投稿: やいっち | 2013/02/28 22:38

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