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2012/12/29

立山連峰と富山トラフ

 腰の症状は悪化もしないが、快方にも向かっていない。
 腰に爆弾を抱えている感が常にあって、天気同様、氷雨の降っているような心境である。
 それでも、読書している間だけは別天地にある。

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→ 立山連峰は、遠望するかぎりは、雄々しく美しいのだが…

 水曜日未明に、ジョン・D. バロー著の『天空のパイ』(林大 訳 みすず書房)を読了。
 本書を読んでも感じたのだが、数学者はある種の宗教の教祖のようなものだ。
 彼らほんの一握りの者たちだけが洞察し理解できる世界がある。

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 真理なのか教理なのか、天からのお告げなのか分からないが、そうした神秘が下りてきた彼らの周りには、通訳めいた解説者、司祭、神父…らが居て、小生のような凡愚の徒に数学の神秘、宗教的な神秘の一端を噛み砕いて告げ知らしめる。

 けれど、理解などまるで覚束なくて、説明を鵜呑みにするしかない。
 真理なのか天のお告げなのか、本当のところは皆目見当がつかないのだけど、どうも真実らしく思えるし、何より、美や真、義ならではの絶対的な何かが凡愚の自分をも震撼せしめる以上は、如何ともしがたいのである。
 無論、数学と宗教のそれぞれの真は違うし、門外漢には神秘を感じるばかりで、目が眩み、ただただ美や真の影を慕っていくしかないのである。

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 ということで、自宅では、当面、読み続けている島崎藤村の『夜明け前』に専念することになる。
 今は、島崎藤村著『夜明け前 第一部〔下〕 (岩波文庫)で、年内読了どころか、第一部読了がやっとのようだ。

 ところで、車中での待機中、楽しんでいる長沼 毅/藤崎 慎吾著の『辺境生物探訪記―生命の本質を求めて』(光文社新書)を読んでいたら、本題とは離れるのだが、興味深い指摘に目が留まった。
富山湾は、西側に大きく突き出した能登半島に抱かれる、日本海側最大の湾です。最深部は1200m以上もあり、太平洋側の駿河湾、相模湾と並んで、日本三大深湾のひとつ」だというのだ。
 富山湾が無類の深湾であり、立山連峰と併せ、高低差4000メートルという驚異の地形をなしていることは知っていたが、富山湾は、「太平洋側の駿河湾、相模湾と並んで、日本三大深湾のひとつ」だとは(以前もこの記述に接していたはずなのに、見過ごしていた)迂闊だった。

 この話題については、「地球ダイナミクス講座 ◆「深海底を探る? 富山湾と日本海東縁」 竹内 章教授(構造地質学・テクトニクス)」が詳しいし、参考になる。

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富山湾は、日本海に突き出た能登半島と標高3000m級の日本アルプス(飛騨山脈)の間にあり、相模湾・駿河湾とともに日本列島の地形を特徴づける日本3深海湾のひとつ」で、「富山湾は、海岸から沖に向かって急に深くなり、水深約1100mの平坦な海底になります。湾の底には海底谷があり、ここを源流部として富山湾口から本州島(佐渡海嶺)の陸棚斜面と大和海盆との境界をなぞるように日本海盆に向かって延長1000kmも流れ下っています。この海底谷は富山深海長谷と呼ばれ、日本海盆に達する場所では巨大な深海扇状地をつくっています。途中、大和海盆にいたる細長い低地帯の部分は富山トラフと呼ばれます。トラフとは笹舟の底のような溝状の盆地のことで、富山深海長谷は富山トラフで著しい下刻と蛇行を繰り返してい」るという。

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← 海上保安庁水路部による富山トラフ海底地形図 (画像は、「地球ダイナミクス講座 ◆「深海底を探る? 富山湾と日本海東縁」 竹内 章教授(構造地質学・テクトニクス)」より) 文末の註(*)参考。

 さらに、「相模トラフと駿河トラフは伊豆半島という日本でいちばん激しく隆起している場所の両側にあります。富山トラフも北アルプスやフォッサマグナに隣接しています。日本の屋根と呼ばれる中部山岳地帯の東側は、新第三紀東西日本の境界とされる低地帯のフォッサマグナで、その西縁が大断層の糸魚川-静岡構造線です。この構造線を北に延長したところに富山トラフがあるのです。結局、これら3つのトラフができたのは日本列島中央(内陸)部の隆起と海側での沈降が同時進行していることが原因です。太平洋側の相模・駿河トラフでは伊豆小笠原海溝(房総沖海溝三重点)と南海トラフの沈降、つまり巨大地震を伴うプレートの沈み込み運動と、伊豆半島の衝突が原因です。同じことは富山トラフについても言えるのではないか。つまり、日本海東縁に沿って南北に並ぶ大地震は、ここでのプレート沈み込みを示し、中部山岳(北信越?飛騨)の高原状隆起は東西日本の衝突が原因とみられ」るという。

 つまり、「立山連峰と富山湾で特徴づけられる富山の地形は、数十万年前に始まった若い造地形運動が活発に進行中であることを示してい」るというのだ。

 以下、興味深いというより、何かドキドキするような記述が続く。

(*): 富山トラフ(富山深海長谷)とは、「富山湾から北に総延長750kmにもおよぶ長大な海底谷で、世界に存在する長谷(ちょうこく)の中でも最大級規模の海底谷」

日本海学推進機構:研究と活動:日本海洋学会 「富山湾の地形と地質」 - 日本海洋学会 「富山湾の地形と地質」」参照

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