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2013/02/10

サスキンド著『ブラックホール戦争』とホログラフィック原理

 レオナルド・サスキンド著の『ブラックホール戦争―スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』(林田 陽子【訳】 日経BP社 )を小生にしては早いペースで読了した。

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← レオナルド・サスキンド著『ブラックホール戦争―スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』(林田 陽子【訳】 日経BP社 ) 本書の題名は、なんだか安っぽくて、手にしなかった。が、著者名が、レオナルド・サスキンドではないか! 数年前、読んで、なかなか読みごたえがあった、『宇宙のランドスケ-プ ― 宇宙の謎にひも理論が答えを出す』の著者なのだ。これは読んでおきたい。と書きつつも、実は、刊行直後に既に読んでいた。どうやら、その時は、内容がよく理解できない部分が多かったようだ。特に、本書の一番の眼目でもある、「ホログラムとしての世界」がそうだった。 今回は? その後、関連の本を読んできたお蔭で、少しは理解が深まった、と思いたい。サスキンドは、ホントに語り口が上手い。それはいいのだが、誤植なのか校正ミスなのか、大手出版社にしては、印刷ミスが多い。名前での間違いは、あんまりである。

 それというのも、書き手のレオナルド・サスキンドが素人相手でも実に説明が上手い。
 ドンドン読み進められる。どこまで理解できたか分からないが。

 彼(ら)は、スティーヴン・ホーキングと20年以上にわたってブラックホールを巡る論争を続け、とうとう勝利した。
 論争の焦点は、「ブラックホールに吸い込まれるエントロピーは外の世界から永久に失われるのか、それとも蒸発に伴って脱出するのか、で」、「ホーキングは前者を主張し、著者は後者の立場を取った」。
 サスキンドには、ホーキンスの主張では、エントロピー(熱力学の第2法則)という科学の一番の基本原理が破られるという危機感があった。

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→ レオナルド・サスキンド著『宇宙のランドスケ-プ ― 宇宙の謎にひも理論が答えを出す』(林田 陽子【訳】 日経BP社 ) 「この宇宙はもっとはるかに広大な、いわゆる「メガバース」の中のほんのちっぽけな片隅を占めるにすぎない。メガバースの中で、無数の種!類の小宇宙が無限回出現するという新しい宇宙像にたどり着く」!

「ブラックホールの研究を通じて,ホログラフィック原理の正しさを示す手がかりが得られた」というのが、サスキンドやJ. D. ベッケンスタインらの主張だ。
「ホログラフィック原理」と呼ぶ理論によると,宇宙は1枚のホログラムに似ている。ホログラムが光のトリックを使って3次元像を薄っぺらなフィルムに記録しているように,3次元に見える私たちの宇宙はある面の上に“描かれた”ものだ。はるか遠くの巨大な面に記録された量子場や物理法則と,私たちの宇宙とは完全に等価だ」という。

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← リサ・ランドール著『ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く』(向山信治/監訳 塩原通緒/訳、日本放送出版協会 ) 「宇宙は、私たちが実感できる3次元+時間という構成ではないらしい。そこには、もうひとつの見えない次元があるというのだ。もし、もうひとつの次元が存在するのなら、なぜ私たちには見えないのか?それは、私たちの世界にどう影響しているのか?どうしたらその存在を証明できるのか?現代物理学の歩みから最新理論まで、数式を一切使わずわかりやすく解説しながら、見えない5番めの次元の驚異的な世界に私たちを導いていく。英米の大学でテキストとして使われている話題の著書Warped Passagesの邦訳

物質がブラックホールに落ち込んで消え去るとエントロピーも永久に失われ,熱力学の第2法則が破れてしまうように見える。私(ベッケンスタイン)は英ケンブリッジ大学のホーキング(StephenW. Hawking)らの研究成果にヒントを得て,「ブラックホールは事象の地平面の面積に比例したエントロピーを持つ」と1972年に提唱した。さらに一般化すると,ブラックホールの全エントロピーとブラックホール外にあるエントロピーの総和は決して減少しない。これが「一般化第2法則」だ」。

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→ ブライアン・グリーン著『エレガントな宇宙』(林 一・林 大訳、草思社刊) 「『エレガントな宇宙』雑感(付:「『宇宙は自ら進化した』の周辺」)」参照。

この考え方を発展させると,ホログラフィック原理にたどり着く。例えば3次元の物理過程を,その2次元境界面について定義された別の物理法則によって完全に記述できるとする考え方だ。近年の理論研究によって,宇宙をホログラフィックととらえる考え方は定着したように思える。これに伴い,物理現象を記述するには場の理論が最上であるという過去50年にわたる基本的な信念を放棄せざるを得ない,と考えられるようになってきた」とも。

 前回読んだ時もだが、素粒子の「これらの単位(プランクの長さ、時間、質量)には驚くべき意味がある。それらは、存在可能ないちばん小さいブラックホールのサイズ、半減期、質量なのだ」というくだりは、実に刺激的だ。
 ハドロンつまり原子核同士を衝突させると、クォークとグルーオンが撒き散らされる。熱いクォークのスープが現れた。その「スープは、ある流体としての性質を持っていて、それはまさにブラックホールの地平線にそっくりなのだ」。

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← アダム・フランク(著)『時間と宇宙のすべて 』(About Time 水谷 淳(訳) 早川書房) 「『偶然の音楽』から『時間と宇宙のすべて』へ」参照。

 結果、核物理学の研究が、ブラックホールの相補性やホログラフィック原理などの検証する機会でもありえると分かってきたのである。
 ホログラフィック原理などいわゆるひも理論の成果である理論が、検証不能な数学上の玩具ではなく、核物理学で普通に使われる道具へと発展しつつある。
 
 本年7月に建設地が決まるILC(国際リニアコライダー; International Linear Collider)計画」にますます期待が高まるゆえんである。


関連サイト:
ホログラフィック原理 日経サイエンス
関連拙稿:
『ブラックホール戦争』は決着したのか
『エレガントな宇宙』雑感(付:「『宇宙は自ら進化した』の周辺」)
宇宙の神秘に対する畏敬の念
物理学界がいま最も注目する5次元宇宙理論
『偶然の音楽』から『時間と宇宙のすべて』へ

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